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2023.07.24

選手情報

"U13とU11の世界選手権"と呼ばれる「ダブボウル」。大会前に開催されるトレーニングキャンプについて紹介

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次世代のスター発掘で業界関係者が集まる「ダブボウル」の大会前トレーニングキャンプを紹介


クロアチア・ドゥブロヴニクで毎年行われ、"13歳以下と11歳以下の世界選手権"とも呼ばれる「ダブボウル」。昨年も同大会を取材したが、今年は主に大会前に行われるトレーニングについて紹介する。大会主催者がこの大会を作ったきっかけ、大会に対する思いについてもインタビューした。

【画像】「ダブボウル」の会場の様子やドゥブロヴニクの町並みなどすべての写真を見る!

■トーナメントの主催者パスコ・バロビッチ氏「クロアチアに『オレンジボウル』を」

「ダブボウル」はドゥブロヴニク・テニスセンターで行われる。同センターは以前プロテニスプレーヤーを目指していたパスコ・バロビッチ氏がディレクターを務めており、通常はテニスアカデミーが運営されている。

10歳の頃に戦争が起こり、コートのそばに爆弾が落ちる中でテニスラケット一つ握りしめ練習をしたというパスコ氏。プロを目指している子供たちの間で、アメリカで行われる世界的な大会「オレンジボウル」について話題となっていたが行くことは叶わなかった。

経済的な理由から17歳でテニスコーチの仕事をはじめたパスコ氏は、自身のようにオレンジボウルに行きたくても行けない子供がクロアチアでも活躍できる場所を作り、多くのスポンサーやエージェントの目に留まるようなトーナメントを作りたいと考えてできたのが「ダブボウル」の始まりだと言う。

開催後も身近にいるコーチや参加者の意見を聞きながら改善を繰り返し、トーナメントを作り上げてきた。その努力もあり、スタートして8年で世界65ヵ国から1000人以上の選手が出場。現在ではフランスで行われる世界大会「Les Petits As(プチザス)」との連携が行われ、ダブボウルの13歳以下優勝者には同大会へのワイルドカード(WC)が与えられることとなった。

※プチザスは14歳以下の世界有数のビッグトーナメント。将来有望な選手が出場する大会で、過去にはロジャー・フェデラー(1995年ベスト16)やラファエル・ナダル(2000年優勝)、ノバク・ジョコビッチ(2001年ベスト8)、アンディ・マレー(2001年準優勝)の長年男子テニス界を牽引してきたBIG4が出場。最近ではカルロス・アルカラス(2017年ベスト16)とホルガー・ルーネ(2017年ベスト4)が組んだダブルスの動画がSNS上で広がっているが、それもプチザスに出場した時のものである。


ディレクターのパスコ氏が常にコートで選手達にコーチングしている。

●ジョコビッチのコーチであるイワニセビッチ氏によるキャンプを開催

ドゥブロヴニク・テニスセンターでは、ジョコビッチのコーチとして有名なクロアチア人のゴラン・イワニセビッチが5年間連続でキャンプを行ったことでも有名になっていった。

現在はITFの大会を開催し地元の選手たちに国際的な試合を行うチャンスを提供し続けている。また同センターでは常時「テニスクラブラグサ」というテニスアカデミーを開催しており、6歳からプロフェッショナルまで幅広いトレーニングを行っている。

■11歳以下と13歳以下の世界大会「ダブボウル」について

11歳以下と13歳以下2つのカテゴリーで開催されるダブボウル。過去にはフィリピンのアレクサンドラ・エアラ(ラファ・ナダル・アカデミー所属。2022年USオープンジュニア女子シングルス優勝)も11歳以下のカテゴリーに出場し優勝を収めている。

13歳以下の部で優勝するとフランスの「プチザス」に出場するためのWC(14歳以下)を得ることができる。「プチザス」のWCは唯一ダブボウルにのみ認められており、その他ダンロップのスポンサー契約(昨年はヨネックスだった)やアメリカ・IMGアカデミーでのトレーニングなど様々な特典が付く。

主催者であるパスコ氏が願った通りに認知度も高まり、次世代のビッグスターを発掘しようと多くのスポーツエージェントやメーカーが足を運び、才能ある選手にスポットをあてる国際的な大会となった。出場資格については特に決められた規定がないため、出場を希望する場合は主催者に是非問い合わせてみてほしい。

★ドゥブロヴニク・テニスセンター
info@tenisdubrovnik.com

■大会前に行われるトレーニングキャンプについて

ダブボウルの前には、試合の準備として一週間のトレーニングキャンプが用意されている。トレーニングは朝9時から12時および15時から17時半の2セッション。午前はコートによってボレー、サーブ、ストローク、スマッシュなどテクニックごとにコートを分け、15分でコートを移動する。午後はマッチプレーを中心に戦術やメンタル面の強化を行う。

コートによってテクニックを分けることで不得意な分野を把握し克服していくことができる。そして午後は午前に練習したテクニックを使いながら試合にどう生かすかを学ぶことができるため、非常に効果的なトレーニング方法だと感じた。

※トレーニングキャンプの費用:550ユーロ(月曜から金曜。水曜は午前のみ)半日なら450ユーロ。1日単位で参加したい場合は110ユーロとなる。選手とコーチの比率は1コートにつき1人のコーチと選手4人。


午前のうち1時間はフィットネスに充てられる。クラブの隣にあるサッカー場にて。

■クロアチアでダブボウル以外のローカルのトーナメントに出場するには?

折角クロアチアまで来るのだから、他のローカルトーナメントに参加したい選手もいるだろう。クロアチアではローカルのトーナメントに出場するには身体検査を含めクロアチア語の書類による申請が必要となり手続きは煩雑だ。

もしローカルのトーナメントにも出場したいという場合は、早めにドゥブロヴニク・テニスセンターに問い合わせることをおすすめする。手続きのサポートをしてくれるそうだ。

★ドゥブロヴニク・テニスセンター
info@tenisdubrovnik.com

■話題の「テニスリトリート」として親も楽しめるキャンプ

テニスをすると寿命が延びるとも言われており、このところ「テニスリトリート」としてテニスとバケーションを目的にテニスアカデミーなどを長期で訪れる人も増えてきている。

ドゥブロヴニク・テニスセンターでは大人向けのプライベートレッスンも行っており、子供の帯同で訪れた両親がテニスをしている姿を頻繁に見かけた。テニス好きの家族であれば、全員で楽しむことが出来るだろう。

またドゥブロヴニクの街自体がとても魅力的であり、見どころ満載なオールドタウンや美しいビーチなど訪れる場所に事欠かない。おいしいレストランも充実しており隣国であるボスニアの料理なども楽しむことが出来る。夏の家族旅行としてもおすすめだ。

※プライベートトレーニングの費用:50ユーロ/1時間

■主催者の思いが詰まったスペシャルな大会

クロアチアで6月に行われるスムリクバボウルと同様に、ダブボウルもテニスだけではない主催者やコーチたちの思いが詰まった大会だ。パスコ氏は大きなモールがないこの場所にはお金を使う以上のものがたくさんあると言う。確かにここには美しいビーチや新鮮な空気、気軽にスポーツを楽しむ文化が根付いている。

自然の恵みを存分に感じながら世界レベルのテニスに身を置くことができる同センターのキャンプやトーナメントは、子供だけでなく親たちにとっても素晴らしい経験となることだろう。

ダブボウル公式SNSアカウント
★Instagram ★Facebook 

参照
ダブボウルに関する過去の記事
テニスのジュニア世界大会、“11歳以下・13歳以下の世界選手権”とも呼ばれる「ダブボウル」を紹介〈前編〉

テニスのジュニア世界大会、“11歳以下・13歳以下の世界選手権”とも呼ばれる「ダブボウル」を紹介〈後編〉

スムリクバボウルに関する過去の記事
テニス以上の何かが得られる! アルカラスやティエムも出場した10歳以下のジュニア世界大会「スムリクバボウル」について徹底紹介!〈前編〉
テニス以上の何かが得られる! アルカラスやティエムも出場した10歳以下のジュニア世界大会「スムリクバボウル」について徹底紹介!〈後編〉

ダブボウル大会サイト

文/山根ゆずか

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写真=本人提供