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2020.05.30

大会情報

NY便り「USオープン開催の決断を迫られるUSTA」

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写真=石塚康隆 Photos by Yasutaka Ishizuka

5月28日、USTA(全米テニス協会)のCEO、マイケル・ダウズ氏は、『テニスチャンネル』のインタビューに応じ、USオープン開催の可能性について答えた。

ダウズ氏は、医療のアドバイザースタッフと検討しているとしたうえで、「6月中旬までには決断をしなければいけない。いろんなシナリオを考えている」と発言した。

ニューヨークの新型コロナウイルス感染者数は減少傾向が見られており、それを鑑みての発言だろう。それでも、8月25日から開催予定のUSオープンについては、まだいくつもの壁がある。
その一つに挙げられるのが、“グランドスラムの規模の大きさ”だ。通常のツアーと異なり、グランドスラムには単複に出場するATPとWTAの選手のほか、国枝慎吾選手や上地結衣選手ら車いすテニスの選手、さらにはジュニアプレーヤーも会場に訪れる。それゆえ、グランドスラムとなれば、試合数や選手の多さは、他のツアー大会の比ではない。加えて、大会を支えるスタッフがいることを考えると、運営の新型コロナウイルス感染拡大のリスク回避がどこまで可能なのかは疑問が残る。
そして、忘れてはならないのが、“渡航者の規制緩和”だ。ニューヨーク州のクオモ知事は、アメリカ四大スポーツ(MLB、NFL、NBA、NHL)と同様に、USTAのプロに対して、州内で練習再開することを認めた。これは、USTAがニューヨーク市に対して、ビリー・ジーン・キング・ナショナルテニスセンターを新型コロナウイルス対策として提供したことも関係しているだろう。しかし、それと海外からの渡航者に関する規制緩和は、また国の問題。この高い壁の行方が、開催を左右すると言っても過言ではない。
もちろんUSTAもそれを承知している。だからこそ、今年の開催を諦めたウィンブルドンや9月下旬に開催を延期した全仏オープンと比べると、開催決断のスピードが遅いとの見方もある。

延期という選択肢もゼロではないが、アメリカの四大スポーツの放映が重なってしまうため、簡単に延期することもできない。もちろん、USオープンのテレビ放映権料も大きな収入源となっていることもある。そんなアメリカの事情をわかっていたため、全仏オープンは独自に日程を延期する素早い決断を見せたのという見方もある。

一つ確かなことは、開催を予定している8月、9月のことは誰にも分からないということ。西海岸での開催の噂も飛び交う中、5000万ドルの財源という、この大会を簡単には諦めることはできない。いずれにせよ、6月中旬に最終的な決断をするというダウズ氏の発言に今後も目が離せない。

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