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2022.03.14

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大坂なおみへの“最低発言”、21年を経て繰り返された悲劇 [BNPパリバ・オープン]

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写真提供:ゲッティ イメージズ

一人の言葉で集中不可能な状態に陥ってしまった大坂

「なおみ、あなたは最低よ」
21年を経て、またもインディアンウェルズで、観客の罵声、悪口が選手を傷つけることになった。
現地3月12日、「BNPパリバ・オープン」(アメリカ・インディアンウェルズ/WTA1000)女子シングルス2回戦が行われ、大坂なおみ(フリー/世界ランク78位)は、第21シードのベロニカ・クデルメトワ(同24位)に0-6、4-6で敗戦。その第1セットで冒頭の罵声を浴びた大坂は涙をこらえながらプレー。しかし、良いプレーをするだけの集中力を割くことは到底できなかった。

【SNS】大坂なおみを「素晴らしい選手」と語ったクデルメトワ

テニスを見ている方ならご存じのとおり、試合後、オンコート・インタビューが行われる場合は、勝者のみである。ところが、大坂はコート上で感じた思いを語るために、苦しい中でマイクを持った。
「こんにちは。私はみんなにただありがとうって言いたかったの。カメラで十分泣いた気がします。正直なところ、以前にも罵声を浴びたことがあるのですが、あまり気にならなかったんです。でも、ここで罵声を浴びせられた。セリーナとビーナス(ウイリアムズ)がここで罵声を浴びているビデオを見たことがあるんですが、もし見たことがなければ見るべきです。なぜかわからないけど、その映像が頭の中に入ってきて、何度も再生されたよ。泣かないようにしているのですが、ただ『ありがとう』、『おめでとう』と言いたかったんです(ベロニカ)。ありがとうございました」。

罵声に対する批判ではなく、諭すかのような言葉。言葉の暴力に対して知性で返すかのような、その言葉に観客席からは大坂を勇気づける拍手が贈られた。

大坂がいう“ウイリアムズ姉妹のビデオ”。それは2001年大会で起きた悲劇である。
同年の大会。セリーナは準決勝で姉ビーナスと戦う予定だっただが、姉は足の故障のために試合直前に棄権する。不戦勝で決勝進出を決めたセリーナはキム・クリスターズ(ベルギー)を倒して優勝。本来であれば称えられるべき優勝者に降り注いだのは、罵声や人種差別的発言だった。観客たちは、準決勝でのビーナスの棄権を、セリーナの体力を温存させるための策だと勘ぐったわけだ。
「(あの時)観客の99%は白人で、私にブーイングを浴びせた。人種差別的発言もあった」とセリーナは当時を振り返っている。

“2度とインディアンウェルズには出場しない”と姉妹はボイコットを続けていたが、セリーナは2015年大会で、ビーナスは2016年で大会復帰を果たしている。

テニスの観客は、教育水準が高く、比較的収入が高い傾向があると言われている。だからこそ、高額なスポンサーが大会、選手、テレビ放送に付き、テニス界は回ってきているわけだ。収入がいいから人がいいわけではない。だが、貧困と犯罪には密接な関係があるのも事実だ。新型コロナウイルスによるパンデミックによって、アメリカの貧富の差は広がっていると報告されている。そういった背景も、今回の罵声につながっているのかもしれない。

筆者が子供時代の話、種目が異なるが、日本のプロ野球(特に巨人・阪神戦)では、ヤジ合戦が行われていた。文句を言い合う場かと思うかもしれないが、それとは趣旨が違う。自チームを愛し、プロ野球を愛し、試合をより楽しむための言葉である。言ってみればウィット(機知)に富んだ言葉。だからこそ、相手のヤジを聞いて思わずクスッと笑ってしまう。そんなことが多かった。

今回の一件、選手側の過剰反応だと見る人もいるだろう。ヤジ合戦をやればいいだなんてことではないが、選手に向ける言葉には“愛があってほしい”と思う。どうせならその言葉でよりスポーツを楽しむことができる。そんなものであってほしいと思う。

(編集部・広瀬俊夫)

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