名品バッグを生んできたテクニファイバー
思いもよらぬ「衝撃の初対面」!
昨年秋、テクニファイバー展示会のため、目黒のラコステジャパンを訪ねた。かつて【Tecnifibre】ブランドは、日本で販売展開するため『ミズノ』を輸入代理店とし、その後、『ブリヂストン』へ移って好調であったものの、『ブリヂストン』がテニス市場から撤退したことにより、【ラコステ】が展開することになる。
▶テニスクラシックオンラインストア(公式通販ショップ)のテクニファイバー「REFORM BACKPACK」はこちらそれは日本国内での輸入代理契約などではなく、【ラコステ】と【Tecnifibre】が一体化したことことによるものだった。
ともに「フランスの企業」……。2つのブランドを結び付けるのは、フランスという国の根幹に流れる「愛国心」と感じてしまう。他国籍企業による「M&A」は国際経済においては日常茶飯事なのに、あえて「テニスに関与する同じ国の企業同士が合併」という、同国企業同士がメリットを共有し合うというストーリーに「じぃーん」としたものを感じていた。
まぁ、そんなわけで、【Tecnifibre】の新製品発表のために【ラコステジャパン】のショールームで翌春発売の【FIRE】の説明を受けるのだが、目の端に映るバッグが、どうにも気になってしかたない。
……なんか「ヘン」なのだ。
どこか「普通じゃない雰囲気」に包まれ、そこだけが筆者には光って見える。
やっと近付くタイミングがやってきて、見た瞬間……震撼が走った。
筆者はコラムなどの執筆の他に、テニス関連商品の企画もやってきた。正直な話、こうしてキーボードを叩くより、「面白い商品企画を妄想する」ほうが100倍も好きなのだ。かつて、テニス専門誌でオリジナルラケット、ラケットバッグなどの誌上企画をし、予想外の大成功をしてしまった……どころか、そこで作ったラケットバッグが「新しい潮流」を生み出すこととなり、世界じゅうのラケットバッグが、それを真似るようになってしまった。
だから「テニス用バッグ」には深い思い入れがあり、まだ手掛けていない「デイパックスタイル」のバッグには、強い強い興味があって、つねにさまざまな妄想を重ねているわけなのだが……
そんな筆者に、「ビシッ」とムチ打つかのようなインパクトを与えたのは、そのバッグの背面に隠れている、ものすごい『違和感』だった。
【FIRE】の説明を聞き終えてすぐ、「あれは、ナニ???」とバッグ展示エリアへ すたすたすた。
「えっ!!!!!!」
そのバッグの背面構造は、これまで見たこともなく、想像だけはしてみたものの「コスト的に…実現など不可能だよな」と諦めていた「そのもの」だったのだ。
「背中部にはクッションパッド」という常識を大転換
こんなの見たことない…… 背面パーツを成型EVA
筆者は『デイパック』という語を使うのだが、一般には『バックパック』、ときには『リュック』などと雑に呼ばれる。もはやそれが「一般名詞化」してしまい、商品名にまでなってしまっているのだが、正式には『リュックサック』『バックパック』『デイパック』『ナップサック』は、それぞれ違うものだ。
まず『リュックサック』というのは、「背負い袋」の総称と捉えていいだろう。英語で『Backpack』とされているせいで、もう世界的に、そうなってしまっているが、ただ正確には、『バックパック』というのは、本格的な登山の際に使われるスタイルのもので、金属などのフレーム(背負子:しょいこ)を備え、大容量の荷物を運ぶための大型の背負い袋のことを指す。
また一般的によく『リュック』と呼ばれるのは、コンパクトで、フレームなどを持たずに、全体的に柔らかくて、汎用的な背負い袋のこと。
そして『デイパック』も同じようなイメージなのだが、リュックサックよりも「もうちょっとカチッとした感じ」のもので、みんなが「バックパック」と呼んでいるスタイルはこれだろう。そもそもは「一日分くらいの荷物を運ぶための背負いバッグ」という意味でのネーミングである。
ついでに『ナップサック』というのは、小型の巾着タイプの袋で、簡易的に背負えるもの……昔の「シューズ袋」スタイルの発展形だ。
さて、話を元に戻そう。
そのバッグに強い衝撃を受けたのは、バッグの背面が「金型成型された硬そうな素材」で作られているからだ。触ってみるとそれは『EVA』という素材で、これを発泡したものが、シューズのミッドソールなどに使われている。形状を維持できるくらいの適度な硬さを持つ反面、適度な柔らかさも持つ「軽量素材」で、成分の配合具合や成形方法などによって、使用する自由度が高く、各分野で幅広く用いられている。
稀に『EVA成型パーツ』を使用したバッグもあったが、それらはみな「見栄えのよさ・カッコよさ」を演出するために配置されたもので、「お飾り」的な使われ方。だがこれは、むしろ「見えにくい部分」に使われ、機能を追求した結果としての活用状況だ。
テクニファイバー【REFORM】の最大の特徴は「バッグ背面(背中側)」にある。デイパックとしての合理性を追求した結果が、デイパック史上初の機能性を組み上げたほぼすべてのデイパックの「背中にあたる面」には、クッションパッドが装備されていて、背中へ柔らかく接するような配慮がされている。
ただ「柔らかい接触が、本当にいいのか?」という疑問も持っていた。パッドが柔らかいと、背中全面に接触するため、夏なんかには、背中が汗びっしょりになる。「むしろちょっと硬くて、面に凹凸を設け、背中に接触する面積を小さくすれば、凹凸の凹部分が「空気が通り抜けるエアダクト」となって、汗をかくのを抑えられるはず……と、ここまでは筆者も考えていた。
でもコイツは、それをはるかに飛び越え、「ノーパッド:エアダクト」の背中面構造にしたEVAパーツで、問題を難なくクリアしてしまった。これまでのデイパックでは「背中面にはクッションパッドを」という固定的な先入観に縛られていただけだったのだ。
「でも、パッドがなけりゃ、背中が痛いんじゃないの?」という疑問が残る。だから「1か月間使い続けて、痛いかどうか確かめよう」と、ほぼ毎日、このテクニファイバー【リフォーム・バックパック】を背負ってみた……。
常識破りのショルダーストラップ!
使い心地が超快適、「これからのストラップはこれだ!」
その結果は……
「まるで違和感を感じない! プラスチックほど硬ければ違和感があったかもしれないが、EVAは適度な柔らかさがある。同時に確認できたのは、デイパックが背中に押し付けられる圧力(強さ)なんて、まるでたいしたことない。バッグの重さのほとんどは『肩ストラップ』にかかり、背中面は支える程度のもの」ということを確信した。
そして、そのストラップがまた「前代未聞」!
普通のストラップは、やはり「クッションパッド内蔵」で、とくになんの工夫もなくメッシュ生地の内側に挟み込んであるだけ。筆者は「ストラップでも、肩に当たる部分と、それ以外の部分では圧力が違うため、クッション性能にも変化を持たすべきだ」という程度は考えていたが、まさか、こんなやり方があったとは!
これまでのショルダーストラップに用いられてきた発泡ウレタン(いわゆるスポンジ)は、安価なもの:「意味ないじゃん」というくらいスカスカで薄く、高価なもの:「反発感が強くて厚い」のだが、そうなると当然重くなる。
ところがテクニファイバー【リフォーム・バックパック】のショルダーストラップは、斜めハシゴ型の「柔らかめの発泡EVA成型パーツ」(白い部分)をメッシュで包んだ……だけのものだった。
(左上)背中に当たる全面に「柔らかいEVA」を用いて立体的に作り、中央を「逆Y字型」に凹ませて空気・湿気が抜けるダクトを構築した。一般的なスポンジパッドとは違い、背中に熱がこもらず、汗をかきにくい。ショルダーストラップも通気性・軽量性を重視した革新的な構造だ(右上)片側のサイドポケットは「メッシュ素材」で、ドリンクボトルなどを入れられるが、外側からは中身が見えないメッシュのため、安心感が高いという心配りがある(左下)もう片側のサイドポケットは、ファスナー付きのスリットポケットで、スマートフォンなど貴重品を収納するのに向いている(右下)テニス用バッグには「必須」と言われている「シューズ収納ルーム」は、バッグ底面に配置。内側は袋状であり、シューズサイズを気にせずに収納できるショルダーパッドが肩上端に当たるのは「白い部分の上端から10cm程度だけ」。その下部にも発泡EVA成型パーツを使えば、クッション感が十分で、堅牢。なんといっても「通気性がいい」わけで、肩に汗をかくなんてこともないし、全体の軽量化に貢献している。スポンジクッションには絶対不可能な「中抜きハシゴ型」の発泡EVA成型パーツだからこそ実現した、超画期的なショルダーストラップなのだ。
こうした「細部に宿る軽量化への配慮」が、軽量でシンプルな「新次元デイパック」を構築している。「テニス用バッグには絶対必要」とされている「シューズルーム」を下部に備え、両脇にはそれぞれ縦型ポケットを装備。片側は「落下・盗難抑止」のためのファスナー付きポケット。反対側のポケットは、ドリンクを入れられるメッシュポケットなのだが、入っているものが見えない「伸縮メッシュ」が用いられているため、パスケースを入れていても、抜き取られちゃうんじゃないかという不安がない。
そんなことに感動しながら、1か月間、使った。
筆者的にはもう少し「外部からアクセスできるポケット」がほしかったのと、内部にスリットポケットもない超シンプル構造であるため、独自のセッティングが必要だったものの、世界初の画期的すぎる構成は、デイパックの未来を変える逸品だ!
もちろん、たくさん作る「世界グローパルアイテム」だからこそ、EVA金型を起こすコストもカバーできるわけで、国内ブランドの少量生産企画では不可能であろう。すべてにこれを求めることはできない……。しかしながら「できるならば、このほうがはるかにいい!」というブレイクスルーの実物が、入手できる時代が、ついに来たのだ。
きっと、これからのデイパックは……変わる。
テクニファイバー|Tecnifibre/リフォームバックパック|REFORM BACKPACK
環境負荷を低減するためにバッグのコンセプトを変革する。 2段階の生産プロセスと1層生地で二酸化炭素排出量を40%削減。 ※シューズ収納スペース付 ※ラケット収納スペース付
商品をCheck!
テクニファイバー REFORM BACKPACK◎ 価格:15,950円(税込)
◎ サイズ:29cm(横幅) 53cm(高さ) 26cm(奥行き)
◎ 素材:EVA・塩化ビニル樹脂・ポリエステル
◎ 重さ:約820g
◎ 生産国:中国
文=松尾高司1960年 生まれ。『月刊テニスジャーナル』で 26年間、主にテニス道具の記事を担当。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。テニスアイテムを評価し記事などを書く、おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。