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2024.11.06

選手情報

プロ転向した坂本怜は「身体ができればおのずと結果はついてくる」岩本功ジュニアデビスカップ日本代表監督

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プロ転向の坂本怜の成長を見届けた岩本功氏「フィジカルを鍛えていけば成長していく」


今年の全豪オープンジュニアでシングルス優勝を果たした坂本怜(IMG)が、全米オープンジュニアでダブルス優勝。ジュニア最後としていた大会を最高の形で締めくくった。西岡良仁(ミキハウス)や綿貫陽介(SBCメディカルグループ)などをジュニア時代に指導し、現ジュニアデビスカップ日本代表監督を務める岩本功氏に、プロ転向を果たした坂本の可能性や日本男子ジュニアが世界で戦っていくために必要なことを聞いた。

【画像】グランドスラム2024で熱戦を繰り広げた日本男子選手たちの厳選写真!

――まず、今年1月の全豪オープンジュニアで優勝した坂本怜選手ですが、この1年で一気に成長したように見えました。成長したポイントはどこでしょうか?

「それはまず彼が背が伸びているところです。今回は計っていませんが全豪の時に194センチから195センチぐらいになり1センチ伸びていました。ということは、まだまだやることが多い。できれば今ぐらいで止まってくれると筋肉をつけていけば良いのですが、食べても食べても身長が伸びるので、成長と言っても良くなっている途中の段階です」

「技術的な違いは全豪の時から比べると、サーブからの展開が良くなりました。サーブから(リターンされたボールを)シバきに(強打)行けるようになりました。以前はサーブを打って一度ボールを落としてラリーに持ち込むという展開だったのが、今はいいパターンになっています。あれだけいいサーブがあるので、そこからネットに出ていくということが、もう少しミックスできればと良いと思っています」


――身体を厚くしたくても、成長しているから筋力トレーニングを控えていると。

「まだ(身長が)伸びてるので下半身もまだ細いし、もう少ししっかりしてくるとツアーで通用する。だから、あと4〜5年かなと。身体が出来上がりだすとおのずと結果がついてくる。今年の9月からプロになるので、その辺ができるようになれば良いですね。一番は『身体』です。今のところ怪我もなく順調に来ています。フィジカルを鍛えていけば成長していくと思います」

――今年はデビスカップのメンバーにも招集されました。本格的にプロの世界に足を踏み入れますね。

「これ(全米オープンジュニア)が終わるとフューチャーズ、チャレンジャー大会へ向かいます。本当はそこで乗っていって欲しいですね。サーブではもう少しワイドを使って欲しい。キックがいいので、そこからの展開を上手くやって行ってもらえればですね」

――楽しくやっているところと、感情的になってしまうところがあります。そのバランスはどのように考えていますか?

「バランスというよりエネルギーだと考えています。基本的にはエネルギーはあった方が良い。ストレスを発散することによって、次のプレーが良くなってくるということもある世界なので、もう少し違う形でのストレスの発散をしてほしいと思っています。エネルギーの出し方、発散の仕方ですね。テニスは上手くいくことばかりではありません。それをコントロールしていく。もう大人の大会、フューチャーズに出だしているので、その辺は彼の一つの課題でもあります。普段の生活(練習の中)でその行動(パターンが)が試合で出てくることはあります。エネルギーはどこかで発散した方がいい、それは(気持ちが)落ちていくよりです」




――監督を務める16歳以下のジュニアデビスカップで日本はアジア・オセアニアで勝ち続けていますね。高田充ナショナルコーチは、「コンスタントに決勝大会に出場できるということはすごいレベルをキープしている」と話していました。その辺についてはいかがでしょうか。

「15年連続(決勝大会出場)ですね。今回もアジア予選を優勝し、11月に世界大会がトルコであります。やはりそこへ向けての準備や合宿の流れができたというのは事実です。修造チャレンジも含めた14歳の合宿とナショナルの14歳以下、ワールドジュニアの櫻井(準人)監督も一緒にやりながら縦の流れがしっかりできたと思います」

「国内合宿を去年は30回ほどやりました。3泊4日、2泊3日を(基本的にはジュニアデ杯の選手を中心に)16歳以下だけではなく上も下(の年代)も一緒に。その中で“継続”というのがテーマで合宿を行ってきました。自分の考えでは、三日坊主でいいから、それを何十回でもやれば三日坊主ではなくなるということで、常に同じ選手ではないのですが全国から選手を呼びながらトレーニング、自分の中ではフィジカルを鍛えなければダメだと思っています」

「ジュニアデ杯やワールドジュニアの合宿をしながら、上の合宿をする時にはその下(の年代)のトップを何人か呼んで、上のレベルでやる時は、毎回ではないですがプロの練習の中に入れてもらうこともあります。例えばですが、錦織圭選手や綿貫陽介選手がNTC(ナショナルトレーニングセンター)で練習している時にヒッティングをお願いしてやってもらうこともあり、(協力してもらった選手を全員挙げることはできないが)NTCを利用して、その年代より上のレベルと練習できる流れができつつあります。少人数でやるようにしていて、例えば16歳以下のメンバー3人に14歳以下のメンバーが1人入るような形で工夫しながらやっていて、(坂本)怜が日本にいる時は学生を呼んでヒッティングをしたり、もしプロが居れば優先的に練習に入れてもらうという感じです」

「その流れで遠征に連れて行ったり、団体戦に関しては一緒に生活をしないと分からないところがあります。これまで見えなかったことが見えたり、プロの言動、時間の使い方の教育も含めてアドバイスができる機会でもあります


――坂本怜選手、本田尚也選手、この2人が良いライバルになって次世代の日本男子を引っ張って行ってほしいと思います。

「そうですね、その為にも先ずは坂本が(先に)行ってくれないとですね」

――(自分のプレーに)ダメだ!ダメだ!となって行くよりですね。

「もっと上手くプレーしたい!というのがエネルギーを(発散しながら)切り替えて行くことだというのが私の考えです。マイナスのエネルギーよりも弾むエネルギーですね、その『エネルギー』はないといけません」

――先ほどのお話で『教育』というワードが出てきましたが具体的にはどういうことでしょうか。

「今の時代、子供たちはスマホをずっと使用しています。時差の関係で日本にいる友人からのメッセージが、現地時間の夜中に連絡があることもあります。私は『睡眠』という成長の機会を最優先に考えると、この前のオランダ遠征や次回の遠征でもそうですが、若い選手からは夜7時30分以降はスマホを預かるようにしています。その間に洗濯をしたり、ストレッチをする時間に充てる。ゲームをしたり、スマホがあると睡眠不足になったりします。(オンラインで授業などできる可能性もあるスマホを)全否定する時代ではありませんが、睡眠の重要性を子供達に理解してもらうということも教育の一環。それ(スマホ)が無くてもできるよというところを体験させます。朝も(練習で)早いし、1日が長いので。テニスのために賭けているので、そこはやっぱり彼らも意識を高く持ってほしい」

「ただジュニアラストイヤーの(坂本)怜や(本田)尚也は預からない。なぜかと言うと、もう大人の世界に移行していくところだから。その前(の年代)は教育として(スマホを預かることを)している。あとは、自分でやっていって(ツアーで)生きていく中で、自分に返ってくるわけですから」

「基本はそこが1つ。そしてこれまでと変わっていないところが『挨拶』です。海外に行っても他の国のコーチとか選手に挨拶して喋ったりすること。私にはやってくるが、大事なのは各国の代表監督やヘッドコーチなどに(自分を)覚えてもらうことです。もし将来プロになれば(英語で挨拶をすることにより)いろいろな可能性も広がります。『挨拶』をすることは、コミュニケーション能力を高め、(英語で)話すということがそこから広がっていきます。選手自身が『もっと英語を話せるようになりたい』と感じたりすることで何かのきっかけになるかもしれません。よくあるのが海外に出て日本人だけで固まるとか携帯をずっといじっているとか。そういうことがないように努めています。日本人はシャイなので(英語で)他の国の人と喋ろうとしない傾向にあります。インドネシア遠征でもトレーニングで外国人の選手の練習相手を探してくるようにと課題を与えます。選手にはプロへの第一歩としての心構えとして伝えています」

「時間を守ることもそうです、守らないというわけではないのですが、寝坊などはあります。あとは『食事』。ツアーを回るということは食べることにより体力を維持する基盤を作って強化していかなければなりません。私が引率の遠征では基本的に目標として体重を増やして日本に帰ってくることを挙げていて、(トレーニングなどは厳しいですが)体重は落とさないよう管理しています。選手が個人で遠征をしているケースの中で体重や体力も落ちて帰ってくる傾向がよくあるので、そこを含めて選手には伝えるようにしています。もう一つは『自分に限界を作らない』ことです。よく『無理です』と自分で勝手に決めてしまう子がいます。それは自分のレベルの話であって、だからコーチやトレーナーがプッシュするためにいるので、(世界で戦うために)最終的に自分に限界を作らないということは大事です




全米オープンジュニア男子ダブルスを制した坂本怜(IMG/写真左)とマキシム・ムルバ(チェコ/写真右)と共に

――大会期間中、勝ち上がっていく時もトレーニングはするのでしょうか。

「様子を見ながらですが、普段の遠征の時も強度は下げながらも継続してトレーニングは続けています。でも『体力』は絶対必要なところです。フィジカルが強くないと勝てないし、トーナメントを勝ち進んでいけません。大人になった時に(グランドスラムで)2週間体力が持たないといけません。それ(厳しいトレーニング)は12、13歳ではしないですよ。16歳ぐらいから徐々に様子を見ながら始めています。合宿でも朝から走り込んだりしています。キツいかもしれませんが、それが当たり前になったらワンステップ上がった証拠になるわけです」

――皆さんに紹介できる範囲でメニューを教えてもらってもよろしいでしょうか。

「合宿の際には専門のトレーナーにサポートしてもらえるので、基本的には選手によって必要なものをやるため全員が同じということはありません。体幹も重要な要素なのでトレーナーと相談し、個人の能力と照らし合わせて進めていますが、具体的な例で挙げるとするならば、基本は「インターバル」などがあります。5周(テニスコート1面)のタイム走では、1分何秒で行くところを何セットかやったり、走れなかったらもう一回とか。NTCだったら、外を3周をします(大体4分以内ぐらい)。それだけでは足りないので体幹トレーニングをしますが、3、4日後にはキツいと思うぐらいの内容で、限界を作らせないように取り組んでいます」

「普段はやらないので、その時にやれるように。そしてストレッチですね。当たり前のようにやってほしい。プロになってからでは遅すぎます。今のうちに早く習慣にすることが大切です。自分に返ってきますし、自分の夢に向かってやっていることですから」


――世界はますますテニスがパワフルになってきている印象です。

「だから、フィジカルが…ということになります。テニスのスタイルはいろいろありますが、基本は体力がないと(世界で戦うには)無理ですね。今のうちからそういうことを意識させておいて、あとはそれをやるだけ」

――ボールを強く打てる要素にはどんなことがありますか。

「体幹も重要ですし、体の使い方、下半身が強くないと地面を蹴ることができません。だからこれだけというのはなく、それがあって動けなければいけません。当然、全部の要素がつながっていることが必要となります」


――(全米オープンジュニアダブルス優勝後)今大会の坂本選手の総評をお願い致します。

「ジュニアの試合はこれで最後となりました。ダブルスは優勝できて良かったと思います。残念なのはシングルスでしたが、相手(ラファエル・ホダル:全米オープンジュニア優勝後、スペインデ杯にチームに同行しアルカラスと練習)のプレーも良かったですし、こういう舞台を経験したので後は大人の世界(ツアー)で逞しく、フィジカルの強化も意識して今後も継続してほしい。今日の夜に出発(ニューヨークからラスベガスに移動)し明日は試合です。これが彼が今からやっていかなければいけない世界でなんです」



――貴重なお話をありがというございました。

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写真=田沼武男 Photo by Takeo Tanuma

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