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2026.08.22

ギア情報

Why Tennis Gear #02 ~どうしてストリングを張り替えなきゃいけないの?~

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ストリングは「いきもの」! 生きている糸がボールを飛ばす


昔、あるテニス専門誌の記者が「どうして張り替えなんかしなきゃならないんですか? 切れてないんだから使えるでしょ」と言って、周りのみんなをシーンとさせちゃいました。

だれかが「あんたが履いてるパンツのゴムは、切れてないように見えるけど、だんだん緩くなってくだろ?」と言うと、あるストリンガーが「ガムって、味がしなくなっても消えることはないけど、味のなくなったガムに存在価値ってありますか?」とツッこみます。

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「生きてる糸(ストリングの通称)」と「終わっている糸」を「同じ」としか感じないのは、じつに悲しい話です。「糸が生きている・終わっている」というのは、こんなことでわかります。張ってあるストリングの中央にハサミを入れたとき「ガンッ」といって糸が弾け、両側に引っ張られていくようなのは「まだ生きてる糸」。切ったんだけれど、ウンともスンとも言わず、ただ切れてるだけなのは「とっくの前に終わっている糸」です。

ストリングは「生き物」といっしょ。ストリングに与えられた「命」が、ボールを弾き出してくれるんです。「いやいや、3年間も張り替えてないけど、ボールは飛んでくれてるから!」って言う人がいますけど、それはストリングが飛ばしてくれているんじゃなくって、あなたのスイングの力と、ラケットの重さがボールを「押し出している」んですね。ストリングは何も仕事をしていない……ボールが持っている「弾む力」のおかげでテニスできていると勘違いされているんですね。

■ ストリングの命は「伸縮性」。見えないけれどもかならず「寿命」がくる


では、ストリングは何をしてくれるのか? パデルテニスのパデルや、ピックルボールのパドルは「基本的に板」であって、「ボールの弾力」だけが主たる反発力を生んでくれます。それは「コートが小さい」から、そういう道具が採用されているんです。でも広いコートでプレーされるテニスでは、ラケットにストリングが網状に張られていて、それぞれのストリングが「伸びたり縮んだりする」ことで、ボール自体の弾力に、さらなる加速力を与えます。

誤解を怖れずに言うなら「トランポリンと同じ原理」です。トランポリン台の「枠」がラケットフレームで、「跳躍面」がストリングです。トランポリンでは、跳躍面の伸縮性に、人間が膝の曲げ伸ばしの力をシンクロさせて高く飛び上がります。

テニスラケットの場合は、インパクトの力によって、フレーム自体も強靭な「しなり⇔戻り」による反発性を発揮しますが、反発現象のメインは「ストリングの伸縮性と、ボールの弾力性のシンクロ」です。

つまり……ストリングの「伸びる⇔縮む」力と、ボールの「潰れる⇔戻る」力が同時に起こるのが「テニスのインパクト」なのです。

ストリング自体が「伸縮する」ことで、ストリング面に弾力性を発生させ、ボールに「跳躍する力」を与えます。これが「生きているストリング」の仕事。でも伸縮力を失い、「ただ張られているだけ」のストリングは、スイングの力でボールを潰して飛ばすだけ。これが「終わっている」状態です。

そして、どんなストリングも、自分が待つ伸縮性を発揮し終えたところで、機能的な「寿命」を終えます。そうなったストリングは、構造的にフレームに残っているだけで、自分自身は、何も仕事をしません。

だから、終わってしまったストリングを、命あるフレッシュなストリングに「張り替える」のです。だれもが経験しているはずです……ストリングを張り替えたばかりのラケットは、活力あるボールを弾き出してくれることを!

■ ポリエステルが本当にオイシイのは1週間。ナイロンならば「なんとか3カ月」


以前に「はじめてシリーズ」で、ストリングの素材による性能・フィーリングの違いについて話しましたし、性能寿命の話もしたんですが、これってとても大切なことですし、多くのプレイヤーが気付かずにいるので、くどいようですけど、もう一度、話させてください。

現在、ほとんどのトッププロは「ポリエステル製」ストリングを使っています。30年ほど前までは、ほぼすべてのプロが「ナチュラルガット」を使っていたのに、性能・個性的に「まったく正反対」のポリエステル系にすっかり移り変わってしまったのはナゼでしょう?

ナチュラルガットは、非常に伸縮性に富み、伸縮性能の維持力がダントツに長いストリングです。石油由来のポリエステルやナイロン(ポリアミド)と違って天然素材のナチュラルガットは、「伸び⇔縮み」の繰り返しにも衰えにくく、切れさえしなければ長期にわたって(人それぞれの感覚ですが、筆者の場合は1年以上も満足できていました)伸縮性能が持続します。

それに対して今や全てのプロが使うポリエステル系は、伸縮性が発現する「力」レベルがきわめて高くて、かなりのパワーでガッツン打たないと伸縮してくれず、初中級プレイヤーにとっては「とても硬い打球感」と感じられます。

でもプロたちは、ポリエステル系ストリングの潜在能力を存分に引き出すことができるだけのインパクトパワーを持っています。むしろ「飛ばない」でくれることが、めちゃめちゃ飛ぶようになってしまった現代ラケットフレームを使ううえで、都合がよいわけです。それを「コントロール性が高い」と謳うストリングメーカーは多々ありますから、それを見た「普通の」一般プレーヤーたちは「プロが使うんだからポリエステルって良いんだ!」と思い込んでしまって、本当は自分の力量にはナイロン・モノフィラメントあたりがマッチしているのに、「プロが使っている」という文句に影響され、気張ってポリエステル系を張りたがる風潮があるのも、無理からぬところでもあります。

誤解しないでいただきたいのは、「ポリエステル系はいけない!」と言っているのではないということです。ポリにはポリに向いたプレーヤーがいる……ということです。

ただ、ポリエステル系は「性能寿命が短い」ということは知っておいてください。つまり「伸縮性が低下して反発性能が落ちるのが早い」ということですが、プロはかならず試合前にフレッシュなポリに張り替えちゃいますから、とくに問題はないわけです。

でも、辛いのが一般プレーヤー……。ポリエステル系は「切れにくい」だけに、性能寿命が尽きても使い続けてしまいがちです。ポリエステル系ストリングのほとんどは、張ってから数時間・数日のうちに急激に伸縮性が低下します。ですから、ポリエステル系のもっともオイシイ期間って「1週間」くらいじゃないでしょうか。それ以降は「味のしないガム」になってしまっています。

本来ならば「使うべきプレーヤーが使ってこそオイシイ」ポリエステル系ストリングなのに、「だれが使ってもイイ感じ」と誤解されがちなのは残念なことです。ポリエステル系ストリングは、「かなり強烈にインパクトするプレーヤー」「ナイロンでは、あっという間に切れてしまうプレーヤー」、そして「頻繁に張り替えることができる経済的余裕のあるプレーヤー」に向いていると言えます。張り替え費用のことだけを考えると、長い期間 性能を維持できるナチュラルガットのほうが、お得なケースもあるでしょう。

「ストリングの張り替えの必要性」を知ったうえで、「自分に最適のストリング・タイプってどれ?」を、いま一度、考えてみてくださいね。


文=松尾高司
1960年 生まれ。『月刊テニスジャーナル』で 26年間、主にテニス道具の記事を担当。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。テニスアイテムを評価し記事などを書く、おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。



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