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2020.02.05

選手情報

車いすテニス・田中愛美選手インタビュー「夢の舞台まであと少し」

一番はパラリンピックに出場できますように。この半年でトップ8の選手への勝利を増やしたいし、何よりやりたいことをしっかりできるように、と初詣でお願いしました。選手でのことばかりですね(笑)」――1996年生まれの“年女”の田中愛美(ブリヂストン)にとって、2020年は言わずもがな特別な年である。世界ランキング14位(1月27日付)、パラリンピック出場圏内にいる田中だが、「しっかりポイントを稼いでランキングをキープしたい」と気を引き締める。夢の実現まで、あと少しである――。

Profile
田中 愛美 Manami Tanaka

■車いすテニスプレーヤー
■1996年6月10日、熊本県生まれ。中学から硬式テニスを開始。高校1年の冬、事故のため車いす生活に。退院と同時に車いすテニスの練習を始めていく。2016年「車いすテニス世界国別選手権」で日本代表に選出。2020年の東京パラリンピックで活躍が期待される。

チェアを操作しながらのプレー。スムーズにやっているように見えるが、実は非常に高度な技術が必要

単にチェアを操作して打っているだけではなく
走り方の緩急や視線までも使って相手と戦う
「車いすテニス」の難度は非常に高い

――一般的な車いすと競技用の車いすでは、形状が異なりますね。

競技用のほうが、動きやすいですね。旋回性が高くて、体を少し動かすだけでも回ってしまいます。例えばサーブなら静止した状態で打ちたいですが、普通にやったら前後にも動くし、横にも回ってしまう。ジュニア選手や初心者の方が苦労するポイントです。

――選手側から見た「車いすテニス」の注目点とは?

健常者のテニスとの一番の違いは、車いすテニスでは2バウンドまで拾えるということ。その分、選択肢が増えるし、プレーの幅も広がるので意識すると楽しめると思います。テニスに詳しくはないという人は、日本人選手は特に機動力がある選手が多いので、守備力を見てほしいですね。“ギリギリ届いた”、“あのボールを返せるんだ!”というところを見てもらえたら、障碍者スポーツの見方も変わるんじゃないかなと思います。それと、すごいと思ったら拍手してもらえたらうれしいです。選手にとって励みになります。「すごい」という小声でも、選手はけっこう聞こえていて「フフフ」と笑顔になったりするんですけどね。疲れた時に、ぜひ声援いただけたらうれしいです。

――トップ選手のチェアワークは、どんなところで勝っているのでしょうか?

車いすだと、ターンの際に、相手に背中を向けなければいけません。(トップの選手は)そこでのポジションの取り方、隙を見せない作り方がうまいですね。相手に狙いどころを迷わせる、考えさせるのです。上地選手と一緒に練習してもらった時も、視線の使い方をアドバイスいただきました。例えば、ターンの際、視線を使って『右側を守ろうとしている』と見せるのです。相手がそのコースを避けてきたら対応しやすくなる。あとは、ボールとの距離感の微調整ですね。トップ選手になるほど、打点が一定しています。それと、車いすでの移動にして止まったりしない。加速と減速を上手く使って、一気に走らせるなどしていいポジションに入るんです。

――初歩的な質問ですが、ターンは、どうやるものなのですか?

ターンは、主に押すか引くかの2種類です。ほとんどの選手は引いてターンしています。回りたい方向を引くんです。操作は基本、片手です。健常者に比べると、どうしてもラケットの可動域が小さくなりがちなので、スイングしながらターンで補っていたりします。

――わずかな動作で動いてしまう。その操作をしながら、ボールを打つわけですから難度は高いですね。

健常者のテニスの場合は、横に動く際も車いすのようにターンはしないし、視線も切らないですね。だから安定しやすいですが、車いすではどうしてもターンが必要で、視線を切るケースも生まれるのでそこが一つ難しいですね。それとダッシュしたら、上半身が前傾しやすくなるので、視界の上下のブレも大きくなる。すると距離感も変わり、ミスにつながる。軸を保つというのは、チェアワークをスムーズにするためにも大切です。難しさというのは、細かく言うといろいろありますね(笑)


2月1日、開催された「ブリヂストン車いすテニス練習会in小平」。これは田中選手発案で実現したもので今回が2回目。「ジュニアの選手たちとテニスをしていると目に見えて上達がわかる。遠征が続いて詰まってしまっている私もリフレッシュになるし、何よりエネルギーをもらうことができます」と語るなど、田中選手にとっても大事な機会となっている

取材=広瀬俊夫、写真=石塚康隆  取材協力=ブリヂストン