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2025.12.12

選手情報

【2025デビスカップ・ジュニア・ファイナル】日本男子が準優勝! アメリカの壁にはね返されるも堂々の世界2位

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写真左から岩本功監督、阿部素晴、川口孝大、渡邉栞太、髙橋信夫トレーナー

タフマッチを勝ち抜いた日本代表──岩本功監督が語る「準優勝の価値」と「未来」


16歳以下の男子国別対抗戦「2025デビスカップ・ジュニア・ファイナル」(チリ・サンティアゴ)が11月上旬に開催され、日本代表が堂々の準優勝を果たした。昨年の3位を上回る快挙であり、強豪がそろう本戦で接戦を制し続け、ついに決勝の舞台へと駆け上がった。

指揮を執ったのは岩本功監督。メンバーは渡邉栞太(Tension)、川口孝大(はちおうじ庭球塾)、阿部素晴(ワタナベテニスカレッジ)の3名だ。決勝の相手は大会屈指の層の厚さを誇るアメリカ。結果こそ敗れたものの、日本チームの戦いぶりは世界に存在感を示すものとなった。

予選ラウンドを2位で決勝トーナメントに進んだ日本は、準々決勝でチェコと対戦。岩本監督によると、チェコはシングルス2人がそろって190cm超の長身。ビッグサーブと重いストロークで押してくる強豪だったという。日本はナンバー2の川口が粘り勝ちし、シングルス1を落としたものの、勝負はダブルスへ。10ポイントタイブレークまでもつれた大接戦を制し、チームに大きな勢いをもたらした。

続く準決勝ドイツ戦はスコア上は3-0の快勝。ただし内容はどの試合も紙一重の攻防で、「わずかな差を勝利に変えた試合ばかり」と監督は振り返る。積み上げてきたダブルス強化や海外遠征、合宿の準備が結果に直結した勝利だった。

決勝のアメリカはITFランキング20位台の選手を擁する“スター軍団”。日本は「シングルス1勝→ダブルス勝負」のパターンに持ち込みたかったが、アメリカの完成度の高いテニスが立ちはだかった。シングルスではわずかなチャンスをものにできず、チャンスボールの精度や細かなプレーの差が響き、ダブルス勝負へ持ち込めないまま敗戦となった。

それでも“世界2位”という成績は、日本ジュニアの着実な進化を示すものだ。ここからは、日本チームを率いた岩本功監督の独占インタビューをお届けする。

<岩本功監督インタビュー>

「“積み重ね”が結果となった準優勝。だが、まだ上に行ける」


――準優勝おめでとうございます。今大会を総括してください。

「今年の世界大会は良い結果を残せたと思います。正直、決勝のアメリカは強かったですね。ランキング的にも格上で、非常に良いテニスをしていました。日本としてはシングルスを1つ取ってダブルスへつなげるのが勝ちパターンですが、そこに持ち込ませてもらえませんでした。シングルスでの少ないチャンスを取りきれず、強い相手ほど“ちょっとした場面”で出てしまう簡単なミスをきっかけに突き放してきます」

――準々決勝や準決勝もタフな戦いでした。

「チェコ戦はダブルスの10ポイントタイブレークまでもつれる大接戦でした。チェコの選手は2人とも190cm超の長身で、ビッグサーブに加えストロークの質も高かったです。ナンバー2で出場した川口が頑張って勝利し、シングルス1は落としましたが、ダブルスにつなげられました。準決勝のドイツ戦は3-0でしたが、内容は紙一重の試合ばかりで、結果を出す難しさを感じました」

――準優勝をどう捉えていますか?

「決勝までいったので悔しさもありますが、アメリカは選手層が厚く、ITFランキング20位台の選手もいるスター揃いのチームでした。来年もアメリカの1番と3番の選手が残ることを考えると、こちらももっと頑張らないといけないという良い刺激になりました。ここに至るまで、年始からスタートしてきたオーストラリア遠征でダブルス強化に努めたり、この大会を見据えての海外遠征、そして日本での合宿を継続してやってきたこと、その小さな積み重ねがここぞ!というところで活きてきて、いい方向にいったということだと思います。勝負の世界なので『時と運』もあり、やってきたことが実らない場合もありますが、昨年は3位、今年は2位という形で終えることができました」

――“積み重ね”の具体例はありますか?

「今、フィリピン遠征中なのですが、コートが6面しかなく、基本的に大会側から試合前に練習コートの割り当てがありますが(早い者勝ち)、30分しか練習できません。そこで、試合に備えて朝5時15分にホテルを出て、5時30分に会場入り。日の出の5時50分から8時過ぎまで練習しました。他の選手が来る前なら課題に集中できますが、日中は雨の中断も含めコート争奪戦になるため、思い通りの調整が難しくなります」

「これは『早く会場に入れば練習環境を確保できる』という教育的な要素も含んでいます。また海外では食事が合わず体重が減りがちなので、“日本を出国した時より体重を増やして帰る”ことも選手に課しています。早朝練習に備えて夜7時30分に選手の携帯を私が預かることによって、選手自身がストレッチや試合の準備をして睡眠につくことができます。こうした試合運営との調整も含め、さまざまな工夫をしています。遠征経験をクラブに戻ってからも実践し、ホームコーチと連携しながら“日々の努力”につなげていくことが最も重要だと思っています」

――錦織選手や西岡選手もツアーの過酷さによる怪我に悩まされてきました。ジュニアの世界も例外ではないと思いますが、ツアーで戦うための身体作りについては?

「怪我を防ぐため、合宿ではトレーナーを入れて身体ストレスの知識を共有しながら教育しています。ストレッチなど当たり前のケアをきちんとできるかは選手次第ですし、身体強化には“追い込むトレーニング”も必要です。その分、怪我のリスクもある。疲労が原因の捻挫もあれば突発的なアクシデントもあるので、アフターケアが非常に重要です。プロレベルになれば治療やボディケアは不可欠ですし、普段のホーム環境でどれだけ取り組めるかも大切です」

――来年への抱負をお願いします。

「来年のジュニアデ杯に向け、想定できるケースを並べながら準備を進めています。これまでの“継続”をしつつ、下の世代(14歳以下)にも良い選手がいるので、枠を広げながら引っ張っていきたいと思っています」

決勝でアメリカにこそ及ばなかったものの、日本は昨年の3位から大きく前進し、“世界2位”という確かな結果を残した。その裏には、海外遠征での早朝練習、食事管理、睡眠管理といった細部までこだわった積み重ねがある。

岩本監督が語ったように、強豪を相手にしたときは“わずかな場面の質”が勝敗を分ける。今年の準優勝は偶然ではなく、その積み重ねの先に生まれた成果だ。来年、日本がこの経験をどう昇華し、どこまで世界に迫るのか。ジュニアたちの成長曲線から目が離せない。

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写真=本人提供