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2020.06.05

メーカーズボイス

Prince PHANTOM GRAPHITE プリンス50周年に合わせて復活!! 名器prince「グラファイト」

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PHANTOM GRAPHITE

プリンス50周年に
合わせて復活!!
名器prince「グラファイト」




元は個人的に作った
スペシャルモデルだった

「グラファイト」は
瞬く間にプレーヤーを虜にした




 <今、コート上で最もホットなアイテムは、『オーバーサイズラケット』である>

1982年7月2日、あるアメリカの新聞記事にそんな一文が掲載されている。プロの世界の話である。80年代前後に誕生したラージサイズ・モデルは、まず一般プレーヤーから火が点き、すぐにその波がプロにまで達した。通常のラケットの流行は、プロが先に最新モデルを使用して、一般プレーヤーに浸透するというもの。ところが、興味深いことにオーバーサイズ・モデルの場合、それが逆だったのだ。

なぜ逆転現象が起きたのか? その経緯が興味深い。
元は自分が使いたいがために作ったモデルだったからだ。



最薄部19㎜!! にしてパワフル
コントロール性も確かな夢のラケット
 

その人物とはハワード・ヘッド氏。1976年にプリンス社を買収し、会長職に就いたヘッド氏は、自身がテニスをもっと楽しむため、規約上問題のない(現在は大きさの制限がある)110平方インチというオーバーサイズ・モデルを独自に製作した。当時、ラケットといえば、70平方インチが当たり前という時代だったのだから、約1.6倍というフェイス面積のラケットは、かなり大きなものに感じただろう。単純にフェイス面が大きい分、ボールは捕らえやすくなり、反発性能も拡大。その分、スイートエリアも大きくなる。ただヘッド氏は、もっと綿密に考え抜いて作っていた。反発が大きくなる分、コントロール性が落ちるデメリットを、スイートエリア部分の網目を細かくすることによってコントロール性をアップさせて補っていたのだ。

その原型モデルをさらにアップデートして生まれたのが、1978年に誕生したプリンス「グラファイト」である。110平方インチ*という面、最薄部19mmというフレーム厚、ねじれを抑制し、パワー、コントロール性をアップさせるクロスバー(スロート部に横渡しされたブリッジ)、そしてグロス感あるブラックの下地に刻まれたグリーンのライン。そのラケットは、すぐに一般プレーヤーに受け入れられて人気モデルとなり、裾野からトップへ――ツアープロも使用するラケットとなったのだ。数多くの有名プロ選手が使用していたことをご存知の人も多いだろう。ちなみに日本でその人気に火が点いたのは、冒頭の新聞記事が出たころだ。



人々の支持を受けたことで、プリンス「グラファイト」は、名器として知られるラケットになり、1985年、1987年、1988年、1992年、1996年、2002年、2014年にそれぞれアップデート作を発表。数多くのトッププロに愛されるラケットとして、その伝説を刻み続けてきた。最後のモデルが発売となってから、すでに6年。そのシリーズの復活を待ちわびていた人も少なくないだろう。


プリンス設立50周年という
メモリアルイヤーに復活した
名器「ファントム・グラファイト」



その誕生から42年が経過。2020年、プリンス設立50周年というメモリアルイヤーに、名器が復活することとなった。



その名は「ファントム・グラファイト<PHANTOM GRAPHITE>」。
その名前からピンと来た人もいるはず。TeXtreme×Twaron、ATSを搭載したプレーヤー向け上級競技モデル「ファントム」のテクノロジーを合体させたものなのだ。もし、先進的な考えを持っていたハワード・ヘッド氏が存命であったら、名器を進化させる取り組みを歓迎することだろう。

オリジナルとは異なるマットなブラックフレームは、もちろんボックスフレームである。ボックス(四角)構造の利点は、フレームのねじれを大幅に軽減し、優れた面安定性、高いコントロール性を生み出すこと。そのフレームにあしらわれたのは、グラファイトを象徴するグリーンのラインが刻まれている。

 

さて復活した名器の最大の特徴は「TeXtreme×Twaron」を採用したことだろう。同素材は、強靭なカーボン繊維構造「テキストリーム」に、アラミド系繊維の一つ「トワロン」を組み合わせたもので、通常のテキストリーム以上の剛性を持ち、ホールド感を持った上で、スピードアップも実現するものだ。その素材はまずシャフト部に使用していて、フレックスを硬くすることなく、フェイスのねじれを抑制してパワー、コントロールを高めている。また衝撃吸収性も極めて高いため、不快な振動が抑えられることも見逃せない。


この最強素材と共に、知っておきたいのが「ATS(アンチトルクシステム)」テクノロジーである。
シャフトに加え、フェイス部の10時・2時部分に同素材を使用する同テクノロジーは、ラケット上部の剛性を強化し、ボールの飛び、コントロールをアップさせる。同じく振動吸収性においても、大きな助けとなるテクノロジー。往年のグラファイトの特徴の一つは、そのクリアな打球感である。今回、「TeXtreme×Twaron」、「ATS」を採用することで、現代にそれを復活させているのだ。



名器を復活させたテクノロジーは、まだまだある。グラファイトといえば、そのフレーム厚の薄さもポイント。「CTS(コンスタントテーパーシステム)」は、グリップ上部からフレームトップ部にかけて、均等に厚みを増していくフレーム形状のことで、反発性能がアップするだけでなく、スイートエリアがトップ方向に広がるというメリットも生み出している。フレックスポイントから打球点(インパクト点)までの距離が長くなることで、フレームのしなり戻しを生かし、パワーアップするというのも見逃せないポイントだ。とはいえ最薄部17.5mmなのに、とてもパワフルというところは、体験してみないと納得できないものかもしれない。
また、シャフト部には“これぞグラファイト”という「クロスバー(フレームのスロート部を繋ぐブリッジ)」が。これを初めて見た!という人もいるかもしれない。同テクノロジーは、捩れに対する強さを発揮するため、「TeXtreme×Twaron」と共にパワーUP、コントロール性UPを演出している。

 

フェイスサイズは107平方インチと100平方インチの2種類。その伝説を知っている人にとっては、前者の方がしっくりくるかもしれない。だが、100平方インチもその打ち味が気になるはず。個人的な想いを書かせてもらうと、私のようなオーバー40にとって、プリンス「グラファイト」は<憧れ>である。元は、テニスをもっと簡単に楽しむために、という目的で作られたモデルだったが、上級者まで使うことになり、逆に“下手くそ”は使いにくい…なんてことにもなっていた(当時、使いたくても自分の技量では…と思っていた人も少なくないはず)。

大きいことはいいことだ――「プリンス50周年」、その記念すべき年に復活する名器。その打ち味はいかなるものか、編集部の試打コンビが、一足先に味わわせてもらった。

*=当時、プリンスは110平方インチのオーバーサイズとして特許を取得した。ただ、現代の精密表示に直すと107平方インチになるのだという



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