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2022.10.25

選手情報

〈フェデラーGS20勝プレイバック18〉ナダルとの決勝を制し、5年ぶりのグランドスラム優勝! 35歳で見事なカムバックを果たす/2017年全豪オープン [リバイバル記事]

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フェデラーが獲得したグランドスラム20勝(全豪オープン6回、全仏オープン1回、ウィンブルドン8回、全米オープン5回)を一つずつプレイバック(写真は2017年全豪オープン)

2017年全豪オープン
6年ぶりとなるナダルとの決勝を制し、グランドスラム18勝目!

9月23日、イギリス・ロンドンにて開催されたレーバーカップを最後に現役引退したロジャー・フェデラー(スイス)。フェデラーがこれまで達成したグランドスラム優勝20回(全豪オープン6回、全仏オープン1回、ウィンブルドン8回、全米オープン5回)を、当時の写真とともに振り返る。

※『テニスクラシック・ブレーク』2017年3月号に掲載したものを再編集した記事になります

【動画】ナダルとの死闘を演じた2017年全豪オープン決勝戦はこちらをチェック!

【当時の写真】練習風景や優勝を決めた瞬間、フェデラーや対戦相手のプレー写真などはこちら

この全豪オープン前年の2016年、“ビッグ4”として長らく男子テニス界のトップの座にいたフェデラーとラファエル・ナダル(スペイン)がそれぞれシーズン途中で戦線を離脱。フェデラーはヒザのケガからの復帰を目指して7月のウィンブルドン準決勝を最後に、ナダルは左手首の療養のため10月の上海マスターズ2回戦を最後にツアーから離れていた。そして年末、フェデラーは自らの練習風景をオンラインで中継し、一方のナダルはかつての世界No.1であり、母国の先輩であるカルロス・モヤをコーチに迎えることを発表。それぞれ新しいシーズンを迎えていたが、フェデラーは前哨戦などに出場せず、この全豪オープンをツアー復帰戦とし、ナダルは前哨戦のブリスベン大会準々決勝でミロシュ・ラオニッチ(カナダ)にフルセット負けを喫するなど、ともに不安含みで大会入りしていた。特にフェデラーは世界ランキングも14年ぶりにトップ10から滑落し、35歳という年齢の面からも、2012年ウィンブルドン以来となる18回目のグランドスラム優勝は険しい道だと思われていた。

こうした状況だったことから、この全豪オープンは、前年のツアー最終戦で優勝しついに世界1位となった第1シードのアンディ・マレー(イギリス)や第2シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)、そして2014年大会覇者で第4シードのスタン・ワウリンカ(スイス)といった選手を中心に争われると予想された。しかし、いざ大会が始まると、ジョコビッチが2回戦でワイルドカード(主催者推薦)のデニス・イストミン(ウズベキスタン)にフルセットで敗退、またマレーも4回戦でサウスポーのミーシャ・ズベレフ(ドイツ)に1-3で敗れるなど波乱の展開に。そうした中で、きっちりと勝ち上がっていったのがフェデラーとナダルだった。

今大会、2002年USオープン以来となる二桁台の第17シードとして臨んだフェデラーは、1回戦で予選勝者のユルゲン・メルツァー(オーストリア)に1セットを取られながらも勝利を収めると、3回戦では第10シードのトーマス・ベルディッチ(チェコ)を圧倒。完全復活を印象づけると、続く第5シード・錦織圭との4回戦を5セットに及ぶ激戦の末に切り抜けたことで、自信を確かなものにした。準々決勝ではミーシャ・ズベレフを3-1で下すと、同胞ワウリンカとの準決勝では、先に2セットを連取しながらも2セットを取り返され、フルセットにもつれる接戦となる。あと一歩のところまで追い詰められるも、ワウリンカが「(フェデラーはツアーから)半年間離れていたが、むしろ以前よりも強くなっているような感じさえする」と語っていたように、要所で勝負強さを見せて勝利。2015年USオープン以来となるグランドスラム決勝への切符を手にした。

一方、第9シードとして臨んだナダルも1・2回戦を快勝。3回戦では、自ら「彼は僕らのテニス界の未来」と称賛する19歳のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)とのフルセットに及ぶ戦いを制し、簡単には時代を譲らないことを示すとともに、モヤコーチとのタッグがいい方向に進んできたことを証明した。続く準々決勝では第6シードのガエル・モンフィス(フランス)を3-1で破り、そして準決勝ではグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)に対し、一度は窮地に追い込まれるも5セットの接戦をものにして、決勝へ進出した。

こうして大方の予想を裏切る形で“フェデラー×ナダル”というクラシックマッチが実現した決勝戦。2人のグランドスラムでの決勝における対戦は、2011年の全仏オープン以来6年ぶりのこと。決勝の前に、フェデラーは「素晴らしい気持ちだ。夢にも思わなかったよ」「たぶん、自分がナダルの一番のファンさ。彼は本当にすごい選手だからね」と話し、一方のナダルも「ロジャーとこの大舞台で戦えるのは名誉なこと。これ以上、幸せなことはないよ。彼はよき友人であり、そして最高の人。尊敬しているんだ」とお互いをリスペクトしつつも、ともに対戦を喜んでいた。

「たとえ5ヶ月間、歩けなくなってもいい。すべてを出し切る」

フェデラーの対ナダル戦の対戦成績は過去11勝23敗で、そのうち全豪オープンに限れば0勝3敗(※全豪オープンを含めた屋外ハードコートでの対戦成績はフェデラーの2勝8敗。室内ハードコートでは5勝1敗)と、意外にも大きく負け越していたフェデラー。それだけに今回にかける思いは強かったのだろう。フェデラーが「たとえ5ヶ月間、歩けなくなってもいい。すべてを出し切る」とまで言った決勝は、お互いに一歩も譲らない激闘となった。

第1セット、徹底的にフェデラーのバック側を攻めるナダルに対し、フェデラーは速いショットで先に展開していく。ゲームカウント3-3とお互いのサービスキープが続いた第7ゲーム、ナダルのサービスゲームで、チャンスと見るやすかさずネットに詰めてポイントを決めたフェデラーがブレークに成功。その後はお互いにサービスゲームをキープして、まずはフェデラーが第1セットを6-4で取る。


第2セットに入ると、ややパフォーマンスの落ちたフェデラー。ストロークのショットが全体的に短くなり、ナダルに攻め込まれてしまう。また、ダブルフォールトなどのミスも出てしまい、第2・第4ゲームと自身のサービスゲームを立て続けに落としてナダルに0-4とリードを許す形に。それでも攻撃し続ける姿勢をやめなかったフェデラーは、ナダル・サーブの第5ゲームをブレーク。しかしそれ以上の反撃はできず、その後はお互いにサービスキープし、第2セットはナダルが6-3で取り返した。

第3セット、フェデラー・サーブの第1ゲーム。再び流れを引き寄せたいフェデラーは40-0と早々にゲームポイントを迎える。しかし、ここからセカンドサーブをナダルに攻められ、デュースにもつれてしまう。その後、フェデラーにミスが出てナダルに3回アドバンテージを取られるも、いずれも自身のサービスエースで切り抜けたフェデラー。するとナダルにミスが出て、フェデラーがゲームポイントを迎える。ここで、フェデラーは軌道の高いボールとライジング気味の速いショットを織り交ぜてナダルのミスを引き出し、やっとの思いでサービスキープ。すると、続くナダル・サーブの第2ゲームではフェデラーがカウンターやスピードボールなどを駆使し、展開を早くして猛攻を仕掛ける。30-40とブレークポイントを迎えた場面で、フェデラーがリターンで攻めると、ナダルがフォアハンドをミス。あっけなく第2ゲームをフェデラーがブレークすると、次の第2ゲームをしっかりキープしてゲームカウント3-0とリードする。こうして一気に流れを引き寄せたフェデラーは、その後も攻撃の手を緩めず、もう一つナダルのサービスゲームをブレークし、第3セットを6-1で奪取した。

第4セット、序盤から激しい攻防戦となりサービスキープが続く。ゲームカウント2-1とナダルがリードして迎えたフェデラー・サーブの第4ゲーム、フェデラーが2本立て続けにミスして0-30に。後がないナダルは、次のポイントでここぞとばかりにフォアハンドをダウン・ザ・ラインに打ち込み、0-40と3本のブレークポイントを握る。フェデラーはサーブで攻めて1本しのぐが、その後、ネットに出たフェデラーがボレーをミスし、ナダルがブレークに成功。その後も幾度となく激しいラリーが続くが、お互いにブレークするには至らず、第4セットはナダルが6-3で奪い返した。

第4セット終了後、メディカルタイムアウトを取って一時コートから離れたフェデラー。足の具合が懸念されたが、コートに戻ってきたフェデラーはサーブの位置につくと、両腕を回したりジャンプするなど“まだまだやるぞ”という姿勢を見せていた。しかし、フェデラーのサーブから始まったファイナルセットの第1ゲームでは、フェデラーのファーストサーブが入らず、セカンドサーブになるとラリーからナダルに厳しいところを攻められ、0-30、15-30、15-40、30-40と常にリードされる展開に。結局ナダルがブレークに成功。その後、1ゲームずつお互いにサービスキープする。フェデラーは第3ゲームのチェンジエンドの際、太もものマッサージを受けていたが、その後も華麗なフットワークを見せ、ナダルに一歩も譲らず展開を早くして攻撃をし続けていく。

お互いにサービスキープが続き、ゲームカウント3-2とナダルがリードして迎えたナダル・サーブの第6ゲーム。ついにナダルにミスが出て、フェデラーが2度のデュースの末ブレークに成功。続く第7ゲームは、サーブで主導権を握ったフェデラーがラブゲームでキープし、ゲームカウント4-3と一気に逆転する。こうしてフェデラーがナダルにプレッシャーをかけると、ナダル・サーブの第8ゲームではナダルがフォアハンドのミスやダブルフォールトを犯し、0-40とフェデラーに3回のブレークチャンスが訪れる。ここからナダルが挽回し、2度デュースを繰り返すものの、最後はフェデラーの鋭いバックハンドのクロスへのリターンに対し、ナダルのフォアが返らず、フェデラーがブレークに成功。5-3とリードする。

続く第9ゲーム、逆に今度はナダルがバックハンドのクロスへのリターンエースやバックボレーを決めて、フェデラーは15-40と2本のブレークのピンチ。しかし、ここからフェデラーはセンターへのサービスエース、フォアハンドの逆クロスを決めてデュースにする。さらに、ナダルのフォアハンドのリターンがアウトとなり、ついにフェデラーがチャンピオンシップポイントを迎える。これは逃したものの、次のポイントでコーナーにサービスエースを決めて、再びチャンピオンシップポイント。この場面でフェデラーが放ったフォアハンドのクロスが、“チャレンジ”による判定に持ち込まれる。そして、その映像が“IN(イン)”を証明すると(ボールの跡がライン上に乗っている)、フェデラーはグッとため込んでいた感情を爆発させ、喜び、コートに顔をうずめて泣いた。

決勝戦後、フェデラーは「去年はケガもあったけど、素晴らしいカムバックだった。僕たち2人とも、この大会の決勝で会えるとは思ってもいなかった。4〜5ヶ月前には想像もできなかったこと。ラファが準優勝できて僕もうれしい。テニスはとても厳しいスポーツで、引き分けというものはない。もし引き分けがあるなら、ラファと分かち合ってもいいと思う試合だった」と喜びのコメント。これでフェデラーは5度目となる全豪オープンのタイトル、そして自らが持つ記録を更新する、男子史上最多となる18個目のグランドスラム・タイトルを獲得し、35歳という年齢で見事なカムバックを果たした。

●グランドスラム・タイトル獲得数(2017年当時)
18個:ロジャー・フェデラー(スイス)
14個:ラファエル・ナダル(スペイン)、ピート・サンプラス(アメリカ)
12個:ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ロイ・エマーソン(オーストラリア)
11個:ビヨン・ボルグ(スウェーデン)、ロッド・レーバー(オーストラリア)
※この後、ナダルが22個、ジョコビッチが21個のグランドスラム・タイトルを獲得し、2022年現在ではフェデラーは3番目につけている

【2017年全豪オープン/フェデラーの試合結果】
決勝/対R.ナダル(スペイン) 6-4 3-6 6-1 3-6 6-3
準決勝/対S.ワウリンカ(スイス) 7-5 6-3 1-6 4-6 6-3
準々決勝/対M.ズベレフ(ドイツ) 6-1 7-5 6-2
4回戦/対 錦織 圭 6(4)-7 6-4 6-1 4-6 6-3
3回戦/対T.ベルディッチ(チェコ) 6-2 6-4 6-4
2回戦/対N.ルビン(アメリカ) 7-5 6-3 7-6(3)
1回戦/対J.メルツァー(オーストリア) 7-5 3-6 6-2 6-2

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写真=田沼武男、山岡邦彦(NBP)