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2020.02.05

選手情報

田中愛美選手(車いすテニス)インタビュー「夢の舞台まであと少し」

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イヤな顔はあまりしない、その裏にあるのは
「幸せを共有したい」という想い

――ラケット、ストリングのこだわりを教えてください


打ち抜きがいいラケットで、厚い当たりができるラケットが好きです。飛び過ぎると、スピンをかけたくなる。浅いボールでも打ち抜きたいのです。ストリングは、テクニファイバーのXR3を50ポンで張っています。これを言っても、あまり理解してもらえないのですが、アイスの「チョコモナカジャンボ」みたいな感覚が好きなんです(笑) 真ん中の板チョコ部分を食べる時、パリッという食感がありますよね。それ、このガットにはあるのです! 周りの人には笑われますが、私的には、チョコモナカジャンボの打球感なのです(笑) あと、私はフェイスの横にバンパーを付けています。スライスを打つ時によく当ててしまって、試合中に2、3本折ったことも…。付けることでトップヘビーにして振り抜きを良くする意味合いもあります。

――ツアー生活は大変だと思います。息抜きはどうしていますか?

オフは月1か2なんですけど、歌うのが好きなので、カラオケはよく行きますね。運動だと、3分間走が好きなんです。3分間ただ走るだけ(笑) もやもやする時に、やると頭がスッキリするんです。あとは、寝るのと買い物と美容室に行くくらいですかね。あっ、ドラマや映画を家で見たりします。アイドルも好きで、乃木坂46とかK-PopアイドルのTwice、IZ*ONEとか、かわいい女の子たちを見て癒されています。

――今もそうですが、よく笑われますね。性格形成に影響したのは、ご両親でしょうか?

両親ももちろんですが、やっぱりケガをした直後のことが「今の自分の元」になっています。特に高校が私を受け入れてくれたことは、人生において大きなポイントでした。先生も同級生も私が車いすで生活できるように、一緒に環境を作ってくれたし、普通に接してくれた。ケガをする前と同じ生活に戻れたというのは、本当に環境に恵まれていたと思います。何かをするにも友達に頼らなければいけなかったからこそ、人とのコミュニケーションを大事にしようと思いました。よく悩み無さそうとか言われますが(笑) イヤな顏をあまりしないというのは、いろいろな人に助けてもらって今がある、命があるから。自分が幸せに過ごすきっかけを与えてもらったので、その幸せを分けるというか、共有できたらなという思いはあります。

パラリンピック出場決定と誕生日を一緒にお祝いしたい

――昨年行われたユニクロのエキジビションでは、国枝選手やフェデラー選手が同じコートで打ち合うというシーンがありました。もっと健常者との交流があってもいいと思うのですが、選手としてはいかがでしょうか?


健常者と車いすがネットを挟んで競技ができるようになる機会を増やしたいというのは一つの夢です。パラスポーツの中で車いすテニスは、健常者と一緒にプレーできるという点で特殊だし、魅力だと思っています。私も地元で、ベテランの方々と一緒にテニスをやって、いろいろと教わっていました。数年前、東京インターハイでは、国枝選手が高校生とエキジビションを行いましたが、そういう機会があれば障碍者スポーツの教育の一環にもなるなと思います。それと、できれば車いすテニスのスクールを開いて、健常者と車いすテニスのジュニア同士が刺激し合うような環境が作れたら。刺激し合えることはすごくいいことですよね。

――すでに一つ出ましたが、最後に田中選手の夢を教えてください。

本番の舞台では今までお世話になった方、応援してくれた方に、応援して良かったと思ってもらえるようなプレーをしたいですね。選考決定の翌10日は、私の誕生日。パラ内定と誕生日を一緒にお祝いしたいと思っています。

――夢の実現、それが幸せの共有につながるわけですね。

はい、そうですね。


”その一球に魂を込めて、最高のプレーをします”、その言葉の裏には、応援してくれた方への感謝の気持ちがある

[東京パラリンピック出場の条件] ①2018年アジアパラ競技大会優勝者、2019年パラパンアメリカ競技大会優勝者 ②2020年6月8日付(日本時間9日)の車いすテニスシングルス世界ランキングで上位22位以内に入る(男子は同上位40位以内、クアードは上位) ③対象選手が世界ランキング上位でなく、各国の出場枠に余裕がある場合に推薦枠が適用され、バイパルタイト委員会の招待枠で出場が決まる ④シングルスランキングでは選考枠に入っていなくても、ダブルスランキングが優れている選手を対象にした充当枠で選出する。

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取材=広瀬俊夫、写真=石塚康隆  取材協力=ブリヂストン