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2020.09.02

ギア情報

バージョン13.0はどうなる!? 『プロスタッフ伝説』<歴史を刻んできた名器たち>

ウルトラとスティングの
ミックスが最初の案だった

ジミー・コナーズ、クリス・エバート、ステファン・エドバーグ、ピート・サンプラス、ジム・クーリエ、シュテフィ・グラフ、ロジャー・フェデラー...歴代の世界ランクNo.1となった王者、女王たちに愛されるラケット。これがもし存在していなかったら、テニス界の歴史は変わっていたと言っても過言ではないだろう。

「プロスタッフ<Pro Staff>伝説」は、1982年にプランを立てたところから始まる。

そのプランとは、成功を収めた「ウルトラ」と「スティング」を組み合わせたモデルを作ること。そこに歴代最多となる109勝を誇るジミー・コナーズが開発に加わり、伝説のセント・ビンセント工場で1984年に「プロスタッフミッド(バージョン1.0)」が誕生した。最高のラケットを掛け合わせ、最高のプレーヤーが意見をし、最高の作り手によって作られた。そんなラケットだからこそ、2001年まで、17年間も発売されていたわけだ。




後に明らかになった話であるが、開発に携わったケン・シャーマン氏によると、元々初代プロスタッフは110平方インチをベースとしていて、85平方インチはベースダウン・モデルだったのだという。それが世界中のプレーヤーから愛されることになるだから、おもしろい話である。

そのスペック(85平方インチ、フレーム厚17mm)は、今となっては驚きの数値だが、発売当時はこれが普通のものだった。それよりも重要なのは、フレーム素材にケブラーを使用したこと。グラファイト80%に、引っ張り強度に優れたケブラーを20%加えたことで、最高の食いつき、打球感の良さ、高い衝撃吸収性を実現することができた。そして、フレームサイドに設けられた「PWS<Perimeter Weighting System=周辺加重機構>」も忘れてはいけない。元々は1978年に開発されたテクノロジーで、ボールを捕らえた時のフェイス面の揺れ(面ブレ)を抑える効き目がある。このあと、プロスタッフシリーズには必ず搭載されていくテクノロジーである。
それらが相まった魅力があったからこそ、“プロスタッフらしさ”は形成された。当時、デカラケが人気を博していたことも、逆にその人気を高めたはず。85平方インチは特別な人だけが使うもの。だからこそ、憧れのラケットだったし、そういったラケットだからこそ、工場までこだわるということがあったのだろう。そんな話は、近年ではあまり聞いたことがない。


17年ぶり2代目モデルが
2003年に誕生する

初代プロスタッフをアレンジしたモデル、「Pro Staff Classic 85(プロスタッフ・クラシック)」が1991年に限定本数発売された。これがバージョン2.0にカウントされる。そして、2000年には、ハイパー・カーボンを搭載した「Pro Staff 2000 Limited Edition(プロスタッフ2000リミテッドエディション)」が日本では2000本限定で発売されている(人気が高すぎたため、翌年1000本追加で販売)。だが、これはプロスタッフミッドをベースにしたもの。




バージョン3.0となるのは、2002年に海外のみで発売された「ハイパー・プロ・スタッフ 6.0 85」である。日本では同デザインのモデルが、「ハイパー・プロ・スタッフ 6.1」として95平方インチ、106平方インチが発売となったが、フェデラーが使った6.0 85平方インチは、海外でのみ販売されていた。こちらは伝統のダブルブレード製法に強靭なハイパー・カーボンを使用されていることが特徴だ。





次のモデルは2003年。バージョン4.0「Pro Staff Tour 90(プロスタッフ・ツアー90)」が発売となっている。プロスタッフで90平方インチモデルが発売となったのは、これが初めて。その後の進化のベースとなったモデルと言える。

サイズアップには理由がある。
パワー化が著しいテニス界の中で苦しんでいた、ピート・サンプラス(当時32歳)に、今一度グランドスラム・タイトルを勝ってもらいたい、という思いから、5平方インチ、フェイスサイズを大きくしたわけだ。興味深いのは、スロート部分をざらついた加工にしたこと。それは片手バックのサンプラスが、左手でラケットを引く際に欲しがった感触を実現したもの。後に、フェデラーもスロートの特別な感触を要望している。王者だからわかる感覚なのかもしれない。ただ、残念なことは、このラケットの開発がサンプラスの引退までに間に合わなかったこと。サンプラスは2002年USオープンで優勝したあと、12ヵ月間、ツアーに参加せず。2003年のUSオープンで引退セレモニーが行われている。