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2026.10.14

ギア情報

Why Tennis Gear #03 〜どうしてテニスはいろんな種類の地面でやるの?〜

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サーフェスの多彩さが、テニスを面白くした!


いま、世界的なプロスポーツでも、「同じ地面(サーフェス)」を使ってやらなければならない……というものは、そんなに多くはないですね。サッカーは「天然芝」が基本みたいなことありますけど、野球もアメリカンフットボールも「天然芝か人工芝」。それなりにバリエーションがあります。

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でも、室内競技の卓球やバドミントン、バレーボールやバスケットボールの国際大会は、床に「弾性のある塩ビシート」が敷き詰められた体育館で行なわれます。その塩ビシートにもいろんな材質ものものがあり、メーカーの違いによっても、けっこう違っていたりします。「厚さやクッション性」が違ったり、表面処理の仕方によって、「滑りやすさ(にくさ)」にも差があるものです。

そのいっぽうで、学校部活や一般サークルでの室内競技では「体育館の板張り床面」が当たり前です。学校の体育館の床なんか、競技ごとに違う色のラインテープが、幾重にも重なって貼られていて……いやぁ懐かしいですね。

特別なサーフェスや床面でプレーできるのは、「プロ(レベル)の場合」でしょう。一般でも全国的な大会になれば、整った環境でプレーすることができるでしょうが、普通は、ほとんどがそんな恵まれた環境ではできません。全国の野球グラウンドだって、だいたいが「土」でしょ。サッカーは「芝でやるようにしよう!」と推奨されていても、年間の維持費が1000万円以上かかる天然芝のピッチを備えている学校なんて、数えるくらいしかないんじゃないですかね?

そこで、一般レベルでよく使われるのが「人工芝」です。これはそのスポーツでも「維持費が安く」、特別な専門的な管理というのも必要ないし、遠目に見れば「それっぽく見える」じゃないですか。

日本のテニスコートでは、「砂入り人工芝」が全コート面数の半分以上を占めるようになりました……が、1980年代のテニス大ブームの頃には、まぁいろんな種類のコートサーフェスがあったものです。

■ 昔はもっといろんな種類のテニスコートがあった


50年前、日本のテニスコートのほとんどが土……「クレーコート」でした。ただ、それなりの管理・整備が必要ですから、ちゃんとしたクレーコートは少なく、市民レベル・学校レベルで敷設されているのは「クレーコート」というより「土コート」でしたよねぇ。

1980年代、いまでは想像もつかないくらいの「大テニスブーム」が全世界規模で広まります。すると都会の郊外で農業を営むお百姓さんたちが、「田畑よりもテニスコートにしたほうが儲かるんじゃないか?」ってことで……なかには立派なテニスクラブを建てた方もいらっしゃいましたが、ほとんどが土をならして線を引き、ネットポストを立てた……くらいの感じでした。

しばらくしてテニスをする若者が増えるようになると、大きな企業も乗り出し、都内の各所にオシャレなテニスコートを造ります。その当時、流行った言葉が『全天候型テニスコート』! 雨の中をやらそうってわけじゃありませんが、1970年代にあった「コンクリート製コート」の上に、ぶ厚い樹脂製のカーペット式コートを敷設したり、プラスティックのスノコを敷き詰め、「雨が上がった瞬間からプレイ可能!」というのもありました。

次に増えてきたのが、舗装された土台の上に、複数層の舗装をして、弾性素材で仕上げる「ケミカルコート」。現代のハードコートの原点ですね。これをいっせいに採り入れたのが、1980年代の全国のリゾートホテルです。普段はデコボコの土コートで練習してる学生たちにとっちゃ、そりゃあ夢みたいに華やかなコートでした。ただ、テニスブームが冷え始めて、テニスリゾートの数が減ると、それまで憧れだったハードコートに雑草がはえ、コケで覆われたり、無惨な姿となって、果てはそのまま駐車場にされたりしました。テニスを続ける者にとっては、まさに「国破れて山河あり 城春にして草木深し」の感ですなぁ。

■ サーフェスごとに「専門家」がいて面白かった時代


グランドスラム大会は「全豪がハード、全仏がクレー、ウィンブルドンが芝、全米がハード」(かつては全米がクレー、全豪が芝)で、ATPファイナルズがインドアカーペットと、大きな大会ではサーフェスが違います。15年前くらいから、トッププロのスタイルが「どの選手も同じようになってしまった」ため、「サーフェス別による様相の違い」ということを感じなくなってしまいましたが、その前は「サーフェスによって明らかな強さの差」ってのがあったんです。

たとえばクレーコートに強かったのがアルゼンチンのギレルモ・ビラス、スウェーデンのマッツ・ビランデル、オーストリアのトーマス・ムスター、その後、ラファエル・ナダルにつながってゆくスペイン選手は、みんなクレーでの勝率が圧倒的に高く、『クレー屋』と呼ばれていました。みな強烈なトップスピンを武器にするベースラインプレーヤーです。だからスペインでのデ杯のときなんか、インドアにレッドクレーを敷き詰めて、自分たちに圧倒的に有利に戦ったりしたわけです。

そしてその対極にあるのが『天然芝屋』。今は亡き「サーブ&ボレー」スタイルで、高速サーブで一気に崩して、次のボレー1本で決めてしまう。ジョン・マッケンローは両刀使いの超越的プレイヤーでしたが、ボリス・ベッカー、ステファン・エドバーグもピート・サンプラスも、脚光を浴びるステージです。ウィンブルドンベスト8に輝いた松岡修造さんも、強烈なサーブによって檜舞台で舞うことができたのです。

サーフェスの違いが先か? プレースタイルの違いが先か?
いずれにしても、「舞台が違えば、役者も違う」。国際テニス連盟は「なるべく同じ環境で闘えるように」と、ハードコート大会を多くしてしまいましたが、筆者に言わせれば「よけいなお世話」でしたね。プロ選手はやりやすいかもしれませんが、観るほうは「同じスタイル同士の単調な殴り合い」を見せられながら、長〜い試合時間……というのはねぇ。

「トップスピン対サーブ&ボレー」みたいな、いわゆる「他流試合」が面白いんです! トッププロそれぞれに明確な個性があって、観客だって応援のしがいがあるってもんですよ。いまじゃ「みーんなパワフルベースライナー」でしょ。だからこそ、せめてサーフェスくらいは違わなくちゃねぇ。

日本では、補修・整備の手間がかからない「メンテナンスの簡易さ」のメリット、雨天後「プレー再開までの時間の短さ」のおかげでコート稼働率が高くなって、運営経費が安くて、収益も大きいわけですから、公営コートのほとんどや、多くのテニスクラブが砂入り人工芝コートを選ぶのは無理からぬことです。

一般プレーヤー側だって、雨でオジャンになることが少ないのは嬉しいし、ソックスが超汚れるクレーや、下からの突き上げ感が大きく感じるハードよりも、安定した環境で快適にプレーできる砂入り人工芝を重宝に思うのはしかたないこと(シューズに砂が入ったりはしますけど)。

ここでボヤいても詮無きこと……
でもねみなさん、昔のテニスって、もっともっと面白かったんですよ!
その素因の一つが、コートサーフェスの違いであることは、間違いないです。「なんでもハードコートにすりゃいい」ってもんじゃないです。
ただ、筆者がテニスするときは、かならずハード……


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文=松尾高司
1960年 生まれ。『月刊テニスジャーナル』で 26年間、主にテニス道具の記事を担当。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。テニスアイテムを評価し記事などを書く、おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。

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写真=田沼武男 Photo by Takeo Tanuma