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2025.09.18

選手情報

国枝慎吾はなぜアメリカへ?車いすテニスのさらなる発展へ「この国で世界No.1が出たらどうなるかというのも見てみたい」

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国枝慎吾 アメリカでの活動“裏テーマ”は「アメリカ人選手に種を蒔くこと」


グランドスラム通算優勝回数は50度、パラリンピックでは3度の金メダルを獲得して国民栄誉賞を受賞した国枝慎吾。2024年1月からアメリカに拠点を移し、全米テニス協会(USTA)とともにアメリカ人の車いすテニス選手の指導に当たった。なぜ日本ではなく、アメリカだったのか「全米オープン」を訪れた本人を直撃した。

【SNS】アメリカの車いすテニスジュニアらと笑顔を見せる国枝慎吾

車いすテニス界のレジェンド・国枝慎吾は、2023年1月に世界1位のまま現役を退いた。それと入れ替わるように、国枝に憧れ車いすテニスを始めた小田凱人(東海理化)が同年の全仏オープンでグランドスラム初優勝。史上最年少で世界ランク1位となった。また、女子の車いすテニスをけん引してきた上地結衣(三井住友銀行)も変わらず高いレベルを維持。昨夏に開催されたパリ・パラリンピックでも2人が金メダルを獲得した。日本はいわば車いすテニスの強国だ。

全米オープンでもトップシードに位置し、「(小田)凱人も上地(結衣)もこの大会の第1シードですし、次の世代というのが『車いすテニス』をしっかり支配してくれて自分もうれしいですね」と国枝も安堵の表情を浮かべる。

しかし、国枝が第二の人生の地として最初に選んだのは、アメリカだった。

「自分から(USTAに)アプローチしました。英語の勉強をしたかったことと、それに併せて指導もすることでコーチングも学べるかなと思って、今後のために良いかなと決断しました」

近年、アメリカのテニス界において、健常者ではテイラー・フリッツやベン・シェルトンらトップ10に入る選手が出てきているものの、車いすテニスにおいてはグランドスラムにおいてシングルスの優勝はいない。だからこそ、車いすテニスのさらなる発展の可能性を感じた。

「自分自身も現役時代にアメリカの元気のなさ、というのは感じていました。1990年代にアメリカがスポーツで覇権を握っていた時代から本当に20年ぐらい低迷しているので、その辺も含めて(自分の目的でもある)英語やコーチングなどということはさておき、(アメリカ人)選手に種を蒔いていく時間にもしたいというのは『裏テーマ』としては持っていたところではあります」

「日本とヨーロッパだけだとつまらないですよ。もっと世界を巻き込んでやっていかないと。特にアメリカはビジネス的にも潜在能力のある国で、この国で世界ナンバー1が出たらどうなるかというのも見てみたい気もする。昔はいたんだけど、今の時代はいないので。それがどうしても気になるところではありました」

実際、指導に当たってみると違いはあった。「日本とはだいぶ差があるなと実際に思いました。選手の意識も日本はプロ意識を持っている選手が多い中、アメリカはそうではないなというのが最初に感じたところです。そういったところから鍛え直す気持ちで関わりました」と言う。その中、グランドスラム・ジュニアで優勝した男子のチャーリー・クーパーや女子のメイリー・フェルプスら若き才能も台頭してきた。“裏テーマ”の国枝が蒔いた種から芽が出てきたと言っていいかもしれない。



拠点を移して約1年半、国枝はアメリカでの活動に一段落して日本に戻ってくる。「こちら(アメリカ)での仕事は全部終わり、良い経験ができたなと思います。また日本でどういった活動をするか決まっていませんが、テニスに関わっていきたいですね。もしかするともう一度、日本の『車いすテニス』に貢献したいという気持ちも出てくるかもしれないので、自分自身も楽しみにしています」。車いすテニス界の活性化へ、次はどのような活動をしていくだろうか。

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