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2023.09.18

選手情報

期待のジュニア 小池愛菜を指導する父「勝敗に一喜一憂していても成長につながらない。何が自分たちの目標、成長につながるかが大事」

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「世界一になりたい」という言葉を支える父・陽平さん


今、世界で戦う日本の女子ジュニアで世界ランクトップ10に4人がいる。最高2位を記録している齋藤咲良(MAT Tennis Academy/同5位)や石井さやか(HSS/同6位)、クロスリー真優(東京都TA/同8位)、小池愛菜(同9位)。中でも小池は、他の日本のジュニアとは異色だ。

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齋藤が日本で、石井、クロスリーがアメリカの名門クラブで力をつける中、小池はなんと家族でアメリカに移住。拠点は数々の名選手を輩出してきたアメリカ・フロリダにあるIMGアカデミーだが、メインコーチは父の陽平さんが務めている。まさに女子テニスのレジェンド、ウイリアムズ姉妹を育てたリチャード氏さながらのファミリーテニスだ。

こう聞くと「選手がかわいそう」「毒親だ」と思われるかもしれない。なぜなら勝ち負けにこだわり、うまくいかないことがあると声を荒げる親も少なからずいるからだ。しかし、父・陽平さんは「たかがテニス。人生の一部」と捉え、娘の「世界一になりたい」という言葉を支える。これまでの経緯や練習法について聞いてみた。


――家族でアメリカに移住され、愛菜さんのテニスの練習の拠点をIMGアカデミーに置いた理由を教えてください。

私の仕事でアメリカに来ていたので、気候が暖かいことやコートもいっぱいあるというのが理由です。

――他のアカデミーも見て回ったのでしょうか。

元々、私たち夫婦はテニスコーチをしていて、家族でテニスコートを探してやっていたんです。その状態がずっと続いていて、そのコートがようやくIMGアカデミーに決まったという感じです。

――試合では小池選手にポイント毎に言葉をかけていらっしゃいました。

3歳や4歳ぐらいから見ていて、彼女に何が足りないのかもわかるので、それに対して相手の状況を見ながらベストな選択が何なのかを選んでアドバイスをするようにしています。

――準々決勝では結局今大会を制した選手に敗れました。どのような感想でしょうか。

相手(キャサリン・ホイ/アメリカ/WTA 995位)が、良い状態でしたね。アンフォースエラーが少なく、簡単にポイントが決められてしまったことが多くて、第2セットでようやくボールに変化を加えてゲームをとれるようになったのですが、それでも相手の方がよりミスが少なかった。今日は本当に相手が良かったと思います。
   
――これからステップアップしていくにあたって足りないもの、これから練習していくことは何でしょうか。

これまでテニスの基本をレベルアップすることを重要視していて、フィジカルやフットワークのトレーニングをあまりしてこなかったんです。この1~2年でWTAツアーの上へいくためはそこを鍛えていかなければいけないよねという計画です。

――あえてやらないでいたと。

先にフットワーク、フィジカルを鍛えてしまうと、それに頼ってしまい怪我などが増えると思っていました。あとは身長を伸ばすことが重要だったので、休みをたくさん取るようにしていました。なので、彼女の優れている部分であるボールを打つ感覚を先に鍛え、テニスのベースを作ろうと。フィジカルとかフットワークは後天的に作れるものなので、やろうと思えばすぐに身につけられるものなんですよね。例えば、年齢を重ねてからでも筋肉を鍛えてボディービルダーになられる方もいますし、フットワークを鍛えればすぐに速くできます。しかし、一番大事なところが身についてないとフットワークや力などが生きてこないと思います。

先に基本を重視したことで、フィジカル、フットワークが足りずに、彼女自身悔しい負けをしたことがこれまでも何回もありました。でも、そこでのミスは過程だと捉えていて、最後の目標に行くには何が必要かというのをしっかり見据えて計画を立てて一つ一つを積み重ねることを重要視しています。

――基本を積み重ねるというのはトップの人ほどよく話に出てきます。「基本」のことを教えていただけますでしょうか。

人によると思うのですが、テニスの本質的なところというのは、子供でも大人でも必要な部分ですね。例えばスプリットステップでの着地のタイミングやボールを捕らえる位置、スイングの角度というのは、小さい頃からできていれば良いと思います。

――結果が出ないことに関する不安は誰にでもあると思いますが、その対応はどうされていますか。

選手によっては勝てないことによる不安もあると思うのですが、私たちは今のやり方で「いける!」と信じているので、負けても「もうだめだ」ということにはなりません。試合で何が良くて何がダメだったのかを反省して、明日にはもう練習をしています。テニスのいいところは1試合で何もかもが終わるわけではないこと。今週が終わったら、また翌週に試合があり年間で大会がいくつもあります。例えば、それを詰め込みすぎるとバーンアウト(燃え尽き症候群)してしまう。

こう言っては何ですが、たかがテニスだと思うんです。人生の一部で、他にも重要なところはたくさんあります。家族も重要で、親、生活とか友達もそうです。テニスだけで燃え尽きないように、人として子供たちが成長できるように、信頼される人になるように私はサポートしていこうと考えています。だから私は子供たちに一度も練習しろと言ったことはないです。



娘・愛菜さんを指導する父・陽平さん

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写真=田沼武男 Photos by Takeo Tanuma