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2021.09.22

選手情報

ラドゥカヌ、フェルナンデスらアジアにルーツを持つ選手の活躍が光ったUSオープン。過去&現在のアジア系選手の活躍について紹介

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多様性が光った今回のUSオープン
アジア系選手の活躍はマイケル・チャンから始まった!?


先のUSオープンでは、女子シングルスをはじめ多くのカテゴリーにおいてアジアにルーツを持つ選手が決勝に進出した。1996年に準優勝した、錦織圭(日清食品/世界ランキング54位)のコーチを務めるマイケル・チャンや、すでに2度優勝した経験を持つ大坂なおみ(日清食品/同8位)ら過去のUSオープンでのアジア系選手の活躍や、今大会でアジア系選手の活躍が目立った理由などを紹介する。

【SNS】私服姿で全米男子シングルス優勝のメドベデフと一緒に写るラドゥカヌ

現在、錦織のコーチを務めるマイケル・チャンが初めて出場したグランドスラムはUSオープンで、当時15歳だった。彼はUSオープンに合計17回出場し、引退したのも同大会だった。アジア系アメリカ人である彼がツアーに参戦するようになった頃は、アジア人は主要な大会ではほとんどいなかったという。つまり、テニス界におけるアジア系の活躍はマイケル・チャンから始まったと言っても過言ではないだろう。最近では、日本人の母親を持つ大坂がUSオープンで2勝している。ファッション界においても力を持つ彼女は、自身のルーツに非常にこだわりと誇りを持っている。先日のアメリカ・ニューヨークで開催されたファッションの祭典「メットガラ」においては、共同ホストの一人として母親の出身地である日本と父親の出身地であるハイチの文化をミックスさせたファッションを披露した。

アジア人が重んじるハードワークと規律

今回のUSオープンにおいて大きな出来事と言えば、ノバク・ジョコビッチ(セルビア/同1位)が年間グランドスラムを達成できなかったことや、ダニール・メドベデフ(ロシア/同2位)が初のグランドスラム制覇を成し遂げたことなどが挙げられるが、女子シングルスの決勝が10代同士の対決であったことも大変話題となった。そしてこの2人は、ともにアジア系のバックグラウンドを持つ選手であり、優勝者のエマ・ラドゥカヌ(イギリス/同22位)の母親は中国、準優勝者のレイラ・フェルナンデス(カナダ/同28位)の母親はフィリピンにルーツがある。優勝したラドゥカヌは、USオープンの公式記者会見において、中国人の母親からハードワークや規律を学んだと語っている。また、アジア人選手として初めてグランドスラムを制した中国の李娜さんが持つ精神的な強さに感化された、としている。

女子ダブルスでは、中国のジャン・シューアイ(同48位)とオーストラリアのサマンサ・ストーサー(同325位)ペアがアメリカのコリ・ガウフ(同19位)/キャサリン・マクナリー(同146位)ペアを破って優勝。男子の車いすテニスでは日本の国枝慎吾(ユニクロ/同1位)が優勝、女子では上地結衣(三井住友銀行/同2位)が準優勝を飾った。この2人は、ダブルスでもそれぞれ準優勝している。

ジュニアでもアジア人選手が活躍!

ジュニアの男子シングルスで準優勝した中国のJ.Shangは、まだ16歳ながらもジュニア世界ランク1位である。男子ダブルスでは香港出身で17歳のコールマン・ウォンのペアが優勝した。女子では、今回残念ながらダブルス準決勝で敗退したフィリピンのアレクサンドラ・イーラが、弱冠16歳ながら全仏オープンと全豪オープンの女子ダブルスで優勝した経験を持つ。

トップ選手の高身長化が目立つ現在のテニス界において、アジア人の選手が活躍するポイントとして、ラデゥカヌが言うように精神性と規律は大きな要素であると言えるだろう。特にラドゥカヌやフェルナンデスのように、アジア人的なメンタルを持ちつつイギリスやカナダでマイノリティーとして育ってきた特殊な環境も、彼女たちのメンタルに大きく作用していると考えられる。たとえ家族の事情でなかったとしても、現在活躍しているジュニアの多くは、早いうちからヨーロッパやアメリカでトレーニングを開始している。

また、アジア人も高身長化が進んでいると考えられる。ジュニア男子ダブルスで優勝したウォンの身長は185cm以上。ラデゥカヌは175cm、フェルナンデスも168cmと、女子選手の中では決して低くないことがわかる。前述のイーラも175cmだ。

アジア人選手の今後の活躍に期待

元世界ランク4位の伊達公子さんがセカンドキャリアとしてコートに戻ってくる際、「キツいでしょ?」と聞いたトレーナーに対し、「16歳や17歳の時にやっていたトレーニングはこんなもんじゃなかった」と言ったそうだ。このように、アジア人選手に共通する認識として、現在のつらさは将来の強さに変わるはずだという信念があるのではないだろうか。ただ“アジア”と言っても広く、中国とフィリピンでは文化も異なる。とはいえ、家族のつながりの強さや海外に出てよりよい暮らしを切り開いていこうとする感覚は似ている部分もある。アジア人らしい勤勉さやハードワークが実り、テニス界においてもさらに活躍する選手が増えることを期待したい。

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