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2017.02.20

メーカーズボイス

全豪オープン2017レポート

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Kei Nishikori(錦織 圭)
<ついに実現したグランドスラムでの対決>
フェデラーから課せられた宿題・・・
その答えを導き出すための新たな戦いへ

開幕前に行われたドローイング(組み合わせ抽せん会)で、錦織 圭は厳しいブロックに入ってしまったと誰もが思った。
今回の全豪オープンで、錦織に与えられたシードNo.は「5」。準々決勝でトップ4の誰かと必ず当たらなければならないが、錦織は第1シードのマレー(イギリス)と当たるブロックに入ったのだ。マレーとは昨年のUSオープン準々決勝で対戦し、フルセットの激戦の末に錦織が勝利を収めている。しかし、それは錦織に新たな自信を与えこそすれ、次の勝利を約束するものではない。加えて、マレーはこの錦織に対する敗戦後、奮起してシーズン終盤を絶好調ですごし、ATPツアー・ファイナルズ決勝ではジョコビッチ(セルビア)を下して初のNo.1の地位を手に入れていたのだ。



グランドスラムの開催を迎えるたび、錦織には初優勝の期待が寄せられるが、それには錦織自身の成長はもちろん、組み合わせも運命を左右する。そして今回、予想されるマレー戦の前にはもう一つ、超えなければならない大きな壁があった。それが、フェデラー(スイス)だった。 錦織 圭対ロジャー・フェデラー。 4回戦というラウンドはあまりにも早いが、しかし、誰もがその対戦に期待を寄せつつ、開幕を迎えた。

1回戦は、クズネツォフ(ロシア)のバウンドの低いボールに手を焼き、フルセットの戦いを強いられながらも、錦織は今年初のグランドスラムでの勝利を収めた。
2回戦のシャルディ(フランス)戦ではサーフェスの速さにもフィットし、落ち着いたプレーでストレート勝ちを収めると、 3回戦ではラツコ(スロバキア)とのグラウンドストロークの打ち合いも、終始展開をリードするプレーでラウンドを勝ち上がった。
 そして迎えた4回戦。対ロジャー・フェデラー。 待ち望まれた、グランドスラムでの2人の対戦だった。
2014年のUSオープン。錦織が準優勝を飾ったこの大会だが、この時、フェデラーは準決勝でチリッチ(クロアチア)に敗れたことで、グランドスラムの舞台における錦織とフェデラー、2人の対戦はあと一歩で実現しなかった。



今回の全豪オープン。第5シードの錦織に対して、フェデラーは第17シード。単に数字だけを見れば何とも不思議な感覚にとらわれる。しかし錦織にとって、かつての憧れであり、今や目前の超えるべき壁となっているフェデラーとの対戦は待ち望んでいたチャレンジであり、一方のフェデラーにとっても、ツアーに復帰し、再びグランドスラム・タイトルを獲得するための大きなチャレンジだった。

 ベースライン上での激しいラリーを見慣れていた目に、錦織とフェデラーが見せた、コートの広さを存分に生かし、縦横無尽にボールが行き来する上質なテニスは、実に新鮮で、スリリングなものだった。そして、錦織のフェデラーに対する最大限の敬意は、前へ前へと攻める彼の必死なプレーにも表れていた。
あと一歩届かなかったのは、フェデラーが錦織に課した「宿題」だったのかもしれない。



フェデラーは、「ケイにはファイナルセットに入ると負けないというデータが残っているから、気持ちを強く持って頑張った。ケイはすばらしい試合をしたよ」と錦織を称えた。 そして錦織は、「先に振り回される展開になってしまったので、もうちょっとうまく深いボールなど混ぜるべきだった。甘いボールは1球も打てない」とフェデラーのプレーの厳しさを語った。

錦織は、新しい武器「バーン95CV」を携え2017年の戦いをスタートした。錦織自身のリクエストによる「ファイナルになっても、体のパワーが落ちないラケット」は、フェデラーとの激闘にこそふさわしい1本だったと言っていいだろう。フェデラーの放つボールの厳しさ、そしてフェデラーが錦織に対して寄せる期待は、「バーン95CV」を通して錦織に心と体に深く刻まれたに違いない。

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