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2021.03.13

メーカーズボイス

「ファントム・グラファイト97(プリンス)」(prince“PHANTOM GRAPHITE 97”)誕生! プリンスの本気を編集部がラケット試打インプレ!!

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どの世代のプレーヤーにとっても
心をくすぐる「ファントム・グラファイト」

メーカーにとって、重要なのは消費者に常に新しい刺激を与えること。
だから、次々と新製品を送り出し、消費者が欲する刺激を供給する。刺激とは何なのか? それは、消費者にとって未知のものであるとは限らない。クラシックなモデルであっても、時代が変われば、目新しいものになりうる。
例えば、バスケットボール・シューズ(バッシュ)。エア ジョーダンの復刻モデル、フュージョン(歴代モデルを組み合わせたもの)などのアレンジ・モデル、はたまた故コービー・ブライアント(元レイカーズ)やレブロン・ジェームス(レイカーズ)の復刻モデルなどは、出されるたびに売り切れ必至。古いものが刺激的ではないというわけではない。むしろ、完成度の高いものは、時を経ても刺激的でありつづけると言ってもいい。

テニス界にも、伝説的名器はいくつもある。今もシリーズとして出続けているものも多いが、中には “こんなのは○○○とは呼べない”などと辛口批評を受けたりするものもあったりする。時代に合わせて、進化はすべきだが、名器が持つ世界観を損ねてはならないのだから、サジ加減は難しい。




【関連記事】プリンス50周年に合わせて復活!! 名器prince「グラファイト」


プリンス「ファントム・グラファイト」は
名器を見事なサジ加減で
現代的にアップデートさせたラケット

昨年、久しぶりに最新シリーズが出て、大人気となったモデルがある。それこそプリンス誕生50周年に合わせて復刻となった「ファントム・グラファイト」(prince「Phantom Graphite」)である。錦織圭のコーチを務めるマイケル・チャンやアンドレ・アガシ、モニカ・セレス、ガブリエラ・サバチーニらが使用していたプリンス「グラファイト」の名前を知らない若い人も少なくないかもしれない。しかし、同シリーズは、テニスラケットにおいて3本の指に入ると言うべき名器であり、ブラックにグリーンのラインが入ったコスメは、多くの人にとって“憧れ”のラケットであった。

「ファントム・グラファイト」は、名器を見事なサジ加減で現代的にアップデートさせたモデルである。同モデルは、その名のとおり、上級者向け競技モデル「ファントム」と合体させたもの。プリンスは、名器と最新機種を合わせることで、新たなシリーズを作り上げたわけだ。100平方インチ、107平方インチと2機種をリリースすると、たちまち在庫切れに。近年のラケットでは、珍しい大量の追加オーダーが入ることとなった。

そして今回、97平方インチモデルがリリースされた。キャッチフレーズは“#激打ちグラファイト(激しく打つから“激(ハゲ)打ち”)。まず、コスメが100平方インチ、107平方インチとは異なっている。今回は、オリジナルと同じ光沢あるグロス仕様になっているほか、グリーンのラインは、控えめなグレーのものに。そして、スロートの側面に入った“princeロゴ”、” GRAPHITE”の文字は、ゴールドで刻まれている。





97平方インチモデルは、昨年のモデルより、フェイスサイズを小さくしてコントロール性をアップさせた“より上級者向け”のモデルを想定して作られたことをプリンスは明かしている。“ファントム・グラファイト”でさえ、上級者向けなのに、さらに上!? と不安になるが、それは取り越し苦労だと言いたい。確かに上級者モデルとなるが、今モデルには打ちやすくするための工夫が凝らされている。


パワー、コントロールを生み出す
“奇跡の素材”と“ATS”

まずは「ファントム・グラファイト」のテクノロジーをおさらいしていきたい。最大の特徴は2つある。
一つが、「TeXtreme×Twaron(テキストリーム×トワロン)」を採用していることだ。同素材は、強靭なカーボン繊維構造「テキストリーム」に、アラミド系繊維の一つ「トワロン」を組み合わせたカーボンで、通常のテキストリーム以上の剛性を持ち、ホールド感を持った上で、スピードアップも実現する画期的素材である(テニス界ではプリンス以外は使用できない)。その素材は、まずシャフト部に使用していて、フレックスを硬くすることなく、フェイスのねじれを抑制してパワー、コントロールを高めている。副産物としてあるのが衝撃吸収性の高さである。同素材は吸震性が極めて高いため、不快な振動が抑えられるのだ。





そして、この最強素材を生かすためのテクノロジーこそが「ATS(アンチトルクシステム)」テクノロジーである。シャフト部に加え、フェイス部の10時・2時部分に「テキストリーム×トワロン」素材を使用する同テクノロジーは、ラケット上部の剛性を強化し、ボールの飛び、コントロールをアップさせる。また素材と同様振動吸収性においても、大きな助けとなっている。





往年のグラファイトの特徴の一つは、そのクリアな打球感、そして心地よいホールド感である。だからこそ、これぞボックス形状という角張ったフレームを貫き、現代テニスで通じるラケットにするために「テキストリーム×トワロン」、「ATS」を採用したわけだ。


コンスタントテーパーシステムの
1㎜UPで大きな違いを生む

そして、97平方インチのフェイスサイズでも、しっかりとした飛びを実現するための秘密が、フレーム厚にある。「CTS(コンスタントテーパーシステム)」は、グリップ上部からフレームトップ部にかけて、均等に厚みを増していくフレーム形状のこと。フェイスのトップ部分でのパワーが増し、スイートエリアがトップ方向に広がるというメリットがある。今回の注目はその厚みにある。97平方インチモデルでは、100&107平方インチモデルより1mmずつ厚くしている。トップ部分は22.5mm(100&107平方インチモデル:21.5mm)、グリップ上部が18.5mm(同17.5mm)。わずか1mmだが、その効果は実は大きいのだ。ここは体感してみないとわからない部分かもしれない。





そして、今回もシャフト部には今となっては唯一無二“、これぞグラファイト”という「クロスバー(フレームのスロート部を繋ぐブリッジ)」が設けられている。若い人にとっては、驚きの構造かもしれない。本来、ショット時のラケットのねじれを防ぐために開発されたもの。同シリーズでは、シャフト部に配された最強素材「テキストリーム×トワロン」と共にパワーUP、コントロール性UPを演出する。





ハイブリッドな”元グリ”が
心地よい感覚を与える

もう一つ、ご紹介したいのがリプレイスメント・グリップである。同ラケットのユーザーは、上級者が多いこともあってか、リプレイスメント・グリップ(いわゆる“元グリ”)を革のものに巻き替える人が多いという。そのニーズに応えるために、97平方インチモデルに採用されたのが「レジテックスツアー(RESI TEX TOUR)」である。なんと本革の上に、PUコーティングを施したハイブリッドタイプのグリップテープ。上級者好みのシャープな打球感を感じられるうえ、滑りにくいという特徴がある。





スペックはフェイスサイズ:97平方インチ、平均ウエイト:315g、バランスポイント:305mm、フレーム厚:22.5-21.5-18.5mm、全長:27インチ、ストリングパターン:16×19、スイングウエイト:290、パワーレベル:770、展開グリップサイズ:2、3。¥40,700(税込)でクラシックな専用フルケースも付属している。

温故知新なんて言葉があるが、クラシックなグラファイトと現代テクノロジーが、うまく具合に融合した傑作と呼ぶべきラケットである。









#激打ちグラファイト
プリンス「ファントムグラファイト」編集部試打インプレ

「名器」が見せる新たな顔は、いったいどんな打ち味なのか?
テニスクラシック編集部(広)(川)が打った感想を率直にお届けしよう!




編集部(川)
いわゆる“しばいていける”ラケット
とにかく見た目が非常に良い

余計なアシストというのも最小限に抑えつつ、現代のスピードボールで押してくるテニスに対応できるパワーやコントロール性能があるというのが「ファントムグラファイト100平方インチ」の感想。こちらはマット加工だったが、今回の97平方インチは、グロス加工で黒光り。まず、その見た目にやられる。かっこいい。ブラックのグロスで金文字。見た目だけで欲しくなる。

打ってみて、まず感じるのは打球感が少し硬めで、競技者が好きであろうものになっているということ。そこは好みだが、そこまで硬いわけではなく、ほどよくラケットをしっかり感じられる。そしてボックスフレームならではの食いつきの良さもある。そして、パワーだが、自分でしっかり振っても、コートに入る適度なパワーが印象的。いわゆる“しばいていける”ラケットである。

多少スイートエリアをはずしても、面安定性がいいので、弾き返しやすい。また、重さがあるし、力を伝えやすいのでサーブではスピードを出せる。抜ける感じも基本的にはない。スピンもかけようと思えばかかるし、315gという数字以上に振りやすい。

よくできているラケット。そして、最初に書いたが、とにかく見た目が非常にいい。買いたくなるラケットである。







編集部(広)
97平方インチという感覚はなし
コスメも含めて極めて完成度が高い

軸回転をする現代スイング派の人にいい。薄いのに面が安定していて、ボールが潰せて質のいいボールが飛ぶ。これまでのラケットには、あまりない打ち味というのが、100平方インチの印象。一口に言えば、上級者向き。それより3平方インチ小さくなるため、構えたが、打ってみたらまったく印象が違った。100平方インチよりも、敷居は低いかもしれない。

まず打っていて、97平方インチという面の小ささは感じない。テキストリーム×トワロンとATSを採用したラケットに共通しているものだが、かなり先端部まで気持ちよく飛ばしてくれるし、スピンもかかる。スイートエリアが通常より縦に長いというのは、このラケットは特徴的だと思う。

往年のグラファイトファンも多いということで、今回は、フォハンドをフルウエスタンと、薄いイースタンでも打ってみた。双方で打ってみてわかるのは、ボールが持ち上がりやすいということ。イースタンの場合、ラケットによってはネットしやすくなるが、今回のモデルはフラット系のボールでもしっかり高さが出せた。一方、フルウエスタンだが、これが快感だった。厚くボールを捕らえて、しっかりスピンがかかる。高い軌道で飛んでいって、ベースライン付近でヒュンと落ちる。こんな良いボールが打てる経験は、ほとんどない。

真のボックス形状でブリッジがあり、そこにテキストリーム×トワロンが使われているからか、打球感は品があると表現したくなるしっかり感かつホールド感も感じられる心地よさ。16×19のストリングパターンだが、18×20のようなしっかり感は特筆すべきと思う。また衝撃吸収性も高く、振動止めが不要かもしれない。

サーブに関しては、やはり315gとそこそこあるので、スイング速度を高めるのは、体力、慣れが必要だと思う。だからスピン系よりも、フラット系のほうが重さを生かして打ちやすかった。
単にパワーを求める人には合わないかもしれないが、コスメまで含めて、これだけ完成度が高いラケットはなかなかない。少なくとも、ミドルエージ・プレーヤーは惚れてしまうラケットだとお伝えいしたい。




取材協力 グローブライド株式会社 https://princetennis.jp/product/7tj140

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