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2020.10.21

メーカーズボイス

【錦織圭、ガストン、セリーナ…】ウイルソン・オフィシャル・ストリンガー 細谷氏が見た全仏テニス2020

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日本人唯一の
ウイルソン・オフィシャル・ストリンガーとして
コロナ禍の「全仏オープン」に参加した細谷氏

先日、幕を閉じた全仏オープン2020。ウイルソンにとって、今大会は特別なものだった。というのも公式ボールサプライヤー、公式ストリングサプライヤーとなったからだ(これでお膝元・USオープンに続いてグランドスラム2大会目となる)。新型コロナウイルスの問題もあり、開催時期が秋に移行となったものの、大会は無事終了。シングルスは男子がラファエル・ナダル(スペイン)、イガ・シフィオンテク(ポーランド)の優勝で幕を閉じた。


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その大会の裏、ウイルソン・ストリンギング・チームの一員として、張り続けていたのが日本人で唯一のウイルソン・オフィシャル・ストリンガーである細谷 理氏(神奈川・茅ヶ崎「On Court(Racquet)」オーナー)。コロナ禍の開催は、率直にどんなものだったのか。


細谷「パリに行ったことはあるのですが、全仏オープンに来たのは初めてでした。だから見るものも新鮮でしたが、何より印象的だったのは雨ですね(笑) 結局、大会期間中、毎日降ってしまいました…。

秋ということもあるし、毎日どんより曇っているから、気温も低い。ご覧になっていてわかるかもしれませんが、選手たちは、寒さ対策に苦労していましたね。


その寒さのせいもあってなのか、テンションは全体的に低めになっていました。1ポンドないし2ポンドは下げている選手が多かったです。日本でもニュースになったようですが、普段テンションを変えないタイプのナダルも、25.0kgから0.5kg(≒1.1ポンド)下げていたくらいですからね。

その件で、ウイルソンのボールが…というのもニュースになりましたが、アレに関してはボールへの慣れがあると思いますよ。寒いから余計重く感じるという不運もありました。皆さん、ご存知の選手は、逆にボールがよく飛ぶと言っていましたし。こればかりは、選手の感じ方なので、難しいところです」






大会を彩ったガストンは
ポリ・ストリングで
ドロップショットを放っていた

今回の全仏は、国内の新型コロナウイルス感染状況により、当初予定していた観客数5,000人が1,000人での開催となった。第2波が到来している中、どんな配慮がなされていたのか。

細谷「もちろん、PCR検査は行っています。最初に受けて、期間中にも受けていました。幸い陽性となることはありませんでした。

ストリンギングに関しては、システムはUSオープンなどと変わりはないですね。ただ、ウイルス対策として受付にはパーテーションが設けられていて、受け渡しはケースに入れて行なっています。すでにビニール袋は撤廃されていますが、選手に戻す際は、対策の一環としてグリップに袋をかぶせて選手に渡していました。


ローラン・ギャロスならではと感じたのは、長い試合が多いので、先を見越してオンコート・ストリンギング(試合中にストリンギングを依頼すること)を依頼する選手が多かったことです。

(ヒューゴ・)ガストン(フランス)なんかは、2セット終了時に3本出してきたり。フルセットのための準備をしていたんでしょうね。ちなみに彼が使用していたのは、ルキシロンの『オリジナル1.30mm』でした。テンションは46、47ポンドあたり。ドロップショットで話題になりましたが、あれだけのタッチをポリ・ストリングで出すのですから、すごいですよね(笑)」





正に、ガストンのドロップショットは、今大会のトピックの一つ。それが、ルキシロンのポリの中でも硬めである「オリジナル」を張っていたとは驚きだ。さて、全体的にテンションが緩めだったという今大会、その他、何か特徴はあったのか?

細谷「依然として、ルキシロン『アルパワー』の使用者が本当に多いですね。最も多いのはノーマルの『アルパワー』。多くは言えませんが、『アルパワー』は合わせやすいので、他社のラケットでも張っている選手は多いです。

次いで『4G』に関しては使用者が増えましたね。『エレメント』の使用者は錦織選手くらいでした。柔らかいので、プロにとっては制御しにくいのかもしれませんね。ゲージに関しては、圧倒的に1.25mmです。細くても1.20mmで、ナダル(1.35mm)のような1.30mmオーバーは、ほぼいませんでした。


また、ポリに関しては2本張りの選手が多いです。2本張りの場合、打球感が柔らかくなるというメリットがあります。一般プレーヤーなら、テンションロスが低い1本張りが主流ですが、プロの場合は、テンションが落ち始めたあたりで新しいラケットに変えられるので」




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Photo by Takeo Tanuma