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2026.09.24

選手情報

島袋将をトップ100に導いたトーマス嶋田コーチ。さらなる進化に必要な「変化を恐れない姿勢」と「高いレベルの継続性」

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島袋将をトップ100に導いたコーチのトーマス嶋田氏インタビュー


今年8月に世界ランク87位に駆け上がり、グランドスラム本戦へのダイレクトインを果たした島袋将(有沢製作所)。ツアー転戦を本格化させた今季、確かな成長を実感しながらも、トップレベルで戦い続けるための新たな課題と向き合っている。プロ7年目を迎え、変化を受け入れながらアジャストを重ねてきた島袋の強みとはどこにあるのか。そして、急速にスピードとパワーが増す現代テニスにおいて、若手やジュニアが世界で生き残るために必要な要素とは何なのか。長年ともに歩んできたトーマス嶋田コーチに、島袋の現在地と進化の舞台裏、さらには大学経由のキャリア構築や海外での戦い方まで、多角的な視点で話を聞いた。

――今年最後のグランドスラムですが、島袋選手のこの1年振り返っていただいての感想をお願い致します。

基本的にこの1年はポジティブなことが結構多かったと思うんです。(ATPランキングで)トップ100を切ったり、ウィンブルドンと 全米オープンは初めて本戦にダイレクトインしました。今年ほとんどATPツアーの大会に出てまだまだコンスタントに勝ってないですけど、いい結果は出しています。その上でテニスのレベルが上がりました。

――島袋選手の一番上がったところ、というのはどういうところになるんでしょうか。

このレベルで勝てる『自信』ですね。今 彼は29歳でプロ生活はもう7年目ぐらいです、その間コロナの時期がありました。どこまで行けるか、ということについて、選手として「トップに行きたい!」と言うのは簡単なことですが、特に(島袋)将はジュニアグランドスラムに出た経験もなく、日本の大学を出てからトップ100に入っています。(プロ活動当初から)今、ここまで(100位以内)来るというのは本人も分からないところでありましたが、彼の努力もあり、一生懸命にスケジューリングを作って共にやってきてやっとここまできました。

――島袋選手と一緒に最初に取り組んだことや成長する要因になったのは何でしょうか。

将が一番良かったのは、色々トライしてくれることです。私が気づいたことに応えてやってくれるというところで、それはフューチャーズやチャレンジャーのレベルのテニスとはちょっと違います。ATPツアーのレベルに合わせた調整が必要になってきます。将はそこまでビックサーバーやパワープレーヤーでもないので、このレベルでどうやってポイントを取るか、その次のレベルでどうポイントを取るか、ということに関して彼なりにアジャストできたと思います。
「このレベルまで来たんだから変化する必要はないんじゃないか?」と思っている選手が多い中で(島袋選手は)そういうことがなかったと思います。

――少しずつ新しいことに挑戦する姿勢が良かったのですね。

そうですね。最初の頃は自分からポイントを取ること多かったのですが、「チャレンジャー」や「ATPツアー」になればポイントを取ることがすごい大変になります。どの選手もパワーがあり、動けるし、1ゲームに3本もウィナーを取るということは難しくなってきます。その中でも彼はバックハンドの安定が出てきて、ネットプレーもすごく良くなってきましたね。

――サーブについて、全米オープン1回戦はいかがでしたか。エースを取りに行く場面やセカンドサーブも相手のリターンで劣勢になる場面は少ないように感じました。

将のサーブは、ツアーで言えばギリギリのレベルというところでしょう。いい時は少しアドバンテージになるのですが、どう考えても相手(アーサー・リンデルクネッシュ/フランス)は2メートル近い身長から打ってくるということと比べると、ビックサーバーとは言えないけれど、「これが足りない」というところはあまりなく、そういう意味でサーブのベースはよくできていて、相手もそんな簡単にポイントは取れないですね。まだまだこれからレベルアップしなければいけないところではありますが。

――今季も残すところ約3か月ですが、来年に向けてまたレベルアップしていくところというのはどこになるんでしょうか。

一番大事なところは、高いレベルのプレーを安定して続けること必要です。今大会の初戦のようにいい時はタイブレークまでいくのですが、ちょっとプレーのレベルが下がると2-6になったりします。もちろん相手はグランドスラムでシードに入る選手なのですが、その辺はもう少しバランスを取りたいし、高いレベルでもっと長くプレーできること、ここに大きい違いがありますね。トップの選手と80位台の選手との違いは、調子の良い時はいいんだけど、ちょっと下がると差が出てしまう。そこのレベルアップは必要になってきます。

――高いレベルを維持していくっていうのは大変だと思いますが、嶋田コーチの感覚として手応えはあるのでしょうか。

アイディアはありますが、将くんに限らず選手には時間というリミットがあります。もちろんもっと上を見ていなかければなりませんが、そのために調整し過ぎてしまうと調子を落としてしまうこともあります。そのリスクとリボーン(生まれ変わる、再生)というのはやりながらよく観察しなければいけません。




――今後、島袋選手のような選手がもっと出てくる可能性はありますか。

全米オープン期間中、少しだけ次世代のホープを見ていました。日本人選手で言えば、海外の本当のパワープレーに対してどうやって戦っていくのか、とか先を見据えるところが難しい。そういう意味で、将は最初から十分なパワーがあり、強く打つ相手の方が意外に結構好きだったのは良かったと思いました。選手に対して「強く打って欲しい」という要求し、それを教えると難しいところがありますが、彼はナチュラルで持っている能力です。レベルが上がり、だんだんボールが速くなりすぎると問題になってくるところではありますが。

選手としてこういう大きな舞台(グランドスラムなど)が好きかどうかも大事な点です。彼は意外にも華やかなところが好きなので、それも一つ彼がそこで活躍したいと思えている大事なポイントになっているのではないかと思います。トップにいきたいという想いとは裏腹に、たまにちょっとビビる選手もいるので慣れていくことも必要です。

――嶋田さんが現役だった時代とスピードもパワーも強化されてきた今、この時代を戦うっていうのにあたって何か必要なことは何ですか。

20年前に比べたら今のテニスは当時には考えられないくらいのパワーとスピードですよね。テニスのアイデンティティとか、どうやってポイントを取るとか、どういうプレースタイルが効果的なのかなど、ジュニアの時は正直みんなわかってないと思います。同じぐらいの年齢、身体の子との対戦が続いて、プロになるといきなり年が10歳上とか30代の選手との対戦となります。テニスの考え方も違うし、遠征ではこれまでに行ったことのない場所に、3~4週間行かないといけないような状況だとタフさは要求されるというところです。もちろん個人差があり、その状況を楽しめるかどうかですね。

――選手によって課題も違うということですね。

例えば今年の結果を見てみるとプロの大会が増えています。それは選手にとってはいいことではありますよね。ですが、実際には選手自身が、何が好きで何が嫌いということがわかっていないように思います。普通のことですが、将はあまりクレーコートが好きでなく、経験はないのですが、3年前にクレーコートのチャレンジャーで予選から上がって優勝しました。本人も(苦手だと思うところから)そういう意味でビックリしたところでした。

彼自身、クレーコートでプレーできない訳ではないのですが、ジュニアの選手には、18歳までに色々トライして、早めにクレーコートでの経験をさせた方がいいですね。そういう意味で、将は経験するのが遅く、大学に行ったことやコロナも影響しています。それでも意外にクレーに慣れるまでの調整が早かったですね。

チーム島袋の存在も大きく、レオさん(大瀧レオ祐一トレーナー)が以前、杉田(祐一)選手と一緒にツアーを回り、トップの選手になって行ったという経験もあります。(強くなっていく条件として)マストではないけど、もし可能であれば(経験を積んだコーチやトレーナーが)チームにいるといいと思っています。私もシングルスではこのレベルではなかったので、その経験も踏まえています。

――ジュニア選手についてはいかがでしょうか。

今のジュニア選手について言えば、最低限の技術として全部のショットをこなせること、ジャック・ケネディ選手(アメリカ/田畑遼と全米オープンジュニア1回戦で対戦し6-3, 6-3で勝利)は、USTA男子18歳以下で優勝しATPランキングも400位ぐらいです。背が高くない(170センチ)のですが、彼も1月からバージニア大学に進学予定です。プロになるにはもう少し時間が欲しいし、大学はコーチも良いし、トレーニングや施設も充実している。現在はリスクを最初に取らない選手が増えてきました。

それというのも、ツアーを回るにはまだ確立されていない部分が多いからだと思います。転戦しながら上手くなっていきツアーに適応するというのはかなり難しいですし、遠征費も考えると資金面の心配もあります。それに比べ、大学だとテニスに関する費用は恵まれています。対戦相手にも強い選手がいて、チーム内にも練習相手がいます。マイナスの面が少なく、プロの大会への出場が可能になってきます。

現在、トップ100で20歳以下の選手はなかなかいないのが現実で、身体が大きく特殊な才能がない限り難しいことだと思います。(大学出身としては)ベン・シェルトンもそうですね。大会のドローを見ると、トップの3割ぐらいが大学の経験がある選手です。(世界に通じるプロになるためには)日本人ももう少しアメリカの大学を視野に入れてもいいかもしれません。

今回も2人ほどジュニアのサポートをしていて、アメリカの大学行きたいということで大学側とコンタクトを取って紹介しました。選手側は大学のシステムなどわからないことがあるのですが、条件が素晴らしいと言われますね。アメリカの大学側からしても日本の選手というのは魅力があります。

(ジュニアの)身体を見るとプロに比べて大きさが違うのですが、大学は練習を含めチーム戦なので、「みんながやっているから自分も!」とモチベーションは自然に良くなっていくものです。試合に勝っても負けても、また次があるという良さも魅力で、プロは勝てばもちろん良いのですが、負けたらアウトの世界です。

――今大会、シナーが欠場し、アルカラスも全仏、ウィンブルドンを欠場し復帰してきました。嶋田さんご自身が現役時代、調子が万全ではない状態でも出場していたこともありますか。

基本的なレベルは今の方が全然高いところでやっていて、身体にかかる負担も大きくなっていると思います。今も昔も同じなのは「メンタル」だと思うんです。特に勝てなくなって負け続けている状態の時、団体スポーツとは違い一人で戦っていくことや会社から決まった給料が出ることもありません。

常に成長することを考え、取り組み、結果だけを考えると変なプレッシャーになることもあります。それでも結果を気にしない、というのも難しく、メンタルのアップダウンは激しいものがあります。それがプロとして大変な部分の一つでした。

――島袋選手のサポートのこと、ジュニアからツアーまでのことをお話しいただきありがとうございました。





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写真=田沼武男 Photo by Takeo Tanuma

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