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2026.05.02

選手情報

世界への分岐点:選抜王者・富澤直人が語るミシガン大学進学という決断と、グランドスラムジュニアに繋がるプラチナチケットの真意

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グランドスラムへの最短ルート。日本の「選抜」が持つ特殊性


「高校の大会がグランドスラムに繋がる。そんな環境は日本にしかありません。本当に恵まれていると思います」

そう語るのは、全国選抜高校テニス大会(以下、センバツ)で男子個人戦を制した富澤直人だ。通常、グランドスラムジュニアに出場するにはITFジュニアランキングで100位以内に入る必要がある。しかし、このセンバツで頂点に立てば、ウイルソンと全米オープンの深い信頼関係により「全米オープンジュニア予選ワイルドカード(WC)」が授与される。

ウイルソンのブランドヘッド、松沢猛氏はこの特別な権利についてこう明かす。
「正直、ウイルソンとしても日本の高校生にだけこの権利を渡すのは極めて特別なことです。アジア各国からも要望はありますが、全米オープンとの深い繋がりの中で、日本の高校テニスのためにこの枠を確保しています。人生の岐路になり得るこの機会を、ぜひ生かしてほしい」

ミシガン大学進学。「プロ」を目指すための合理的選択

富澤は今年9月、全米屈指の名門、ミシガン大学アナーバー校への進学を控えている。UCLAやUCバークレーといった強豪校からもオファーが届く中、自ら足を運び、肌で感じた直感を信じて決めた道だ。

「僕の夢はプロテニスプレーヤーになることです。アメリカの大学は文武両道の環境が整っており、選手全員がプロを目指している。大学がプロのトーナメントに選手を連れて行ってくれるなど、プロへのファーストステップを大学内で踏み出せる。それが進学の決め手でした」

驚くべきは、富澤が本格的にITFジュニアを回り始めたのは高校1年生からという点だ。中学生から海外転戦を始めるのが主流の昨今では「出遅れ」と言える時期だったが、彼は戦略的にセンバツのタイトルを狙い、そのチャンスを確実に全米オープンジュニアへと繋げた。

運命を変えた「全米」での出会いとショーケース

富澤の進路を決定づけたのは、センバツ優勝によって手にした「全米オープンジュニア」の舞台そのものだった。現地で試合をこなす中、そのポテンシャルに目を付けたのが、視察に訪れていたアメリカの大学テニスコーチたちだ。

「センバツで優勝し、全米オープンで戦ったことで、アメリカの大学コーチに直接自分のプレーを見てもらうことができた。それが今の進学先との強力なコネクションに繋がりました。あの場に行かなければ、これほど多くの名門校からオファーをいただくことはなかったはずです」

また、国内で開催された「ショーケース(大学スカウティングイベント)」での出会いも大きかったという。

「高1の時は日本の大学を考えていました。でも国内でのショーケースでアメリカのコーチと話し、『君にはプロを目指せるポテンシャルがある』と言ってもらえた。そこで自分のレベルが世界に通用すると確信し、意識がガラッと変わりました」

海外志向を加速させたのは、現地でのリアルな経験だ。松沢氏は、選手たちが海外の空気に触れることの意義をこう語る。

「2023年の里菜央さんもそうでしたが、海外経験がなかった選手が行った後では、考え方や視線が全く変わる。正直、我々も驚くほどの成長を見せます。現場の緊張感、予選と本戦の空気の違い。それらを肌で感じるサポートを、ウイルソンとして今後も強化していきたい」

憧れから覚悟へ。早坂来麗愛が目撃した「本物の世界」

富澤と同じく、センバツ優勝を経て全米の地を踏んだ女子王者の早坂来麗愛も、その視座を劇的に変化させた一人だ。

「世界への憧れはありましたが、現実は難しいかなと悩む時期もありました。でも、支えてくれるコーチへの恩返しを考えたとき、プロになりたいと強く思いました」

彼女の背中を押したのは、全米オープン現地で味わった「差」だ。予選で敗退した彼女は、本戦会場の圧倒的な雰囲気、そして選手への手厚いホスピタリティを目の当たりにした。

「予選と本戦では会場も人も全く違う。本戦で勝ち上がる選手の姿や、大坂なおみ選手の試合を間近で見て、『自分もあそこでプレーしたい、あそこに立ったら格好いいな』と。生の世界を見たことで、視野がめちゃくちゃ変わりました」

当初は国内の大学進学も頭をよぎったという早坂だが、スポンサーの決定というタイミングも重なり、プロとしての挑戦を決意した。

日本の部活という土壌から、ウイルソンが用意した「世界への扉」を叩き、アメリカの大学やプロの世界という広大なフィールドへ歩を進める高校生。富澤直人や早坂来麗愛が示すこのキャリアパスは、これからのジュニアテニス界において、最も合理的で、かつ夢のあるスタンダードになっていくだろう。

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