close

2026.09.14

選手情報

ズベレフ、優勝決定に気づかぬ極限の集中「ゾーンに入っていた」「まったく歓声が聞こえなかった」[全米オープン]

  • 著者をフォローする
  • 記事を保存

SHARE

  • 著者をフォローする
  • 記事を保存

ズベレフ、2万4000人の完全アウェーを遮断 2020年の悲劇を乗り越えた極限のメンタル


現地9月13日、「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク)男子シングルス決勝が行われ、第1シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ/世界ランク2位)が同大会で初優勝を果たした。しかし、優勝決定の瞬間、本人は試合終了に気づいていなかった。

【動画】ズベレフ、極限の集中で気づかなかった優勝の瞬間!&決勝ハイライト

第8シードのベン・シェルトン(アメリカ/同9位)との決勝を6-3,7-6(2),5-7,6-2で制したズベレフ。最後のポイントを取った直後、すぐには喜びを見せなかった。

試合後の会見で理由を聞かれたズベレフは、「その瞬間はかなりゾーンに入っていた。まったく歓声が聞こえなかった。何も聞こえないトンネルのような状態だった」と説明した。

実際、第4セットを6-2で終えていたにもかかわらず、スコアを5-1と勘違いしていたという。

「ブレークを2回したことは分かっていたが、6-2ではなく5-1だと思っていた。ただ、それが結果的に助けとなり、試合を締めくくる場面で緊張せずに済んだ」

つまり、勝利を決めるサービスゲームだと認識せず、試合が続いているつもりでプレーしていたのである。さらに、大歓声によって主審の声も途絶えていた。

「観客が大声を上げている状況で、主審の声を聞き取るのは不可能だ。そのため『ゲームセットアンドマッチ』のアナウンスも聞こえなかった」

最後のポイントを終えたズベレフは、試合終了にもかかわらず、次のポイントに備えてベースラインへ戻ろうとした。観客の反応を見て初めて異変に気づき、ようやく優勝を理解したという。

この場面は、単なるスコアの誤認ではない。決勝の最終局面において、極限まで外部の情報を遮断していた証拠である。

会場は約2万4000人を収容するアーサー・アッシュ・スタジアム。対戦相手は地元アメリカのシェルトンであり、観客の大半がアウェーの環境を作り出していたが、ズベレフはその声援すら意識の外へ追いやっていた。

2020年の全米オープン決勝では、ドミニク・ティエム(オーストリア)を相手に2セットを先取しながら、優勝まであと2ポイントの場面から逆転負けを喫した。6年の時を経て再び立った決勝の舞台で、ズベレフは過去の失敗ではなく、目の前の1ポイントだけに集中していた。

ズベレフは全仏オープンを制したことで、グランドスラム決勝に対する感覚が変化したと語る。

「パリで優勝する前は大きなストレスを感じ、『いつか優勝できるのか』という疑問が常にあった。現在は、こうした決勝の舞台でプレーすること自体を楽しめている」

その言葉通り、今回の全米オープン決勝では極限の集中状態に入った。優勝を認識できないほど目の前のプレーだけに意識を注ぎ込み、6年前に逃したトロフィーを手にした瞬間も「まだ試合が続く」と考えていた。ズベレフは最後の1ポイントまで、完全に自身の世界に入り込んでいたのである。


無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

写真=田沼武男 Photo by Takeo Tanuma