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2024.10.18

選手情報

グランドスラムジュニア本戦初出場で白星を挙げた16歳沢代榎音と共に歩む樫村亮コーチ「本戦で1勝できたことは収穫」

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沢代榎音を指導する樫村亮コーチ「プロになりたい!という強い気持ちを継続できる」


3年間の努力が報われた瞬間でもあっただろう。16歳の沢代榎音(さわしろ・かのん/H.Y.S)が今年最後のグランドスラムとなった全米オープンジュニアで本戦に初出場し2回戦に進んだ。2021年11月からITFジュニア大会に出場し始めて、着々と力をつけていき、3度目のグランドスラムジュニア挑戦で初めて予選を突破。さらに初勝利もつかんだ。7歳の頃から沢代を指導するというH.Y.S代表の樫村亮コーチに、沢代の良さや今後の課題、初めてグランドスラムジュニア本戦に出た感想などを聞いた。

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――樫村コーチが沢代選手と世界を回ろうというところまでの経緯を教えてください。

「自分のアカデミー(H.Y.S)で2020年にも全豪オープン予選に出場できた浮田愛未(カンザス州立大)がいて、(沢代選手が)彼女を見て育っている。『自分も同じグランドスラムに出たい』『プロになりたい!』という気持ちが強くて、13歳になった頃から国内ITF大会に初めて回り初めてというところからスタートしました。東南アジアの方の試合が回りやすく、徐々にランキングを上げて予選に出場できたというところです」

――全米オープンで初めてグランドスラムジュニア本戦に出場し2回戦に進出しました。総評をお願い致します。

「今回は予選からの出場で、まずは本戦に上がることを目標にしていました。予選1回戦を勝ち、予選決勝の相手は去年のエディハー(アメリカ・フロリダで開催されるジュニア国際大会)で負けた相手。クレーコートが得意そうな選手だったので、ハードコートでチャンスがあるかなと思っていました。その試合に勝ち、初めてグランドスラム本戦入りしました」

――グランドスラムジュニアの予選で初めて勝利し、そのまま本戦に入った。何か沢代選手に変化があったのでしょうか。

「特に変わったことはしていないですね、いつも通りでした。本戦1回戦も走りまくって拾うテニスで、勝ったのですが2回戦が双子の姉妹の1人(アナ・ペニコバ)にパワーでやられてしまったことと、気持ちが1回戦ほどは入ってなかったのか、ハングリーさが無かったのかなという感じです」

――グランドスラム本戦に出場して収穫は何かありましたか。

「そもそも本戦に出たことがなかったので、出てみて1回勝てたことは自信になっていると思います。ここから次のグランドスラムを勝ち上がることを目標に、本戦で1勝できたことは収穫になっています」



――今後の課題なども見えてきましたか。

「身体が小さくパワーがないので、今のままではとにかく走りまくって、ボールを拾い、相手が嫌がるようなプレーをするしかないですね。強打されて押されることが多いので、同じように跳ね返すだけの力が必要だと思います。身体が細いので余計にトレーニングは必要になるでしょう」

「あとは“立ち振る舞い”も他の選手と全然違う。負けず嫌いなんですけど、少しでも相手にやられると不貞腐れたり、試合中泣くことも多いんですよ。泣いてからが強いんですけどね(笑) 7歳から彼女を見ているので性格も、挑戦したい気持ちも理解しています。これからの目標はグランドスラムジュニアでベスト8を目指してやっていこうと思っています。これと並行してプロツアーの1万5000ドルの大会などにも出場していこうとも考えています」

――女子もパワーが以前と比べて格段に上がり、エースを取ったり、リターンも攻め込み難くなっています。

「サーブは一番の課題で肩の回し方、ボールは投げられるのですが、ラケットを持つとうまくできなくなってしまう。本戦の試合でもリターンから攻められてからラリーが始まってしまいました。加えて、リターンから攻撃することも今後は必要になってくるでしょう。とにかくラリーの最初の部分ですね」

――この場を経験してこれまでにない一番の違いのようなものは何がありますか?

「周りの選手はグランドスラムでよく見る顔ぶれで、雰囲気も他の大会とは少し違います。それに対して、私たちは本戦に出るのが目標で、『予選にも出れるといいね』という感じでスタートしたので、まだグランドスラムは慣れてない舞台。ですが、テニスがまったく通用しないということではなかった。同じようなプレースタイルの選手がおらず、海外の選手の方がパワーがあるので1、2発でポイントを終わらせられる能力は高いと思います」

――沢代選手のアピールポイントなど良いところを教えてください。

「榎音の良いところは、とにかくプロになりたい!という気持ちが強く、それに向けてずっと取り組んできました。毎年行っているフロリダ遠征は4年生ぐらいの時から行き始めたりしました。その気持ちの強さを継続できることが魅力というところだと思います。プレー面で言えば、読みの鋭さと攻め込まれたときのカウンターショットですね」

――他にも日本から世界へ出たい選手やコーチの悩みとして「資金力」が挙げられると思います。

「その通りです。選手の親御さんの負担を考えると、とても厳しい世界です。ですので、スポンサーを探すことは絶対条件です。アカデミーからも支援できると良いのですが、近年強い選手を常に輩出するクラブに生徒が集まってくる時代ではなくなってきています。東京や埼玉など関東圏にはたくさんのスクールがあり、どこのスクールにも全国トップの選手がいたりする。選手のスクールの移籍は日常的に行われていますし、そうなると将来を見据えた一貫的な指導も難しくなります。そのためアカデミーの経営も以前に比べて難しい状況になる。少子化もどんどん進んでいますしね。また、選手の親御さんも世界を目指すというより、9割は大学進学へ目が向いているのも現実。目標や夢は選手それぞれ違うので、各選手達の目標に応えながら指導していくと共に、『プロになりたい』『世界で活躍したい』と目指す選手がいる限りは一緒に海外へ出て行けたらいいなと思って活動しています」

「元々、Fテニス(多くのトッププロ、ジュニアを輩出してきた埼玉県にあるテニスクラブ)でもコーチをしていました。そこで校長をしている藤井正之さん、そして与野テニスクラブ(全米オープンジュニア準優勝した園部八奏選手の所属クラブ)の大西亮コーチという2人の背中を追って、育てていただいた。そういうトライして行く部分を見て自然とこうなっています」

――グランドスラムを体験、または実際に観ることで得たことがあれば教えてください。

「日本では感じることのできない華やかさであったり、お客さんの雰囲気、規模も大きいので自然と気持ちは上がります。モチベーションも高揚感もありますし、それは特別な大会でした」

――最後に何かメッセージがあればお願いします。

「4月から榎音が高校生になり通信の高校に通い始めたので午前中から練習ができるようになりました。やっとそういう環境になったので、午前中から練習ができる仲間を探しているところです。ぜひ募集中です!」

――貴重なお話をありがとうございました。

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写真=田沼武男 Photos by Takeo Tanuma