松岡修造、西岡良仁の活躍は「日本のテニス界にとって貴重な財産」
全米オープンでは残念ながら日本男子はグランドスラムシングルス本戦で勝利を挙げることはできなかった。だが、今年の全豪、全仏オープンでは西岡良仁(ミキハウス/世界ランク46位)が16強入りし、綿貫陽介(フリー/同78位)やダニエル太郎(エイブル/同93位)、島袋将(有沢製作所/同146位)などもグランドスラム本戦に足を踏み入れた。20年以上にわたりジュニア育成とテニス界の発展のため、「修造チャレンジ」を継続し、日本テニス協会強化育成副本部長も務める松岡修造氏は、今の日本男子、そして世界トップのプレーについてどのように感じているのだろうか。【画像】グランドスラム2023で熱戦を繰り広げた日本男子選手たちの厳選写真!――今年最後のグランドスラムとなりましたが、今年の日本男子の印象を教えていただけますでしょうか。西岡良仁選手がグランドスラムでベスト16に2回入り、全米は残念でしたが彼の活躍は日本人にとって、大きな希望になります。小さな身体でも工夫次第で活躍できるということを彼が証明してくれた。この前も合宿のミーティングにオンラインで出てくれたのですが、西岡選手らしい独特な言葉、表現でジュニアたちに思いを伝えてくれました。ただ単に一所懸命やっても勝てない、背が低い、という日本人ならではの苦悩がある中で、世界で通用するテニスをするため、例えばコートの中に(攻撃的に)入っていくことや相手の嫌がることを徹底していく。ツアーで生き抜いてきた選手の生の言葉は、今の日本のテニス界にとって貴重な財産だという気がします。――今大会は欠場で残念でしたが、錦織圭選手について、松岡さんがお話しされたことやかけた言葉などありましたら教えてください。錦織選手に関して言うと、怪我から戻ってきて出場したチャレンジャー大会でのテニスは、彼自身も言っていましたが、ちゃんとツアーで通用するテニスができるというのがわかったと思うんですよ。だからこれ以上怪我をしたくないというのが一番だと思います。リスクを犯して出たいけれど、今回我慢をした全米オープンだと思います。アジアの大会は今後出る可能性もありますし、一番は焦らないことだと思います。年齢のこともありますが、彼の持っている才能とテニスを考えると、ひとつのチャンスを狙って、グランドスラムでトップに入る、ATPのツアー大会で優勝する、というところまでは戻ってこられると思います。――現在の男子ツアーはカルロス・アルカラス(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)の2強時代ですが、今後日本男子がそこに追いつき、追い越していくために松岡さんがキーポイントに挙げるとすればどんなことがありますか?現実的なところで言うと、テニスが今新しい時代に入ってきています。私が思うのは、アルカラス、そしてベン・シェルトン(アメリカ)といった若手選手のプレーは、私が見たことがないテニスなんです。日本のテニスも真似ができる、参考になることはたくさんある。例えば、コートの中への入り方やアプローチショットの打ち方。より速い打点でより力が抜けたナチュラルな動きとテクニックに変化してきて、多分10年後にはみんなアルカラスのようなテニスが主流になっていると思うんですね。シェルトンに関しては、身長とパワーが必要になりますが、アルカラスのようなプレーは、一所懸命プレーする中にもっと遊び感覚の、見ていても楽しいプレーが加わってくる。そういう想像力に富んだテニスが増えていくと思います。そうなっていくと、生真面目さというのは日本人のひとつの良さでもありますが、西岡選手がやるようなバラエティに富んだテニスができていくと、トップ30、20には食い込んでくる。あとは(ジュニアの)坂本怜選手のように190cm以上の背があるにもかかわらず、柔らかいテニスで動ける選手は4〜5年後にトップを狙える位置にいる可能性はあります。――松岡さんもそう思われるのですね。ジュニアの現場に彼を観に来られるということは期待の表れのようにも思います。坂本選手にはもう1年、ジュニアの大会に出場できる期間があります。何が良いかというとパワーもそうですが、やはり柔らかいテニスができること。良い具合に力を抜きながら打てるショットは、錦織選手なども持っている感覚、フィーリングですね。背が高いと固いテニス、一所懸命なテニスになりがちなのですが、彼は自由なテニスができる。これからの新時代ということを踏まえると、バチっとハマっていく選手になると思います。――最後となりますが「壁」を乗り越えていくために必要なものには何がありますか。必要な物とはコレ!というものがおそらくないんでしょうけど、みんなが理解しているのは「タフになるしかない」ということです。全米オープンなどのグランドスラムで戦い、勝ち抜くというのは、そのテニスの内容というよりも、ここで生き残れる「タフさ」があるかどうか。そこが一番大事なんです。全米オープンにワイルドカードで出場し4回戦に進出したリンキー・ヒジカタ選手(日系オーストラリア人)、彼はタフですね。自分がここで戦っていけるという自信がプレーからも伝わってくる。しかし、“テニス”と考えたらもっともっと上の選手はいると思います。綿貫選手もその一人。ただ今ひとつタフさに欠ける。そう考えたら、年齢の低い時から海外の遠征にどんどん出て、タフさというものを体得していってほしい。このコロナ禍で海外遠征に出られなかったジュニアにとっては、海外に出てもう一度戦うという基盤を作っていくことが重要だと思います。
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