ビッグバンガー3兄弟の長男ルキシロン「オリジナル」は現代ポリの開祖である「オリジナル(Original)」という単語を、英和辞典で引くと「根源の」「最初の」「起源の」といった意味が最初に出てくる。しかし、意味はそれだけではない。「独創的な」「創意に富む」「奇抜な」「原型」といった意味もある。1991年に誕生したルキシロン『オリジナル』、それは、ビッグバンガーテクノロジー(ポリと異素材を組み合わせる独自技術)として初の製品であるし、独創的なポリ・ストリングとも言えるだろう。「ポリ・エーテル・エーテル」は、熱可塑性樹脂に分類される素材。加工しやすいため、製品差が生まれづらく、疲労にも熱にも強い非常に高価な素材である。そして「フローロ・カーボン」は高強度や耐薬品性、耐熱性といった特徴を持っていて、耐久性が問われる釣り糸などにも使用されているもの。2つを組み合わせることで、まったく新しいポリ・ストリングを生み出したのだから「独創的」という意味にも合致するストリングである。1997年全仏で優勝を果たした無名選手が使用していたことから「オリジナル」は一気に広まったさてルキシロン『オリジナル』を使ったスーパースターがいる。グスタボ・クエルテン(ブラジル)である。活躍してきて契約へとなるのが普通だが、ルキシロンが1996年末にクエルテンと契約した時、彼はまだ無名選手の一人だったという。当時のランキングは88位なのだから、今の感覚ではそれなりに名前が知られているのでは? と思うかもしれない。ところが今のように、ネットやSNSはそこまで発達していないし、ましてテニスの試合は生の大会かテレビでしか見られない時代だから、知られていなくても仕方ないのだ。
ツアーで戦うため、コストパフォーマンスに長けたストリングが欲しいというクエルテンの要望に対して、ニコが提供したのは、当時まだメジャーでなかったポリエステル・ストリング『オリジナル』だった。そのクエルテンが、半年後、全仏オープンで優勝してしまうとは誰も考えていなかっただろう。ご存じ“ルキシロン・ショット(クエルテンの必殺技で、速度の速い超アングルショット。ルキシロンでしか打てないと言われたところから名付けられた)”を操って、特に“クレーコート”で強さを見せたクエルテン。歴史を知るテニスファンは、その活躍ぶりを覚えていることだろう(ちなみに、2000年、2001年でもクエルテンは全仏優勝を果たしているが、その時はルキシロン「アルパワー」を使用している)。
「長時間のラリーでも切れない、そして何よりも長時間のラリーでもズレが少ない」、それが、クエルテンによるルキシロン『オリジナル』の感想だ。ルキシロンを使用するクエルテンが勝利したところから、特にATPのプロたちの間に一気にルキシロンが浸透していく (それが現在の高い使用率に繋がっている)。中でも顕著だったのは、スペイン勢が使用していたこと。ファン・カルロス・フェレーロを筆頭に、ダビド・フェレール、ニコラス・アルマグロ、フェリシアーノ・ロペスといった選手たちが使用したのだ。
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