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2020.11.15

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NY便り「新型コロナで活動ができない!? アメリカの大学テニスが抱えるハードル」

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トッププロを生み出すだけでない
大学テニスの人材育成

アメリカの1200校や3000人のコーチ、約1万9500人の学生らが加盟するインターカレッジテニス協会(以下ITA)は、新型コロナウイルスの影響で、安全にプレーする機会を提供することが困難になりつつあると発表した。

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ITAは、アメリカの大学のテニスにサービスを提供し、この業界における将来のリーダーを育てることを目的とした団体だ。
大学テニス部に所属する目的は人それぞれ持っており、アメリカの高校生の野心的な目標(高額な授業料の免除や奨学金など)やトッププロを目指す上でキャリアを積むことにある。

そのため、個人とチーム同士の競争というユニークな組み合わせとして、大学テニスは成功していく個人を育成する場にもなっている。つまり、アメリカの大学テニスは、高等教育の上に成り立つものとして、個人だけでなくチームの一員として貢献できる人材育成のための教育の機会を提供しているのだ。

そういった中でITAは大学テニスにサービスを提供しつつ、高いGPA(各科目の成績から特定の方式によって算出された学生の成績評価値のこと)や卒業率、選手のサポートもしているという。

新型コロナによる財政難の中
ITAはプレー機会を提供

だが、新型コロナウイルスが流行した3月以降、アメリカの大学スポーツの財政は苦しいものに。
ITAの発表によると、多くの学校では運動部の財政モデルが平均予算に対して20%の減額。約60の大学でテニスプログラムがカットされたという。

追い打ちをかけるように、OBや地元資産家による大学への寄付金も減少傾向で、今後も大学スポーツで収入を得やすいサッカーやバスケットボールの試合が開催されない場合、テニスを含めた非収入のスポーツを削減する可能性も出てきている。

そのため大学の大きな収入源のスポーツであるアメリカンフットボールの役割は、財政面で最優先事項となっている。しかし、いまだ新型コロナウイルスの影響は大きく、学生同士によるパーティーでのクラスター発生もあるため、大学のキャンパスをオープンさせることは難しく、オンライン授業に戻ることを選択せざるを得なかった。

状況は良くないものの、一方で、アメリカの大学テニスは、このパンデミックで他の競技にはない革新的なリーダーであり続ける可能性も秘めている。
大学テニス部に所属する選手に安全なプレーの機会を提供するため、ITAがUTR(Universal Tennis Ratingグローバルテニスプレーヤーのレーティングシステム)を取り入れた秋のサーキットを10週間にわたり開催したのが、その一例だ。28大会には、約3000人のプレーヤーが参加した。

これまでアメリカの大学テニス部からトッププロまで上り詰めた選手は数えきれない。現役選手ではATP選手協議会の会長を務めるケビン・アンダーソン(南アフリカ/イリノイ大学)やジョン・イズナー(アメリカ/ジョージア大学)、今年のUSオープンでベスト4入りしたジェニファー・ブレイディ(アメリカ/カリフォルニア大学ロサンゼルス校)らはその筆頭だ。
しかし、プロになるだけが目的ではない。アメリカ大学テニス部は、その大学の地域のテニス普及にも一役買っていることも見逃してはいけない。

今後も大学テニスがテニス界に貢献し、継続して行えるよう願うばかりだ。

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文=知花泰三(全米プロテニス協会公認指導員資格保持者)

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