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2024.02.26

選手情報

錦織圭らを指導した米沢徹コーチに聞く「トップにいく選手に共通すること」【前編】

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米沢徹コーチと錦織圭(2005年時)

米沢徹コーチ、“幼さ”を捨て「コート内外でどう取り組んでいるかが成長のカギ」


かつては盛田正明テニス・ファンドのサポートを受けた錦織圭(ユニクロ)らのアメリカ留学に帯同し、世界のトップに行くまでの基礎を叩き込んだ米沢徹コーチ。主宰する「TEAM YONEZAWA」は、これまで田島尚輝(やまやコミュニケーションズ)や堀江亨(SYSテニスクラブ)、女子では内藤祐希(亀田製菓)や久保杏夏(安藤証券)、石井さやか(ユニバレオ)らが在籍。型にはめることなく、各選手の特徴を生かした指導で成長へ導いてきた。

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いまでも男女を問わず各地域からジュニアが訪れ、昨年の全国小学生大会男子シングルスで中島一輝が優勝と結果も残している。

元デビスカップ選手として現役を戦い、そしてコーチとしてジュニアデビス・ジュニアフェドの監督を務めるなど長年に渡ってテニスに携わってきた米沢コーチに、数々のトップジュニアを育てた経験を踏まえてトップにいく選手に共通することや錦織のジュニア時代のことについて聞いた。

――まず「TEAM YONEZAWA」の活動について教えてください。

「選手は試合などで抜けることもありますが、常時8人(~10人)ぐらいの小学生から高校生までが一緒に練習に励んでいます。過去に「TEAM YONEZAWA」で活動していて、今ではプロになった選手も練習に顔を出してくれることもあります。最近では堀江亨選手(SYSテニスクラブ)が練習に来ていてジュニア達を相手に調整をしています。コーチは、私を含め4人でやっています」

「私が錦織圭選手と関わってきたこともあるので(このチームから)、再びそのような世界に通用する選手を出すことが目指すところです。全員がプロになるわけではないですが、そこに向かって努力すること、可能性があることをやっている、というのが私のチームの特色です」

――米沢コーチの活動で夏のヨーロッパ遠征と冬のフロリダ遠征が1ヵ月あります。そこが大きな特徴であり、継続して続けている点が大きな特色だと感じています。

「2つの海外遠征を経験しておくことは、(プロとして活動していくために)必須だと考えています。12~14歳以下の選手が、ヨーロッパのレッドクレーや冬に世界からフロリダに強い選手が集まってくる大会を肌で感じて、選手それぞれのレベルでどういう目標を立てるかというところで、これからテニス選手としての目指すところが見えてくると思います。絶対にプロとしてグランドスラムにいくんだ、大学を目指すこと、そこまではしんどいかも…といったそこである程度目指すものが見えてくると思います。できるだけ可能性がある限り上を目指して欲しいというのはありますが、(選手自身が)目が覚めて『やるんだ!』と思えるように活動はしています」

――選手を観察するとフィジカルや技術は優れているのにメンタルが幼いなど様々なケースがあると思います。計画的に取り組まれていることがあれば教えてください。

「一見すると限界があるように見えることもありますが、運動能力とかテニスの技術ではなく、選手個人が考えていることが一番大事になってきます。『どうやって上手くなろうか?』と工夫して取り組んでいる選手というのは、外から見ると相変わらず下手だなとか鈍臭いなと見えていても何ヶ月か経つと『あれ?食いつきがいいな』と上手くなっていることがあって、『どうやったらこんなに上手くなるんだろう?』と驚くほどのスピードで選手の雰囲気になったりするもの。どうしようかと悩んでいた選手が何ヵ月かで変わるということはよくあります」

「チームの練習で上の選手もまだ結果を出していない選手もだいたい同じ内容の練習を反復練習を日々していますが結果を残せていない選手で『テニスは好きだけど頑張っているかな』という選手が『急に上手くなったな』ということが出てきます。それは頭の中で考えていることがすべてだと思います。選手がコート内外でどう取り組んでいるかが成長のカギになってきますね」

「その中で“幼さ”というのは成長の妨げになります。コートに立ってもテニスのことを考えず、相手からどうポイントを取ることだけを考え、ミスジャッジや姑息な手段で勝とうとしていたりする選手はしばらく時間がかかります。それが時間を経て、ちょっとずつ大人になってきた時に急に上手くなってくる時期があります。要するに頭の中が熟成してきて早く大人になった選手が上手くなっていくと思います」

――急に上手くなっていくことの要因としてチームによる状態の共鳴みたいなことが起こるのでしょうか。

「良い選手を間近で見る情報は、上達の要因のひとつとしてあります。周りにテニスが上手い、面白い選手が多いと目に入ってくる情報が自然と多く入るようになります。『スライスはこうやって』とか『ボレーはこうだな』と、コーチが教えなくとも打てるようになることもあります。ですので、『こうやって打つんだよ』と細かく教えるより、自然にやっている時間の方がチームの練習としてはほとんどです。もちろんアイディアを伝えることはありますが教え込もうとはしません。例えば『ボレーはこうだ』ということは言わず、『人のいないところにちゃんと落とす』『決め球はバーン!と打つ』とかそれだけのことです。考え方から入っていくため、『このケースではそっちに落とすといいよ』と伝え、それでポイントが取れると味をしめる。それが正解になり身についていきます」


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Photo by Tennis Classic