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2023.11.21

選手情報

土居美咲らトップ選手を指導してきた佐藤雅弘トレーナー、終わりがないトレーニングも「1からきっちり段階を踏む」[後編]

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日本のトッププロを数多く指導してきた佐藤雅弘トレーナー、終わりがないトレーニングも「1からきっちり段階を踏む」


今年9月に惜しまれながらも現役を引退した土居美咲(ミキハウス)。キャリアハイは世界ランク30位で、グランドスラム本戦は36度出場、オリンピックも2度経験した。その活躍を陰で支えてきたのが、フィットネストレーナーの佐藤雅弘氏だ。

【画像】真剣なまなざしで土居美咲とトレーニングに取り組む佐藤雅弘トレーナー

テニスの上達には技術向上が必要。それはプロであっても変わらず、トップ選手の多くがコーチをつけている。また、それと同時に厳しいツアーを戦い抜くためにはフィジカルの強化が不可欠だ。

佐藤トレーナーがこれまで指導したプロ選手は数知れず、世界を目指す男子ジュニアの強化を目的とした「修造チャレンジ」でもフィジカル部門の責任者を務める。錦織圭(ユニクロ)や西岡良仁(ミキハウス)らのジュニア時代も間近で見てきた佐藤トレーナーの原点や心がけていること、日本のプレーヤーが世界で戦うためには必要なことなどを聞いた。


Q:ジョコビッチやアルカラスは大所帯の「チーム」で動いていて、その様子は家族のような親密さを感じます。相談ができるからこそトレーニングで追い込むこともできる。佐藤トレーナーのお話を聞いていると日本人選手もそのようになっていくべきだとお考えでしょうか。

佐藤トレーナー:ジョコビッチ選手や大坂なおみ選手の様に、経済的な背景は当然あると思いますが、彼らは強くなるために必要なものにしっかりと投資しています。各分野のエキスパートを招集し、チームとして活動するといった条件も含めた契約をしているはずです。しかし、ランキング下位の選手では予算上の問題もありますので、そのようにはなっていません。まずはコーチ、次にケア・トレーナーそして最後にストレングス&コンディショニングコーチといった優先順位になっているのが現状です。何にいつ投資しなければならないのかについての意識改革と判断が重要になってくると思います。

Q:トレーナーを目指している方へ佐藤トレーナーからお言葉もいただきたかったのですが、競争の厳しい世界の印象があります。

佐藤トレーナー:最近ですが、日本人選手のチームとして注目しているのは、佐藤文平氏がマネジメントとして関わっているチーム島袋将選手のケースです。コロナ禍で思うような活動が出来なかった時期を逆手に取り、適材適所に能力の高い人材を揃えて準備をしたことで結果も出てきたようです。今後のチーム島袋の活動に注目したいと思っています。そういったことも含めて、トレーナー同士の情報交換や勉強会などはとても重要だと思っています。世界を転戦して得たトレーナーの知識や経験を若手のトレーナーと共有し学び合う場は、次代を担うトレーナーを育成するためにも必要な事だと考えています。

こんな話を聞いた事があります。スウェーデンでは「自分が得た知識はみんなのもので共有する」という哲学があります。私もこれまでの自分の活動を振り返りながら若手の育成や後進に伝えていくことの重要性を再認識しているところです。

Q:佐藤トレーナーのお話をお伺いしていると皆さんへの許容度の大きさと可能性を広げていただけるような感じがします。

佐藤トレーナー:1回の指導で多い時には15~20人の子供達に対して指導する事がありますが、出来るだけ「1対1」の関係でありたいというのが根本にあります。「いつも私はあなたを見てるよ!サポートしているよ!」という事を伝えながら指導しています。また、子供たちには、何ができなかったかを良く覚えておいてと伝えます。そして、出来たこと確認したら、時間を置かずに直ぐに褒めるようにしています。また、出来なかった事が悪いのではなく、出来なかったことを見つけることが成功の秘訣なのだと話しています。

実際にトレーニング指導する際、デモンストレーションをしながらの説明はとても有効です。受け手における学習の情報の多くは「視覚:眼」に依存している事が分かっています。そういった理由もあり、年齢を重ねてもしっかりとデモンストレーションをやるための訓練を継続しています。選手には、カッコよく動く「真似してみよう」と勧め、最初は模倣することから入り、そこから次のステップへと繋げていくよう心がけています。

プロ選手との指導関係については長い期間だと7年から10年になります。私と実施したトレーニングの効果を実感し、続けることでの更なる自分の可能性を佐藤からもっと引き出せないか、というところだったのではと思います。これができたら次はこれ、というように「トレーニングには終わりがない」んですね。1から10(の段階に)にいきなり飛ぶことはなく、きっちり段階を踏んでいます。



修造チャレンジでトレーニングを担当する佐藤雅弘トレーナー


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写真=本人提供