「シューズ選びの基準」は、プレーヤーによって大きく2つに分かれる
前回は「価格と機能」のバランスについて話しました。使用するプレーヤーのレベルやプレイスタイルによって、必要となるシューズ機能は異なる……って話で、競技プレーヤーが必要とするシューズは、搭載機能がハイレベルで、多彩でもある。そのかわり「高価格になる」ということ。
【毎日セール開催中!】テニスクラシックオンラインストア(公式通販ショップ)はこちらそして初級者の場合は、競技ほど激しいフットワークを必要としない場合が多いので、軽いフットワークでの安全性が確保されたシューズであれば、それで十分だということ。むしろ「初級者に必要でない機能は邪魔」になることが多く、初級段階で必要はないハイスペック=高額モデルは、あまり好ましくないわけです。
これは「君のような初級者は、それで十分だろ!」と言っているのではなく、「今のあなたには、これがちょうどいい!」ということです。それよりも、初級レベルでは「楽しくプレイできること」が重要です。まずは「シューズにはいろんな機能がある」ということを知っておいて、今は「楽しい気分でプレイできそうなシューズ」を選ぶことが肝心です。
■上級レベルは「性能」重視だが、初級レベルは「感覚」を重視
競技プレーヤーや上級プレーヤーのみなさんは、自分のプレーレベルに応じて必要となるシューズ機能について理解するようになります。たとえば「相手の打球に対して反応が遅れがちだから、もう少しグリップ性能が高いシューズにして、蹴り出しを早く・強くしよう」とか、「試合が長引くと足裏に衝撃を感じやすいから、衝撃緩和システムが充実したモデルを探そう」とか、各自の選択基準を持って、次のシューズを選びます。
でも初級レベルには、ナニ言ってるのかわからないですよね。
いいんです! ごちゃごちゃ考えるより、「テニスを楽しみたい!」それだけでいいんですよ。そのために自分が選びたいシューズって、どうやって探せばいいの?
ショップでいろいろ試し履きさせてもらって、履いてみた『感覚』で選んでください。
まずは「自分が負担に思う感覚」のシューズは、ヤメときましょう。ジュニアのシューズ選びなどでよく見かけるのは、親御さんが「この子が上達したときのことを考えて、少しレベルの高い靴にしてください」ってシーン。
お父さん、お母さん……テニスシューズは「消耗品」です。お子さんにボロくなったシューズをいつまで履かせるおつもりですか? 上達して機能満載モデルが必要になったら、「ガンバったね!」と言って、新しいシューズを買ってあげてください。
ついでに話しますが、「成長期だから、1サイズ大きめのでいいわ」というのは、絶対にヤメてください。足に対して大きすぎるシューズは、ケガの元になりますし、お子さんの足の正しい成長を妨げる場合があります。お金がかかってしょうがないかもしれませんが「現時点でジャストフィット」を履かせてあげてください。
話を元に戻して……
シューズを履いたときの感覚は、「快適さ」にフォーカスされるものです。
それは「足入れ感の柔らかさ」「軽さ」「クッション感」などです。これは人間が「きもちイイ」と感じる基本的な感覚で、競技レベルが上がると、「柔らかいのは不安」「軽いのは不安定」「フワフワするとレスポンスが悪くなる」などと「マイナス要素として感じる」ようになります。でも、初級レベルではそんな窮屈に考える必要はないと思います。だってそれじゃ「楽しくテニスできません」よね。
まず「初めてのテニスシューズ」は、「履いていてラクなこと」を大切にしましょう。テニスが上達してくると「もう少しカッチリした足入れ感が必要だな」とか、「ここまでフワフワしてないほうが、安定するかも」とわかってきます。それが『必要なとき』ということです。運動会の徒競走に、スパイクはいらないのです。
■選ぶプレーヤーによって「どっち?」は違うもの
そうは言っても、初級者それぞれに好みも違いますよね。
「カッコいい」と感じる要素も違えば、「好き」と思うポイントだって千差万別。シンプルなデザインを素敵と思う人もいれば、派手めなデザインがカッコいいと感じる人もいます。だからテニスショップのシューズ売り場には、たくさんのシューズが並ぶのです。メーカーによってデザインの方向性が「競技志向っぽい」ところもあれば、同一カテゴリーでも「ファッション志向っぽい」ところもあります。
また多くのメーカーが、同じモデルに「色違いバリエーション」を用意しています。白が多くて地味めなデザインと、派手に感じるデザインのどちらかを「選べる」たり、男らしい面構えのデザインと、いかにも女の子とが選びそうにデザイン分けされることもあります。
多くの中から自分が気に入ったモデルを選んでいくわけですが、みんな最終的には2つくらいに絞ることになって、「どっちにしようか?」と考えるケースがとても多いですね。
このときの選択ポイントも、人それぞれ。
自分がいちばん重要と思っているスペックに注目して、「どっち?」と考えるのです。ある人は「軽いのはどっち?」と考え、またある人は「動きやすいのはどっち?」と考えます。さらに「自分のテニスウェアに合うのはどっち?」とか、最後には「安いのはどっち?」という問題だって、決め手になることも多いです。
上級者やベテランプレーヤーの場合は、自分に必要な機能・スペックというのがわかってきますから、「試合中に疲れにくいのはどっち?」とか、「勝てるシューズはどっち?」といった観点で選ぶようになります。それもまた、「絶対的にこっちが疲れにくい!」「こっちのほうが勝てる!」といった方程式なんかないんです。
同じスペックのシューズでも、使う人によって感じ方は違うし、必要な機能値も違いますから、自分で探していくしかない……ですけど、テニスショップヘ行けば、その案内役を務めてくれるスタッフさんがいます。いつも自分ひとりで悩んで迷走し、永遠に正解へ辿り着かないよりも、知識のある水先案内人の力を借りて、自分の感覚や情報を伝えることで、より効率よく……つまり「手っ取り早く」マイシューズと出会うのがいいですね。
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