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2023.09.28

選手情報

中山芳徳・ナショナルジュニア女子ヘッドコーチ、トップ50の壁を突き破るためには「うまくいかないことにどう向き合い、自分の伸びしろを見い出せるか」

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ナショナルジュニア女子ヘッドコーチ・中山芳徳氏に聞く世界で戦うために必要なこと

今、ITFジュニア世界ランク(9月25日時点)で齋藤咲良(同5位)、石井さやか(同6位)、クロスリー真優(同8位)、小池愛菜(同9位)とトップ10に4人も日本のジュニアがいる。一見、日本女子テニスの未来は明るいように思えるが、そんな簡単なことではないのが現実。16、14歳以下の国別対抗戦・ジュニアフェド(現ジュニアBJK)杯、ワールドジュニア女子代表監督を務めてきた中山芳徳氏に、プロで100位、50位に入るために何が必要だと考えるのか、ジュニア時代に何をしておくべきなのか聞いた。

【画像】グランドスラム2023で熱戦を繰り広げた日本女子選手たちの厳選写真!

――ジュニアの女子シングルスでは4人がシード(クロスリー真優は試合前に出場を取りやめ)。グランドスラムジュニア優勝を狙える位置にいると思いますが、どのように見ていますか?

トップ10に4人がおり、それぞれの選手たちが違うバックグラウンドを持ちながらプロを目指して、その通過点で彼女達が非常にいいパフォーマンスができているというのは世界基準でステップアップできていることを示しているのだと思います。

グランドスラムというのは、選手がとりわけ勝ちにきているトーナメントで、ここで結果を出すというのは(普段の大会と)違うものがあります。自分の思い通りにいかないストレスと向き合わないといけないので、普段の試合であれば勝てる相手にも苦労したりする。この観客の中で勝っていくことが簡単ではないということを自分達がより高みを目指す上で必要な要素と感じられるかどうか、というのがポイントになると思っています。

積み上げてきたものがうまくいくか、いかないかというところだけにフォーカスしてしまうと、負けた時にがっかりすることになると思うのですが、将来ここ(USオープン)で勝ち上がっていくような選手になるために、自分の「思い通りにならないことにどう向き合えるか」というところを私は見ています。各選手がそれぞれランキングを上げてここに辿り着いているのですが、一発勝負ですしみんなが勝ちに来ている中で何ができるのかという難しさも感じると思うんですよね。

特に女子ジュニアの場合、プロのサーキットにも出場しながらここに辿り着いている選手が多く、勝つということが簡単ではありません。シードがついていて勝ちに行く位置にいるのは確かですが、(ジュニアランキングにプロの結果は反映されないため)数字には見えないタフさというのがあるのではないかと思います。

勝ったらおめでとうだし、負けたら今後プロでやっていくために何をやらないといけないのか、どういうことを足して、何を積み重ねないといけないのかと。うまくいかないストレスにどう向き合ってポジティブに変換できるのかが、一番の大舞台だからこそ受け止められるいい機会だと思います。ここが進化する場所なのでそんなことを感じながら観ています。

――選手自身の拠点の専属コーチがいる中で、先ほどお話のあった「苦しい時にどう向き合うのか」ということなど選手に話されることもあるんでしょうか。

もちろん話はします。どういうことを積み重ねているのか、どういう段階にいるのかとかそういうことをコミュニケーションを取っています。その状況に応じてコーチを挟んで対話をすることもあります。

――今大会、日本女子はメインドローに残念ながら入れなかったのですが、このまま日本ジュニア女子が順調に育っていけば本戦に入る素質はあるとお考えですか。

そのポテンシャルがあるということを証明していると思っています。これからどういうものを足さないといけないのか、どういうことを乗り越えていかなければいかないのか100位、もしくは女子の場合だと50位以内は一つの目標です。ジュニアとはまた違う「壁」はあると思うのですが、なぜここ(USオープンジュニア出場)が必要かというと将来的にトップ20、30に入ってくる「エリート」とここで対戦できる。そうすると自分のものさしが、その「エリート」になります。そのものさしを持たずに、ただグランドスラムに出たい、プロになりたいと言っても自分がどういう位置で何を追いかけているのか明確ではないんです。

そういう意味では彼女たちはトップ10にいて、こういうところで1、2回勝ち、今トップでも活躍しているミラ・アンドレーワ(世界ランク63位)やアリーナ・コルニーバ(同212位)とも対戦している。誰を追いかけていて、誰がライバルなのかというのも重要ではないかと思います。


今年5月にはITFジュニア世界ランク2位を記録している齋藤咲良

齋藤咲良であれば、WTAランキングで400位台ですが、周りの選手は300位を切る勢いで16歳になっています。そうなると1年後にはUSオープンジュニアにはいないわけで、プロのUSオープン予選に出ていることになります。そういうエリートたちの(成長)スピードも感じますし、常に対戦していると相手選手の経歴を調べたりします。そうするとランキングを調べたり、どこでプレーしているのかとか練習をしているのかなど気になるので追うことになります。まだ16歳だと制限※もある中であんなに勝ち上がって大人のグランドスラムに出ています。それを人ごとではなく「感じられる」という事がすごく大事になってくると思います。

※WTAおよびITFでは、18歳未満がプロの大会出場できる数に制限を設けており、17歳で16大会、16歳で12大会、15歳で10大会、14歳で8大会となっている。また得られるワイルドカードの数にも限りがある。


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写真=田沼武男 Photos by Takeo Tanuma