2022.12.27

[追悼]ニック・ボロテリー氏に愛された日本人コーチが語る偉大なコーチの本当の姿＜前編＞「錦織圭という存在で日本のテニスが認められた」

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写真:本人提供

ボロテリーを17年間見てきた山中夏雄氏が語る本当の姿

2022年12月4日、91歳の生涯終えたニック・ボロテリー氏。全寮制のテニスアカデミーを初めて導入し、多くのスターを育てるなどテニス界への功績は語り尽くせない。今回は、世界中のテニス選手やファンを魅了し続けてきたボロテリー氏と親交も深かったIMGアカデミーコーチの山中夏雄氏(盛田正明テニスファンド専属コーチ／ヨネックスアドバイザー)のインタビューを前後編に分けて紹介したい。

【動画】IMGアカデミーが創設者ボロテリー氏の追悼動画を公開

テニスはまったくの素人。軍人からテニスコーチへと転身し、1978年に「ニック・ボロテリー・テニスアカデミー」(現IMGアカデミー)を設立したボロテリー氏。ジュニア時代から携わってトップになった選手は数知れず、アンドレ・アガシやボリス・ベッカー、ジム・クーリエ、マリア・シャラポワ、モニカ・セレシュ、ビーナス＆セリーナのウイリアムズ姉妹など、10人の世界ランク1位を育成。2014年には、テニス界への多大なる貢献が称えられ、国際テニス殿堂入りを果たしている。

IMGアカデミーにジュニア時代から現在まで拠点を置いている錦織圭(ユニクロ)は、ボロテリー氏の死去を受けて自身のSNSに「たくさんのモチベーションを与えてくれてありがとうございました。あなたのおかげでたくさんの選手たちが花を咲かせました。僕もその中の1人です。とても感謝しています」と綴り、「いくつになってもテニスに対する愛情、情熱が変わらない姿は見ていてとても愛おしかったです。どうぞ安らかに眠ってください」と偉大な師を悼んでいる。

そんなボロテリー氏の姿を長年間近で見てきたのが山中氏。そこにあったのは、テニスへの愛情や的確な指導、そして人と人とのつながりを大切にする人情味溢れる姿だったと語ってくれた。

――ボロテリーさんの訃報には驚きました。今夏のUSオープンで山中コーチにインタビューした際にはすでに容体はよくなかったのでしょうか。

山中コーチ(以下、山中)「その時にはベッドで寝たきりの状況でしたが、意識はハッキリとしていました。でも、歩かなくなってからは早かった…。意識をなくしてから2週間、何も食べなくなり、そこから水も口にできなくなって5日。それでも最後にお会いした時も呼吸はしっかりしていました。まだ生きる気力に満ち満ちていてすごいと思いました」

――現在のIMGアカデミーの雰囲気はいかがでしょうか？

山中「（プログラムは）普通に動いています。ニックを讃える動画がアカデミーで流れていたり、お花もたくさん届けられています。来年3月には『お別れ会』がアカデミーで予定されています」

次ページ　>　「錦織圭という存在で日本のテニスがIMGで認められた」

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