2022.12.28

[追悼]ニック・ボロテリー氏に愛された日本人コーチが語る偉大なコーチの本当の姿＜後編＞「眼、言葉、タイミング、愛情で選手に力を与えている」

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――IMGにニックさんが最後に来たのはいつぐらいでしょうか。

山中「5月ぐらいまで車いすで来て、アドバイスもしっかりしていました。最後までモテようとしていましたよ(笑)　色男です。日本の方にもニックのことをもっと知っていただきたいです。みなさんがどんな風に思っていらっしゃるのか分かりませんが、僕の中では温度差があるような印象です」

――お話を聞くまでボロテリーさんはビジネス色が強い方のような印象でしたが、人情味に溢れていますね。

山中「セリーナ(ウイリアムズ)が来ても、一言一言をしっかり確信を持って話している印象でした。名選手が名コーチになることが、ベストだと思うのですが、そうでなくてもこういう形で指導者になっていく人がいるんだなと思いますね。

ニック・ボロテリーの日本校があったことや(盛田正明テニスファンドの)盛田会長とのお付き合いも長く、日本への愛着もあって、盛田会長とお食事されたことも最後までよく話していました。元々は、マーク・マコーマックさん(IMG創業者)と盛田会長が友人だったこともあり、『日本のテニスを何とかしたい』と盛田会長がマコーマックさんに相談したところ、ニック・ボロテリー・テニスアカデミーがIMGの傘下に入ることもあって、『テニスで何かしたいということであれば、一度見に来てください』と、ニックさんと盛田会長の対面が果たされました。

盛田会長も『マコーマックさんとニックさんという人の力で盛田ファンドはここまで来られたことについて感謝しかない』と言っていました」

――ニックさんのことについて今お伝えしたいことがあれば教えてください。

山中「“愛”“情熱”“本気度”、そして“人”ですね。ニックからのアドバイスのアプローチは明確でした。言った方がいい人、そうでない人、この瞬間は強く言った方がいい、言わない方がいいとか。もしからしたら、(ニックが)ビジネスやお金に走るという時期があったかもしれません。でも、最終的には“テニス人”に戻っていったんだと思います」

Q：テニス人とビジネスのバランスは難しいですね。

山中「正直、ビジネスの方は失敗だったと思いますよ。だからこそ、テニス人に戻れたんじゃないでしょうか。最後の方はお金がなかったと思いますけど、すごく幸せだったと思います。奥様もいて、孤児の子を2人引き取って育てていました。11月のサンクス・ギビング(感謝祭)には、これまでの奥様や子どもたちもみんな集合したようです。それもまた彼の“人”ですよ」

――貴重なお話をありがとうございました。

次ページ　>　【動画】IMGアカデミーが創設者ボロテリー氏の追悼動画を公開

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