2号連続でお届けする『黄金スペック(フェイス面積100平方インチ、ウエイト300g、バランスポイント32.0cmのラケット)』徹底比較。今回は、知っている人は知っている(!?)でお馴染み、テニクラ試打隊の(広)&(川)による「徹底試打編」をご紹介していこう。
まずは先月号の記事を簡単におさらいしよう。
スウィング・インデックス(Si数値)とはフレームのしなり量を表す数値。同じミドルパワーレンジに位置する両ラケットだが、BURN 100S CVのほうが0.3ポイントしなりが大きい。
フェイス中央部とグリップ上部に違いあり。これによりストローク時の大きいスウィングの場合は、BURN 100S CVは瞬間的にムチのようにしなり、打球にパワーを伝える。一方で、リターンやネットプレー時のコンパクトなスウィングの場合は、ULTRA 100CVは全体がしなり、虫取り網で捕らえるように的確にボールを捕らえやすい。
BURN 100S CVは、横に長くフェイス部分は円に近い。その分、スピン性能がかけやすく(スピン・エフェクト・テクノロジー搭載のSラケ*1であることも重要)、スウィートエリアで捕らえやすい。ULTRA 100CVは、縦長の楕円形。スウィートエリアが縦に長く、クラッシュゾーン*2も搭載しているため、オールラウンドさがある。
簡単に説明すると、「BURN 100S CV」は、フェイス部分が瞬間的にしなり、トップスピンを打つ際に有利となる横に広いスウィートエリアがある。「ULTRA 100CV」は、全体がしなり、天地にストリングもスウィートエリアが長い+クラッシュゾーンの効果でオールラウンドに対応できるということになる。
※1=ボールにスピンがかかる原理である、ストリングがズレて戻る動き(スナップバック)に着目し、横糸の本数を縦糸より少なくし、効率よくスピンを発生させるメカニズム。ウイルソンが特許を持っているテクノロジー。BURN 100S CVでは、ストリングのズレ幅が3.3倍増となり、ストリングスが戻る速度も69%UP。結果、回転量が10%UPしている。
※2=フェイスの6時部分に搭載されたニューデザイン・グロメットとその中に組み込まれた「クラッシュゾーン」パーツ。インパクト時、このクラッシュゾーンがつぶれることで、ダンピング(ストリング面のたわみ戻し)が大きくなる。これにより、わずか1000分の3秒と言われるボールとの接触時間が増加。ダンピングが大きくなることで威力あるボールが飛び、球持ちが長くなることでコントロールがアップする。
それでは、徹底試打の感想をご紹介していこう!
テニスクラシック編集部 (広)
ベースライン付近でプレーしたいならBURN 100S CVは大きな武器となる
まず、両ラケットで素振りをしてみる。すると、この時点でフィーリングの違いがわかる。BURN 100S CVは振ってみると、インパクト位置付近でフェイス部の走りを感じる。一方、ULTRA 100CVには、トップからグリップまでが一体となっている感覚だ。
そして実際に試打。まず感じるのは打球感の違いだ。BURN 100S CVのほうが“もっちり”したホールド感で、インパクトでヘッドがグンと前に出るようなフィーリングがある。ULTRA 100CVはどうかというと適度な球離れ感だ。弾き、ホールド感共に適度にある。打球に関しても、その“適度”がうまく表現されているように思う。フェイス部が瞬時に走るBURN 100S CVは「より強打を打ちやすい」し、ULTRA 100CVは一発の強さはないものの「安定して質のいいボールが打ちやすい」と感じた。その安定感だが、ストローク、ボレーでも、相手のボールに合わせて打ちやすいというのは大きな特徴だと思う。
そして、改めて思ったのは「BURN 100S CV」のスピン性能。Sラケということもあるが、2モデルを一緒に打って感じるのはフェイスが横に広い分、トップスピンを打つ際にインパクトで安心感がある。また、スイングの際、横に広いフェイスは天地に広くなるわけで、ライジングが非常に打ちやすい!
ベースライン付近に留まってプレーをしたいという人にとっては、特に恩恵を受けられるラケットだと思う。
ボレー、スライスに関しては甲乙つけがたし。BURN 100S CVは、スピンがかけやすく、球乗りがいい分打ちやすいし、ULTRA 100CVは厚い当たりが打ちやすいので、勢いあるボールが打ちやすい。
両ラケットを選ぶポイントとしては、スピンを基幹としたいか否かではないだろうか? スピンを求めるなら、まちがいなくBURN 100S CVである。フラット系のボール、タッチショットなど、多様性を考えると相手のボールを利用しやすいULTRA 100CVは非常に魅力的に映る。同じ黄金スペックでも、これだけ性格の違うラケットができるのだからおもしろい。
テニスクラシック編集部 (川)
ULTRA 100CVの飛ぶ感覚は打ってみないと理解しがたい
ULTRA 100CVから試打を実施。まず感じたのは、フレームのしっかり感だ。面ブレがまったくと言っていいほどないので、スウィートエリアぎりぎりや少しトップ側で打ったとしても、飛ばしてくれるので大分助かる。球種に関しては、圧倒的にフラットドライブ系が打ちやすいし、質のいいボールが飛んでいってくれる。これに関しては…表現が非常に難しい。弾きがいいという感覚でもないし、ホールド感がいいという感覚でもない.....のだが、ボールは飛んでいってくれるという不思議な感覚なのだ。だからこそ、振られて手首だけで返すようなショットでも、思った以上にいいボールが飛んでいってくれる。
そしてBURN 100S CVだが、とにかく振り抜きがイイ! インパクト付近で、フッとヘッドが軽くなる感じがあり、ボールを叩いてくれる。ベースラインより後ろからグリグリとスピンをかけていくプレーヤーには最適だと思う。とにかくスピン性能が高いので、「これもコートに収まるんだ!!」と思ったことも度々。逆に言うと、だからこそ厚く打つタイプではないなら、トップスピンをかけようと過度に意識しない方がいいのかもしれない。スピン量を意識すると、軽いボールになってしまうので、より厚く捕える意識をしたほうが、結果的に良い威力あるストロークが打ちやすい。
ボレーに関しては、どちらもいいなぁ...というのが正直な感想。ULTRA 100CVは、表現するならどっしりした感じ。ラケットの表現にふさわしくないと思うが、それが一番しっくりくるのだ。決して硬いというわけではなく、ポンとボールを弾き返してくれる。BURN 100S CVに関しては、特徴であるスピン・エレクト・テクノロジーが効いている。アンダースピンがしっかりかかるので、コントロールがしやすいのだ。
では、どちらをどう選ぶべきか!? とにかくグリグリのトップスピンで相手を押したいならBURN 100S CV、正確性を重視して相手ボールの勢いを利用したいのならULTRA 100CV。特徴の違いがしっかりしているだけに、ラケットも選びやすそうだ。
BURN 100S CV / ULTRA 100CV
BURN 100S CV
¥34,000(税抜き)
フェイス面積: 100sq.inch
レングス: 27.0inch
Av.ウェイト: 300g
Av.バランス: 32.0cm
フレーム厚: 23.0-25.0-23.0mm
グリップ・サイズ: G2,G3
ストリング・パターン: 18x16
適正テンション: 50-60p
発売中
ULTRA 100CV
¥34,000(税抜き)
フェイス面積: 100sq.inch
レングス: 27.0inch
Av.ウェイト: 300g
Av.バランス: 32.0cm
フレーム厚: 23.0-26.5-22.5mm
グリップ・サイズ: G1, G2, G3
ストリング・パターン: 16x19
適正テンション: 50-60p
発売中
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