close

2022.09.09

大会情報

「瞬時に大きな力を出せるかが重要です」車いすテニス・西海大地トレーナーに聞く[USオープン]

  • 著者をフォローする
  • 記事を保存

SHARE

  • 著者をフォローする
  • 記事を保存

2選手のトレーナーとして活躍する西海大地氏

男女シングルスのドローを16選手に拡大、ジュニアの部も開設されるなど、今年のUSオープンでは、車いすテニスに改革がなされている。初のグランドスラム出場となった田中愛美(長谷工コーポレーション/世界ランク9位)選手、高室冴綺(スタートライン/世界ランク15位)選手に帯同する西海大地さんに直撃してみた。

【写真8点】田中愛美/高室冴綺USオープン写真ギャラリー

Q.西海さんはどういうきっかけでトレーナーを目指したのでしょうか。

「元々野球をやっていたのですが、3年間で3回骨折するなどケガが多くて接骨院によくお世話になり、助けていただきました。そういった中で、自分は選手を目指すのではなく、サポートに回ろうと思ったのがきっかけです」

Q.高室選手のトレーナーは、いつごろから勤めているのでしょうか? 

「サポートするようになって1年半になります。元々は、アイスホッケーのチームなどで、トレーニングやケアを担当していました。その後、ご縁があって田中選手、高室選手のサポートをすることになりました」

Q.車いすテニスではチェアワークが重要ですね。腕や体幹という部分で、特別なトレーニングをしていたりするのでしょうか?

「そうですね。上半身を目一杯使う競技であり、脚も車いすに固定されているので腰より上の胸椎、特に肩甲骨の柔軟性を出すようにしています。それだけでリーチの長さも届く距離も数cm違ってきます。

特に、上半身で必要なのがパワーです。いかに瞬時に大きな力を出すことができるか。 一歩目、ワンプッシュ目というのがカギになりプレーに影響を及ぼします。そのためのトレーニングとなると、例えば腕立て伏せをやるならば、ジャンプも入れて負荷をかけて出力を上げるなどですね。いずれにせよ、積みあげが重要なだけに、選手にとっては大変だと思います」

Q.トレーニングは、どういった計画を立てるのでしょうか?

「トレーニングというのは長期計画でもあります。4年間の計画を立て、一年ごとに、数ヵ月ごとに、というように逆算して作っていきます。筋肉を大きくしていく時期、筋力とパワーを高めていく時期など数ヵ月毎に繰り返していくというイメージです。大会直前になるとパワーをメインにしたトレーニングをやっています」

Q.追い込んでいく時期もあるわけですね。

「はい。筋肉を大きくしていく時期には、限界まで頑張ってもらいます(笑) それとトレーニングも大事ですが、食生活も“両輪”で大切です」

Q.好きなものは食べられないんですね?(と横にいる高室選手を見る)

「もちろんたまには食べていますよ(笑) ふだん食べるものは意識しましょう、と伝えていますが。(ここで高室選手から「今は食事の配慮にも慣れて、試合に必要なことだと思って食べるものには気を使っています」とお答えをいただくと)チートデー(笑) もありますしね。ある程度食べても大丈夫とい。ずっと仙人みたいな生活はできませんし」

Q.車いすテニス界は男女トップに日本人選手がいますね。目標としては立てやすいものでしょうか?

「高室選手は、元々フィジカル面の強さを持っていますが、さらにブラッシュアップできると思っています。(さらに上昇するためにも)技術の補助や体力、フィットネス、フィジカルな部分でサポートできればいいですね」

Q.トレーナーを職業として目指している方へアドバイスをお願いします。
「アスレティックトレーナーやトレーニングコーチという職業の良さは、アスリートの努力を“実りあるものにするお手伝い“ができることかと思います。選手と一緒に目標に向かって進み、選手が試合で躍動している姿を見れることは格別な喜びを覚えます。一方、その“お手伝い“には責任も問われます。体のケアやトレーニング1つで選手を壊してしまう恐れがあること、結果が出せなければ契約を解除されてしまう(職を失う)ことがあるからです。スポーツ科学の知見も織り交ぜながら、膨大な知識量と経験値を獲得するために人一倍勉強・実践・反省を繰り返して自己研鑽をし続けなくてはならないと思います。

Q.トレーナーよりも、車いすテニスをやりたいと言う人にアドバイス
「トレーナー目線から説明させていただくと、車いすテニスは、車いすに座って足が固定された状態で上半身を大きく動かす競技です。そのため、腰より上の胸椎や肩甲骨周辺の柔軟性が十分にないと、腰や肩、肘をすぐに痛めてしまいます。競技を健康的に継続するために、胸椎・肩甲骨周辺のストレッチやトレーニングを通して柔軟性を獲得していくことが大事だと思います。この胸椎・肩甲骨周辺の柔軟性は車いすテニスに関わらず、日常生活や他の競技にも活きてくるためオススメですよ」

Q.ありがとうございました。




■USオープン2022
・大会日程/2022年8月29日(月)〜9月11日(日)
・開催地/USTAビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニス・センター(時差13時間)
・賞金総額/6,010万ドル(81億7,390万円)
・男女シングルス優勝賞金/260万ドル(3億5,360万円)
・サーフェス/ハードコート(レイコールド)
・使用球/[男子]ウイルソン「USオープン・エキストラ・デューティ」、[女子]ウイルソン「USオープン・レギュラー・デューティ」

【特集】USオープン2022の記事はこちら

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録