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2023.09.21

選手情報

車いすテニス・小田凱人の飛躍に近道なし! 熊田浩也コーチ「基本練習こそ成長を一番感じられる」

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Photo by Getty Images

小田凱人が世界1位になれたのは、練習時間の半分以上を占める基本練習


今年6月の全仏オープンでグランドスラム初制覇を成し遂げると、7月のウィンブルドンも制した小田凱人(東海理化)。車いすテニスを始めてわずか7年で世界ランク1位に立ち、2024年のパリ・パラリンピックでも金メダルが期待される。今年最後のグランドスラムとなったUSオープンでは、残念ながら1回戦でグランドスラム単複22勝の大ベテラン、ステファン・ウデ(フランス)に敗れたが、コーチを務める熊田浩也氏はこの結果をどのように捉えるのか。また、昨年4月のプロ転向からどのような練習をこなし、世界トップまで上り詰めたのか聞いた。

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――はじめに今大会の小田選手のシングルスの試合について振り返っていただけますでしょうか。

スコア的にはあっさり(1-6、1-6)したものですが、(小田)凱人がやろうとしていたことが今回できなかっただけで、当然負けは悔しいのですが、この負けがあったから落ち込むということではありません。勝負の世界なので負けることはあります。本人は引きずる部分はありましたけど、ダブルスも切り替えて凱人らしいテニスができている。

――さらに進化するべくトライしていることがあるのでしょうか?

しっかりと前に入って勝負していくというのが凱人のテニス。なので、それをやらずして敗退したのであれば反省すべきですが、やるべきことをやろうとしていたことを評価してそれが上手くできなくて負けにつながったので、そんな日もありますよね。

――ダブルスもレベルが変わってきたなという印象を受けました。全体的にすごくレベルが上がったように思います。

実際に私が、凱人のコーチとなりツアーを見始めたのは去年の4月からだったので、正直に言うとその以前の今のトップの選手たちのプレーをしっかり見たことがなかったんです。今の凱人のテニスが、私の車いすテニス、コーチングのスタートですので前のテニスとの比較はできません。ですが、以前は健常者の育成クラスを担当していました。凱人を指導する時に「車いすの操作は分からないけれど、自分が今まで健常者に教えてきた相手の時間を奪うこと、チャンスを作ってネットプレーでフィニッシュするなどの車いすテニスではない、強いテニスを教えていくよ」というところからスタートしました。

――健常者を教える時にはない迷いはありましたか?
 
この1年、彼を見ながら「こういうところは違うんだな」と私自身も勉強しつつ、反対に凱人の意見も参考にしています。「この時はこうした方がいい」と彼も言ってくれるので、それをアレンジして、2人で話をしながらやってきています。

――この半年でグランドスラム2大会で優勝です。若いとはいえ、進化のスピードが速い。何か飛躍的に伸びた点などを教えてください。

凱人は練習を真面目にするんですね。最初から最後までキッチリやるし、今やってる練習というのはいろんなメディアにも言っていますが、地味な基本練習に時間をすごく費やしているんです。そういう地道な練習の成果が自信にもつながってきます。

――それは健常者の練習を応用してやっているのですか。

練習メニューは健常者と一緒ですよ。健常者のジュニアとやってきたこと、ドリルメニューなどもそうですね。

――しっかり下がって打つことだけではなく、前に行く、ドロップショットを使う、ボレーがある、というのは、以前の車いすテニスでは少なかったように思えます。

彼のストロークは武器になると思うので、その延長となるボレーでフィニッシュするというのはテニスの基本だと思います。車いすテニスでもコートのサイズは一緒なので、主導権を握ればボールは浮いてくる。そこをもう一回落としてラリーするのではなく、相手が逃げてきた時点でポイントを取り切ってしまうのは、やはりネットに近ければ近いほどポイントは取りやすい。そういうところをベースに練習しています。

――さらなる進化を目指すところと基本練習をやるバランスと、どういう割合なのでしょうか。皆さん気になるところだと思います。

逆に他の選手がどんな練習をしているのかというのかわからないのですが、新しいチャレンジというのは、こういう試合(グランドスラム)に出ていくと相手に対策もされるでしょうし、それをされた上で新しく課題が見えてくる。そういう意味で全仏、ウィンブルドンと幸い良い結果(2大会連続優勝)を挙げることができたので今やっている練習、つまり基本練習を変えるという概念はないんです。凱人からこういうのが必要というのがあったり、それが私からあったら導入していくイメージです。


小田凱人を昨年から指導する熊田浩也コーチ

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