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2025.10.06

選手情報

アジア・スイング3大会でボールを統一、選手の声に耳を傾けたATPにトップ選手も評価「怪我のリスクを減らせる」

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東京を含む3大会連続で同じボールを採用。世界12位ルード「多くの選手が不満や意見を伝えていた」


世界ランク1位のカルロス・アルカラス(スペイン)の優勝で幕を閉じた「木下グループジャパンオープン」。今年からATPの要請に応じて、前週に行われた「成都オープン」(中国・成都/ATP500)、翌週に行われる「ロレックス上海マスターズ」(中国・上海/ATPマスターズ1000)と3大会連続で同じボールが使用されることとなり、この動きに選手も歓迎した。

これまで使用球に関しては、大会が各メーカーと契約するため、なかなか統一化が進まなかったのが事実。選手からも大会毎にボールが異なることが、怪我につながっていると不満が上がっていた。

ITF(国際テニス連盟)によって定められているテニスボールの規格では、重さが56~59.4グラム、直径が6.54~6.86センチとされており、どの程度バウンドするか反発も違う。数字上はわずかな差だが、繊細な感覚を持つトップ選手にとっては大きい。

テイラー・フリッツ(アメリカ/世界ランク4位)は、「ボールについては1時間でも話せるよ」とし、「試合会場によっても違うし、サーフェスや気温、湿度によってボールが大きくなる。だから、7・9ゲームでの交換ではなく、もっと早く替えるべきだと思うこともある。でも、それがすごく顕著になる週もあれば、そうならない週もある」と、選手にとってプレーに影響する難しい問題だと話す。

その中で、ATPは2024年1月に発表していたように、今年から2月のヨーロッパ室内大会やアメリカ、中南米スイングなどでボールを統一し始めた。

「木下グループジャパンオープン」も、甘露寺重房トーナメントディレクターが5月の発表会見で「ATPから1年以上前に通達があった」とし、ATP500成都、ATPマスターズ1000上海のアジア・スイングで同一のボールを採用。ヨネックス「ツアープラチナム」が2028年まで使用されることとなった。

大会使用球の一貫性ついて、グランドスラムで3度の準優勝経験のあるキャスパー・ルード(ノルウェー/同12位)に聞いたところ、「毎週変わるよりも、統一されているほうが合理的だと思う。選手の健康面でも怪我のリスクを減らせるし、3大会連続で同じボールでプレーできることは良いこと。ATPが選手の声を聞いて合意に至ったのはうれしい。多くの選手が不満や意見を伝えていたからね」と同じアジア・スイングでのボール統一を歓迎。

ボールやサーフェスが大会毎に変わっていたことで、大会前にはストリングの調整が必要だったと言うが、ボールが一緒であればその負担も軽減できるだろう。

また、昨年のATP500成都に続いて、「木下グループジャパンオープン」で初めての採用となったヨネックスのボールについて、出場選手からもフェルトの毛羽立ちが他社よりも遅くて良いという評価を得ている大会関係者は話す。

トップ選手同士が打ち合えば、当然のことながらボールは毛羽立ってくる。ゲンを担いで同じボールを使う選手やルーティンもある選手もいるだろうが、多くの選手はボールパーソンから3~4球を受け取り、毛羽立っていないボールを選んでサーブを打つ傾向があるとテニス解説者の辻野隆三氏は言う。

「毛羽立ったボールは飛ばなくなる。それが少ないということは、基本的にはどの選手にとってもプラス。スピード感が出ることでラリー数も多少減る。そうすると肘や手首、肩だけでなく、体全体の疲労感も変わってくるだろう」と、プレーの質が上がるだけでなく体への影響があるとした。

選手からの要望に、ATPが応えて徐々に実現しているボールの統一化。今後も進んでいくだろうか。

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写真=田沼武男 Photos by Takeo Tanuma