close

2021.09.04

大会情報

香港の全国大会と日本の全国大会の違いを紹介 〜香港におけるちょっと驚きの事実〜

  • 著者をフォローする
  • 記事を保存

SHARE

  • 著者をフォローする
  • 記事を保存

香港の全国大会の様子

日本で全国大会に出場するには、都道府県の大会を勝ち抜き、関東大会などのブロック大会に出場し、勝ち抜いたうえでやっと到達することができる。一方、香港においては、誰もが全国レベルの大会にエントリーすることが可能。今回は、日本とちょっと違う香港の全国大会について紹介する。

【SNS】”日清食品を食べて自国選手をお祝いしよう”と投稿するコールマン・ウォンのインスタグラム

香港で最も大きな全国レベルの大会は3つ
しかも年齢制限はない!

香港における全国規模の大会は大きく3つある。それは「CRC Open」「SCAA Open」「Prudential Hong Kong National Tennis Championships」だ。そのうち「CRC Open」と「SCAA Open」は香港にある老舗のクラブハウスが、政府系の組織である香港テニスアソシエーションと連携して運営している。ジュニアのカテゴリーが用意されている場合もあるが、「Men’s open」「Ladies’ open」のカテゴリーであっても年齢問わず、誰でも参加することができる。そのため、10歳の選手と40歳の選手が一つのコートで戦うこともある。

「CRC Open」
2020年における「CRC Open」の出場資格は以下の通りだった。
 (1)香港テニスアソシエーションのメンバーであること
 (2)本人確認のために香港IDか各国の旅券を保有していること
 (3)14歳以下のカテゴリーにおいては2006年1月1日以降の生まれであること
 (4)18歳以下のカテゴリーにおいては2002年1月1日以降の生まれであること


つまり、年齢の下限は設定されていないということになる。香港ではコーチが大会に出場することも珍しくないため、コーチが教え子に試合で負けるということも多々あるのがおもしろいところだ。また、香港テニスアソシエーションのメンバーになるためには、写真や旅券あるいは香港IDのアップロードが必要になるが、いたって簡単だ。

「SCAA Open」
一方、「SCAA Open」については、香港のパスポートか香港IDを保有している人、中国人である人、台湾人である人を対象にする、としているが、特例として参加が認められる場合もある。実際、香港の永住権を保有する日本人は出場することができた。こちらも年齢については特に指定されていない。

「Prudential Hong Kong National Tennis Championships」
香港IDあるいは香港に滞在することを可能にする旅券やビザが必要。また、大会の開始日までに連続して香港に30日以上滞在していることが条件となる。さらに、試合当日に本人確認をするための写真付きの証明が必要。こちらも、年齢については特に指定されていない(ランキング上位の選手は出場できないイベントもあり、誰でもより参加しやすい設定になっている)。

ジュニアがナショナルチームの
トレーニングに参加するには
香港の永住権が必要

全国大会に出場するのはあまり制限のない香港だが、香港のナショナルチームにおいてジュニアがトレーニングをするためには、香港の永住権が必要となる。香港の永住権を取得するためには、基本的に7年以上香港に居住する必要がある。そのため、どんなに優秀であっても永住権のない選手はナショナルチームでトレーニングをすることができない。逆に言えば、外国人であっても7年以上香港に居住することで、ナショナルチームでトレーニングを積み、香港の代表として国際大会に出場することも可能である。ちなみに、ナショナルチームでトレーニングをしていなくても、香港でのランキングが高く、全国レベルの大会における成績が優秀であれば、香港代表として選考される可能性がある。


元ATPプレーヤーやデ杯代表の選手が激突

香港では、かつてATPで活躍した選手がコーチとして働いていることがある。2021年に行われた「Prudential Hong Kong National Tennis Championship」の決勝では、かつて世界ランキング208位だったDavid Souto氏(ベネズエラ)と香港出身でデビスカップに出場したことのある選手が戦った。この2人は現在、同じアカデミーでテニスコーチをしている。また、ダブルスも年齢の制限に縛られることがないため、コーチと選手がパートナーとして出場していることも多々ある。普段は難しいオンコートでのコーチングを実際の試合で受けることができるため、選手にとっては非常に効果的であると言えるだろう。

2019年に「CRC Open」を制したのは、当時15歳だったコールマン・ウォン(ジュニア世界ランク41位)だ。現在はアメリカやヨーロッパで転戦しながらグランドスラムジュニアにも挑戦している。ジュニアレベルの大会においても年齢の下限が決められていない場合が多いため、たとえ12歳であっても18歳以下で決勝まで残る選手がいるなど、年齢に縛られない構成となっている。そのため、力のある選手は、早々に香港内の大会を勝ち進み海外の大会に出場し始める。

ガスケやスーウェイの元コーチらがジュニアを指導
情報さえつかめば有名コーチに指導してもらえる機会も!


香港は小さいが、意外にも優秀なコーチがジュニアを教えている。かつてリシャール・ガスケ(フランス/世界ランク79位)のコーチを務めたGuillaume Peyre氏や、元ダブルス世界No.1のシェイ・スーウェイ(台湾/同81位)のコーチであり、自身も女子ツアーでプレーした経験がある香港出身のKa-po Tong氏らがジュニアの指導を行っている。

日本と違い全体の規模が小さいため、情報さえつかめば有名コーチに直接指導してもらえる機会も見つけやすい。何事も口コミが命の香港では、知り合いの知り合いとつながることで一流のテニスコーチに教えてもらえる機会が広がる。また香港には、土地柄からかシンガポールや台湾などアジアの国々からきた元デビスカップ選手が数多く居住している。これらの元選手は、コーチとしてテニスに関わったり、ジュニアの親として子どもを支えたりしながら香港におけるテニスの発展に貢献している。

日本と比較すると全国大会レベルの試合においても規制の少ない香港では、日本とはまた違ったタイプの選手が育ちやすい土壌であると言えるだろう。

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録