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2022.03.12

選手情報

齋藤惠佑プロインタビュー「今年の後半ぐらいまでにはチャレンジャーを主戦場にできるようにしたい」[2022年注目の若手男子プロ選手特集(2)]

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「ピアノを弾くと次の日の
テニスの調子がいいんです(笑)」

――リズムを意識しているんですね。リズムといえば、齋藤選手はピアノが弾けると聞きました。
弾けるのは一曲の半分ぐらいなんです(笑) 祖母がピアノの先生で、父も2曲ぐらい弾けるんですよ。といっても、父は楽譜が読めないので、祖母に指を押すところだけ教えてもらって、その流れで僕も指だけ教わりました。ショパンの幻想即興曲を途中まで弾けます。

――そんな難しい曲を弾けるなんてすごいですね! よく弾いているのですか?
はい、最近はよくピアノを弾くようにしています。少し前に武正コーチの家にお邪魔した際、ピアノが置いてあったので弾かせてもらったことがあるんです。でもその時に久しぶりに弾いたら、あんまり弾けなくて、それがちょっと悔しかった(笑) それに加えて、前日にピアノを弾くと、次の日のテニスの調子がちょっとよかったりするんです。なんで調子がいいんだろうなぁ? と思いながらも、“じゃあ、ちょっと弾いておこうかな”といった感じで弾いたりしています。ただ、僕も楽譜は読めないので、祖母にちょっと教わってパッと弾いて適当に楽しんでいます。



――ピアノはテニスにもいい影響を与えているんですね。
そうかもしれないですね。指は体よりも細かいところなので、動きが身に付きづらいのではないかと思うんです。最初はゆっくりとスローモーションで弾いて、だんだんとスピードを速くしていく、というふうに僕は覚えていくんですけど、最初にゆっくりやることで体に覚え込ませる、というか、体に馴染んでくる感覚があります。そこは、運動という点でテニスでも同じではないかと思いますね。
僕は今でも、素振りをよくやるんです。3〜4日に1回ぐらいのペースで、夜、家に帰ってからやったりします。その素振りでも、最初はちょっとスローモーションで振ってから、徐々に速くして振っています。ピアノでも父からまずはスローモーションで弾けよ、と言われていたので、素振りでも同じようにやっていますね。

――素振りをやる意図や目的は何ですか?
コート上でラリーだけをやっていると、自分のベースのスイングやバランスが崩れてくるので、フォームをおさらい・確認するような目的でやっています。あとは、肩周りがちゃんと動くかどうかをチェックしています。自分の基本となるスイングから離れていってしまったのを、素振りをすることで少し近づけていく、といった作業になってくるかなと思います。素振りをした次の日の練習はいい感覚で行うことができ、肩周りを動かしやすかったり、スイングしやすいということを感じますね。
ジュニアの子たちも素振りはよくやっていると思いますが、ラリーと同じスピード・リズムで振るだけではなく、もう少しゆっくり振ってスイングを確認するなど、工夫して行うとより効果が出てくると思います。最初から速く振っても、間違ったフォームで振っていたら悪いクセがついてしまうので、ゆっくりフォームを確認しながら、特に小さい子はコーチが見てあげるのがいいのかなと思います。


「今年後半までに世界ランキングを
300〜400位へ上げたい」

――昨年(2021年)を振り返ってどうでしたか?
試合にはいろいろと出場して心に残っているのは、7月26日〜8月1日にエジプト・カイロで開催された男子ツアー下部大会M15カイロ大会(クレーコート/賞金総額1万5千ドル)のダブルスで、住澤大輔くんとペアを組んで優勝できたことが一番うれしかったです。ツアー初優勝で、まさか優勝できるとは思っていなかったので自分でも少しビックリしました。決勝戦の前は、“頑張ろう!”ってすごく気合いが入りましたね。大輔くんがいいボレーをたくさん決めてくれて、またいいサーブを打ってくれたのでとても助けられました。
ただ、僕はダブルスで自分がミスした時にパートナーに申し訳ないなと思い、それがとても気になってしまうタイプ。なので、やはりシングルスのほうが好きですね。変なミスしても、それは自分のせいなので(笑) でもダブルスで優勝できて、ボレーなども自信になりました。これまではあまりボレーは好きではなかったんですけど、今後はシングルスでも頑張ってボレーを取り入れていきたいです。


――カイロへの遠征はいかがでしたか?
食事とかは結構きつかったですね。パスタが中心で、野菜とかも僕はちょっと怖くてあまり食べなかったので、少ししんどかったです。パスタも日本で買って行ったソースをかけたりして食べていましたが、それでも後半になるとあんまり食べられなくなってきたな、という感じでした。

――今まで遠征した中で大変だったことはありますか?
これまで遠征した中で一番きつかったのは、ジュニアデビスカップのアジア予選です。現地に着いて2日目ぐらいで体調が崩れて、38度ぐらいの熱が出て、さらにお腹も壊しました。それでも試合には出なくてはいけないので、何とか出場。そんな状態ではありましたが、1回も負けませんでした(笑)



――それでは今年(2022年)の目標を聞かせてください。
今はフューチャーズが主戦場となっているので、そこでできるだけ勝ち上がってランキングを限りなく上げていきたい。そして、今年の終わりぐらいまでにはどうにかチャレンジャーを舞台に戦っていけるようにしていきたいです。チャレンジャーに出場できるぐらいに世界ランキングを上げたいので、300〜400位を目指します。今は1000位代なので、なかなか難しい目標ではありますが、何とか上げていきたいなと思っています。

――将来の夢を教えてください。
将来的にはグランドスラムで優勝することが目標です。日本人男子としては、錦織(圭、フリー/同46位)くんの全米オープン準優勝が最高だと思うので、優勝できるように頑張りたいと思います。

――目指すプレーヤー像はありますか?
トップの選手で言えば、(ディエゴ・)シュワルツマン(アルゼンチン/同14位)がすごく好きです。小柄で、性格も僕と少し似ていると思っています(笑) プレースタイルはやや違いますが、シュワルツマンは強靭な体でたくさん走り回ってプレーするので、僕もあんなふうになれたらいいなと思います。コートでの動き方やステップなども動画を見て参考にしていて、“あぁ、これはこんな感じでやっているんだな”と取り入れたりしています。また、(ロジャー・)フェデラー(スイス/同27位)もとても好きな選手なので、止まって打つのを真似してみよう、とか、展開の早さなども参考にしたりしています。あのレベルを真似するのはなかなか難しいですが、できる範囲で取り入れています。



〈武正真一コーチから見た齋藤惠佑〉
惠佑は自分のプレーに対して自信を持っていて、いろいろ考えながらテニスに取り組んでいます。フットワークのリズムなども重視してやっていて、リズム感もよく、柔らかく動けることが彼の魅力です。趣味でピアノを弾いているようで、この間、家に来た時に初めて聞きましたが、結構うまくてビックリしました。そうしたこともリズム感につながっているのかもしれませんね。また、しっかり足を生かしたパワーショットを打てるところも、彼のよさだと思います。
今後の課題としては、試合の中でもっとさまざまなアイデアを出せると、よりよくなると考えています。練習の時にはいろいろなアイデアを出して楽しくプレーできるのですが、試合の中で一つのことに悩み出すと視野が狭くなり、行き詰まってしまうことがあります。展開が一辺倒になる時があるので、もう少し柔軟な視点を持ち、相手に対して冷静に考えられるようになるといいのかなと思います。



研究熱心でさまざまなことを考えながらテニスに取り組んでいる齋藤。軽快なフットワーク、力強いストロークを武器に世界の舞台へ大きく羽ばたいていってほしい。



【プロフィール】Keisuke Saitoh(さいとう・けいすけ) ■プロテニスプレーヤー ■所属:富士住建 ■2001年4月29日生まれ(20歳)、埼玉県北足立郡伊奈町出身 ■身長163cm、体重68kg ■左利き(両手打ちバックハンド) ■プロ転向:2019年12月 ■ATP世界ランキング1055位(2022年3月7日付)、JTAランキング31位(2022年3月8日付)



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写真=テニスクラシック

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