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2022.11.26

ジュニア選手

世界基準のジュニアを! “UTR”でテニスの人材育成に取り組む「神谷航コーチインタビュー」

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沖縄でUTRを活かしてジュニア育成を試みる神谷コーチ

テニス界、特にジュニア選手育成において今は「UTR(ユニバーサル・テニス・レーティング)」が基準となってきている。

【動画】UTRのシステム紹介している動画(日本語訳付き)がこちら

UTRとは、2008年にスタートした性別や年齢、国籍関係なく、トッププロからジュニア、一般プレーヤーまで取得できる統一のランキングシステム。1から16.5の数字の中でレーティング(評価)がつき、トッププロからジュニア、一般プレーヤーまで男女統一されたシステムとなっており、登録者数は全世界180万人以上。200ヵ国以上で使われ、ATPやWTA、ITF、テニスヨーロッパなども導入しており、有名選手にもレーティングがあるわけだ。

具体的にどう数字を決めるかというと、過去12ヵ月でこなした30試合のスコア、相手の強さ(レーティングの高さ)などから算出される。単に勝てばいいというわけではなく、スコアも影響してくるというのがおもしろいところだ。

今回、UTRを活かしてジュニア育成に取り組んでいる日米のコーチを取材した。まずは、沖縄県在住の神谷航氏(https://rise-tc-okinawa.studio.site/#coach)の話を紹介したい。現在、日本でUTRトーナメントを開催している神谷氏は、その長所、課題・問題点をどう考えているのか?


Q.UTRトーナメントを開催することになったきっかけはなんですか?

「まず知ったのは2018年に遡ります。ATPマスターズ1000上海大会を現地で見た際に、旧知のオーストラリア人コーチと意見を交換したのですが、会話の中でUTRについて教えてもらいました。当時は“そんなシステムがあるんだ”くらいに思っていましたが、新型コロナウイルスによる自粛期間中にそのシステムを思い出し、日本でもこれを開催したいと思い立ってUTRの事務局にコンタクトを取ったというのがきっかけですね」

Q.すでに欧米ではUTRのレーティングが、実力の基準値になっています。日本を含めてアジアの認識はいかがですか?

「香港(中国)ではUTRの試合も多いですし、台湾の知り合いからも増えつつあると聞いています。個人的な意見ですが、沖縄から近い国々で開催されていることは刺激になっています。日本でも開催していけると思って活動しているところです」

Q.日本でUTRトーナメントを開くメリットを改めて教えていただけますか?

「日本でジュニアのトーナメントとなると10歳以下や12歳以下の試合が少なく、また、参加人数も少ないのが現状です。そのため、毎大会対戦する相手が一緒になってマンネリ化し、子供たちのモチベーションも低下してしまうケースがあります。日本のテニス界の将来を担う人材育成には勝敗だけではない国際的なレーティングの価値基準があった方が、より目標が立てやすく未来を見据えた取り組みに移行しやすいと考えています。またUTRは試合の内容も反映されていくので同じ相手と対戦した場合でも少しでもゲームを取りレーティングを上げるようにしたいという意欲にもつながりやすいと思います」

Q.逆に改善すべきと感じているところはありますか?

「デメリットがあるとすれば、日本では現在のところ認知度が低く開催数そのものが少ないという点です。もしかすると英語での入会方法や年間のUTR事務局に支払う会費等との問題はあると思いますが、それを越える
選手育成の魅力は充分あると感じています。手続きなどでお悩みのコーチやテニスコートを運営している事業者の方からのご相談も受け付けているので連絡してほしいですね(神谷氏は申込み手続きのサンプルも用意しているとのことで)」

Q.今後の日本でのUTRトーナメントの予定をお聞かせください。

「一つ大きな動きとしては、スペインにある名門クラブ“エミリオサンチェス・テニスアカデミー”がスポンサーとなり日本国内のUTRトーナメントグランプリ優勝者にはアカデミーのトレーニングの招待とUTR対象のテニスヨーロッパのカテゴリー1の本戦ワイルドカードが来年開催されるトーナメントに招待されます。対象は11歳以下、13歳以下の男女となります。日本から世界を目指すジュニアにとってのチャンスを増やしていくきっかけにできればと思います」

Q.神谷さんの今後について目標などあれば教えてください。

「沖縄はアジアの玄関口としてよい立地にあります。地の利を活かしてアジア圏の選手も沖縄でのUTRトーナメントに気軽に参加出来るような環境を作ること。テニスでの国際交流の場を増やし、海外選手と対戦しても臆することなくATF、ITFにチャレンジできる環境をUTRトーナメントを活かして作っていきたいと考えています。一緒にUTRトーナメントを開催したい方はぜひご連絡をお待ちしています」

                                                    ◆◆◆

神谷氏とは、2004年に筆者がアメリカテニス協会資格を習得しようとビリー・ジーンキング・ナショナルテニスセンター(USオープン会場)に行った際に出会った。当時、神谷氏はUSTA(アメリカ協会)のサマーキャンプのコーチとして働いていました。UTRトーナメントを日本に根付かせようと働きかけているのは、海外留学経験を持つ神谷氏の行動力とテニスに対する情熱があってこそと言える。日本に居ながら世界基準を知ること、それはジュニアの底上げにつながるはずである。

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写真=テニスクラシック