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2023.12.29

選手情報

西岡良仁ら多くの日本男子が自己最高を更新! 高田充・日本男子ナショナルヘッドコーチに聞く2023年シーズン「日本人同士で刺激し合った」

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綿貫陽介(中央下)は自己最高ランク72位を記録。高田充ナショナルヘッドコーチ(中央上)が主に帯同

高田充・日本男子ナショナルチームヘッドコーチ「日本人選手同士で刺激し合ったところが大きい」


2024年シーズンも間近に迫る男子ツアーだが、2023年シーズンの日本男子は西岡良仁(ミキハウス)やダニエル太郎(エイブル)らだけでなく、若手が共に成長を見せた1年であったように思う。西岡が自己最高となる24位を記録し、ダニエル太郎(エイブル)はキャリアを通じて最高の75位でシーズン終了。そして、新たな顔としては、綿貫陽介(SBCメディカルグループ)がトップ100入りを果たし、一時は72位までランキングを上げ、望月慎太郎(木下グループ)は「木下グループジャパンオープン」(東京・有明/ATP500)4強入りでキャリアハイの129位となった。彼らの活躍を間近で見てきた日本テニス協会強化本部ナショナルチーム男子ヘッドコーチを務める高田充コーチに今年を振り返ってもらうとともに、復帰初戦でチャレンジャー優勝を果たしたものの再び怪我で試合から遠ざかっている錦織圭(ユニクロ)について語ってもらった。

【画像】グランドスラム2023で熱戦を繰り広げた日本男子選手たちの厳選写真!


――最初に2023年の日本男子ナショナルチームを振り返っていただけますでしょうか。

「全体的には今年キャリアハイを更新した選手が多くて、西岡良二が全豪オープンと全仏オープンで4回戦進出を果たし、10月にはツアー準優勝(中国・珠海)がありました。全仏終了後にはキャリアハイ24位になり、綿貫陽介が72位、望月慎太郎が129位、島袋将(有沢製作所)が135位、内田海智(富士薬品)が147位、清水悠太(三菱電機)が203位を記録しています。そこにキャリアハイではないけれどダニエル太郎が75位となっています」

――6人の選手がキャリアハイを記録した今年、その要因となることがあれば教えてください。

「日本人選手同士で刺激し合ったというところが大きいと思います。西岡がグランドスラムで2度の4回戦進出があったことは、日本人トップとして結果を残せるんだというところを見せてもらいました。その中で綿貫や島袋、望月、清水を強化していくという目標があったのですが、最初に島袋がチャレンジャー(タイ・ノンタブリー)を優勝し、次にクレーコート(イタリア・バルレッタ)で望月が優勝。また、綿貫は全豪の予選を勝ち抜いてグランドスラム本戦初出場を果たし、本戦1回戦も勝った。3月にはマイアミオープン予選をクリアして2回戦に勝ち上がりました。みんなが刺激し合った中で、グランドスラムやマスターズ大会で勝ちを重ねることができるようになり、ダニエルも綿貫が100位以内に入ったことで負けられない!というのはあったと思います」

――今年は成果を挙げたと感じていますか。

「そうですね、これだけのメンバーがキャリアハイを更新するというのはあまりないことだと思います。ナショナルチームのネクストジェネレーションとして、この4人(綿貫、望月、島袋、清水)の強化メンバーをツアーの中でもサポートしてきたので、成果といえばそう言えるのではないでしょうか」

――昨年の全米オープン時のインタビューでは「ここ4、5年で100位以内に4~5人いることが目標」ということでしたが、既に2年足らずして目標に近づいています。

「(100位以内に)本当に2~3年というふうに思っていて、年初めに全員に目標設定を決めました。例えば、綿貫(シーズン当初のランキングは140位)に関しては、80位ぐらいを目標にしそれに対して逆算したところから、何が必要なのかというところから始まりました。大会を選ぶこともそうですが、怪我をしないフィジカルに加えて、レベルが上がってくる中での身体の強さも必要。それに戦術やプレースタイルを見直した取り組みも含め、80位はハッパをかけたランキングでした。結果的にキャリアハイ72位となり、最終的には99位ですが現実になりました」

「これまでの感覚からすると140~150位ぐらいから100位を切るというのは、簡単なことではなくて、出場する大会のレベルが高くなっていきます。もちろん『レベルの高い大会にチャレンジしたい』という気持ちも選手の中でありますが、ツアーレベルになると一段とレベルが上がり、そこのメンバーに勝ってポイントを重ねていくことは難しいと考えていました」

「というのもチャレンジャーで1回優勝してポン!と150位ぐらいになったとしても、そこから上を目指すとなると、さらにチャレンジャーで2回優勝とツアーでベスト4というジャンプアップがないと100位以内は入ることができない。通常は1年ぐらいもがいてその次の年に突破という現実的にはそうなのかなと思っていました。それが今年は取り組みとしていい形でできたように思います」



――成果を積み上げて結果につなげていくプロセスが実を結んだことについての要因を教えてください。

「このメンバーは、良い悪いは別として新型コロナの影響でアジアの大会が少なくなったことによって、アメリカやヨーロッパに出て行くことが多くなってからこの成績なので、ちゃんと“世界が見えている”。以前は、アジアで稼いだポイントでランキングを上げ、欧米へ向かう傾向がありましたが、常にそこでやってきた中でコーチも含めて選手自身も周りが見えているように思います。特にフィジカル面を重視して取り組むようになったというのは、世界を間近に見ているからこそだと思います」

「(ナショナルチームの)合宿でも個々の目標は異なり、取り組み方もそれぞれ違うのだけれど、そういう意味では“チーム”を作る形というのはちゃんとコーチ、フィジカルトレーナーと向き合い、選手も世界の選手たち対峙した中での取り組みに慣れてきたように感じます」

――コロナ以後、テニスがまた一気にスピード化した印象がありますが、来年以降のテニスの流れについてはどのようにお考えでしょうか。

「以前は100位以内に30代以上が40人以上を占めていましたが、現在は21人となっています。10代や20代前半に占める割合が上がっていて、そういう意味では世代交代の流れになってきているような印象です。トップ10にはジョコビッチ以外の30代の姿はなく、今の世代のスピードテニスは今後も加速していくように思います」

――アメリカ男子テニスも一時的にトップ30にランクインできないということもありましたが、現在大躍進を遂げています。

「アメリカのテニスの流れも現在の日本男子と似ている部分があるように思います。フリッツやポール、ティアフォーらが競い合っている。『あいつが行くなら!』というように。日本も元はと言えば、(錦織)圭が先に出てきて『あの身長で』『あの体格で』『俺ももしかしたらできるんじゃないか』というような流れがありました。松岡(修造)さんしかそれまでいなくて、身長がないと難しいと思われていたところから添田(豪、現デビスカップ監督)とか伊藤(竜馬)、杉田(祐一)がそれをクリアした時にいける!と心の壁が破られました」

「アメリカも30位以内に入っている選手が現在5人いますが、その中から来年のパリ五輪の米国代表に漏れる(各国最大4人まで)選手がいることも事実。またシェルトンの活躍で大学上がりでもツアーで活躍できる流れになってきているように思います」


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