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2024.06.18

メーカーズボイス

“ファッション=テニス”ビームスが手掛ける新ブランド「Setinn<セットイン>」とは。ディレクター新井伸吾に聞くテニス界に参入したワケ

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アパレルからの視点でテニス界を壊す

“テニスとファッションはそう遠くない”少しの見方ですべてが変わる


――テニスもファッションも知っているという人は少ないと思います。

「僕らのセットインの洋服を見たい人やカフェ、アートが目当ての人、もちろんテニス目当ての人などいろんな人が入るように間口を広げたかった。そういう箱が欲しいと社長プレゼンをしたところ『ビームスは洋服屋だからまずはブランドを作りなさい』と。『架空のテニスブランドが本物のテニスクラブを作ったというストーリーのほうがかっこよくないか?』という言葉をいただいて、このブランドを立ち上げました」

「要は自分たちの目線でテニス界に茶々を入れたいんですよね。もちろん、ほかのメーカーからしたら面白くはないでしょう。でも僕はそれでもいいと思っていて、みんなが同じ方向を向いていることほど怖いものはないと思っています。みんな右に行くけど、左に行っても面白いかも、景色がいいかもっていうのがビームス。天邪鬼ですね」

――服を作って終わりではないということですね。

「コト売りしたいので、これがゴールじゃない。具体的な絵は見えていますが、もちろんそれはやってみないとわからないところもあって、成功もあればもちろん失敗もある。失敗してよかったなと思ったこともあるので、今はすごく楽しいです。洋服を作れる人はたくさんいると思いますが、その人たちの中でテニスを真剣にやっていた人ってそうはいない。だからチャンスだと思っています」


ディレクター・新井伸吾さんも憧れたジョン・マッケンロー(©Getty Images)


――服づくりの原点を聞きたいのですが、新井さんの青春で憧れた選手、かっこよかった選手などはいますか?

「僕は(ジョン・)マッケンローの立ち振る舞い、仕草は悪童と言われていましたがかっこよくて好きでしたね。そのあとに(アンドレ・)アガシや(ピート・)サンプラス、(ジム・)クーリエらのプレーもですが、格好としてもかっこよかった。あの時は地味なサンプラス、派手なアガシでしたが、年を重ねるごとにサンプラスの味がわかるようになってきた。他の選手たちもかっこよかったです。それというのも要は服のサイジングだと思いますね」

――その点、どのようなイメージを生かしてこの服を作ろうと思ったのでしょうか?

「昔はテニスウェアを着て外を歩いていたし、テニスウェアがファッションだった。ですが、今のテニスウェアで外を歩けるかと言われたら僕はできない。アガシやサンプラスなど昔のスタイルはめちゃくちゃおしゃれで、もっと前でもボリス・ベッカーやルネ・ラコステとかだってチルデンベストを着てスラックスを履いてテニスをしているわけです。僕らが見てきた80~90年代、00年代前半のテニスウェアは洋服でした。いつから更衣室が必要になってしまったんだと」

「僕らのスローガンは、“テニスとファッションはそう遠くない”。80~90年代のアガシ、サンプラス、クーリエ、マッケンローというファッションのお手本をそのまま継承していきたかった。Setinn<セットイン>という名前は、Tennis<テニス>のスペルを入れ替えたアナグラム。だから近いんだよって。少しの見方、景色の違いだけで読み方も違えば全部変わるということがやりたかった」


派手なウェアだが、頭の先からつま先までしっかりコーディネートされたアガシと、シンプルながら絶妙なサイジングのサンプラス(©Getty Images)

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