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2020.07.22

メーカーズボイス

フェデラーのラケット仕様を紹介! 「フェデラー張りって何 !?」「使用ガット・ストリング/テンション」「ラケットのこだわり」

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返球までの時間を極力削り勝負する
それがフェデラーの戦い方

全豪オープンの取材中、こんなことがあった。
お目当ての試合が終わり、コートから移動していると、前方から大挙してファンがこちらに移動してくるのだ。ちょっと恐怖を覚えるほどの人数。ゾンビ映画なら、街の人Aとしてカプっとやられるやつ。何が起こったんだ? すぐにその理由はわかった。ロジャー・フェデラーの練習コートが開始直前に変更になったため、我先にと急いでいたのだった。

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誰もがフェデラーを一目見たい
みんながフェデラーのことを大好きだ。


グランドスラム20冠、世界ランキング1位在位268週、生涯獲得タイトル103などなどなど、傑出した成績を残してきていることもあるだろうが、何より魅力は切れ味抜群のプレーだろう。パワーテニス隆盛の中、速いテンポを武器にし、様々な種類の打球を操って展開を支配するフェデラーのプレーは、唯一無二と言えるもの。そのプレーに関しては、年齢を経て変化も加えてきている。一つ大きな変化としては、フェイスサイズを変更(2014年、赤黒のPro Staff RF97 Autographで90平方インチからサイズアップ)したことがある。そして、近年はポジションを前にして、より速いテンポでのプレーを見せている。その分、インパクトの難易度は高くなるが、返球までの時間を極力削って勝負する。それにも関わらず、優雅さもあるというのだからすごい。そのフォームはバレエに喩えられるほどである。




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フェデラーのラケット・セッティング
そこには変わらないポリシーがある

唯一無二の稀代のテニスプレーヤー。そのラケット・セッティングはいかなるものか?
ご存じのとおり、ラケットは共同開発者として作り上げた“アンコンタミネイティッド・デザイン<汚染されていないデザイン>”を採用した「Pro Staff RF97 Autograph」である。平均340g、バランスポイント平均30.5cm、フレーム厚21.5/21.5/21.5cm、ストリングパターンは16×19というのが市販スペックだ(使用モデルは公表していないので不明)。




テンションはメインが27kg(約59.5ポンド)、クロスが25.5kg(約56.2ポンド)を基本としていて、「プレストレッチ」(貼る前にストレッチ=伸ばす)をかけてから張り上げるとのこと。そして、「ストリングセイバー」(ノッチ止め)を必ず、上から4本目の中央から左に1、3、5本目、右に2、4本目、そして上から6本目の中央から左に2、4本目、右に1、3、5本目につけている。こちらは、フェデラー曰く“回転量をちょっと増やしたい”ため。さらに、ヨーク部(フェイスの6時部分)のグロメットには、当て革を使用している。こちらは打感をマイルドにする効果がある。

そして、オーバーグリップテープには、ウイルソン「プロオーバーグリップ」のホワイトを使用すると決めている。また、フェデラーはフォアハンドもバックハンドもそれぞれ同じ面でしか打たないというポリシーもある(具体的には相手から見てバックハンドの際に、ウイルソンロゴが正しく見える持ち方)。


縦ナチュラルで早いテンポの戦いは
フェデラーだからこそのもの

そして、今回ご紹介したいのは、フェデラーのストリングである。
彼の場合、メインに「ウイルソン・ナチュラル」、クロスに「アル・パワー・ラフ」を張るハイブリッド張りにしている[両ストリングは、ハイブリッド張りのセット「CHAMPION’S CHOICE DUO」(税抜き7,400円)として発売中]。

ナチュラル・ストリングは、そのパワーやソフトフィーリングが特徴。それをメインに張ることで、大きな飛び、パワーを得るという狙いがあるわけだ。ただ裏を返すと、飛ぶということは、コントロールが困難になるというデメリットもある。それもあって、プロでも縦ナチュラルを嫌がる人が多い (逆にクロスにナチュラルを張るとスピン量が上がり、打球に安定感が生まれる)。その難しいセッティングで、精度を武器とするテニスを展開しているというのだから、驚くべきことである。“フェデラーだからできる”と言っても過言ではない。余談となるが、同じくテンポの速いテニスが真骨頂の錦織圭選手もメインにナチュラル、クロスにエレメントという縦ナチュラルのハイブリッド張りである。彼もまたスペシャルな感覚の持ち主として知られるから、それはそれで納得である。

さて、このハイブリッド張りだが、実はフェデラーがツアーに広めたという経緯がある。今となっては、ツアーでは当たり前の手法なのだから、テニスの進化という意味でもフェデラーの貢献は大きい。きっかけは、サーブ&ボレーで知られるティム・ヘンマンからのアドバイスだったという。





「2002年にハイブリッド張りを使い始めて、スピンとコントロールが向上したんだ。そのころから数々のタイトルを勝ち取れるようになった」とフェデラー。テニスに対して人一倍どん欲な彼がハイブリッド張りをしていて、勝利を重ねている。瞬く間にツアーに知れ渡っていき、プロにとって当たり前の張り方になった。だから、ハイブリッド張りのことを“フェデラー張り”ということもあるわけだ。ちなみに、ハイブリッド張りは、異なる2種類のストリングを張ることを言う。近年では、異なるポリを張る選手が現れてきているのは、おもしろい変化である。

日進月歩のストリング界ではあるが、伸縮率においてナチュラル・ストリング以上の物は、いまだ作れていない。まして、オーガニック・グラス・フェド・カウで本来のナチュラルをと作られた「ウイルソン・ナチュラルガット16(1.30mm)」は、繊維の強さが売り。よりパワーを発揮することはまちがいない。そして「アル・パワー・ラフ(1.25mm)」を加えることで、スピン性能をアップさせる。それがフェデラーのチョイスである。

過去2回でご紹介してきた通り、ウイルソン・ルキシロンのナチュラル・ストリングは、安価ではない。日本人唯一のウイルソン・オフィシャル・ストリンガーである細谷 理さん(神奈川・茅ヶ崎/オンコートラケットオーナー)は、「それだけの価値があるということ。張っている人が増えてきているのは、打っていて良さがわかるからでしょう」と語っている。打ってみれば違いがわかる。そして、そのナチュラルを楽しむ方法の一つが、フェデラー張りである。もし、あなたがフェデラー張りをするなら、メインにナチュラルを貼りたいだろうか? それともクロスに張りたいだろうか? ナチュラルは体験してこそわかるもの。今度の張り替え、あなたのチョイスにフェデラー張りを加えてみてはいかがだろうか?





➡︎Wilson Web Magazineは毎週水曜日更新!
次回(2020/7/29更新)は「Wilson&LUXILON&フェデラー張り試打インプレッション」について 乞うご期待!!

★[Wilson Web Magazineバックナンバー(2011年1月号~2020年3月号)]
https://wwm.tennisclassic.jp/archive/backnumber/index.html

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