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2020.06.19

大会情報

NY便り「USオープン開催で<救えた選手たち、救えていない選手たち>」

わずか数週間前、ニューヨークは外出禁止令が出される事態だった。
考えらないほど、多くの人が罹患し、亡くなってしまった。少し前まで笑って喋っていた人が、次の瞬間に亡くなる。世界中のいたるところで起こったことではあるものの、ニューヨークの人々、アメリカの人々は、心に深く鋭い傷を負った。
だが“After rain comes fair weather.”<止まない雨はない>。今週、USオープンは無観客での開催を決断した。

これはアメリカの人々にとって、希望と変わる可能性があるもの。だからこそ、何としてもやり遂げたいが、決断に対しては常に賛否両側面がある。大会システム自体も変更となったことで、批判も出ていることは確かだ。

<各選手の反応はこちら→USオープン開催に選手から賛否「ワクワクしている」「不快な差別だ」>

『TENNIS.com』のケイル・ハモンド記者は、そのことに触れている。「トップ100以下の多くの選手にとっては、グランドスラムへの出場は経済的安定と同義である。USオープンの開催は決まったが、シングルスの予選、ミックスダブルスが中止となり、ダブルスも64ドローから半減した。つまり256人の予選エントリー選手、64チームのダブルスのスポットが失われ、同時に賞金を手にすることができなくなった。かつてほどではないが、遠征費も苦しい選手がかつては数多くいた。ひどい時には、ハードコートなのにクレーシューズでプレーしている選手もいた。プロであることは簡単ではないのだ」。
そのUSTAが示した開催規定が厳しいと、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)やドミニク・ティエム(オーストリア)、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)といったトップ選手から改善要求が出ていることはご存じの方も多いはず。USTAはトップ選手と交渉していて、彼らばかりを優遇しているという批判もあるが、筆者としてはランキング下位の選手を思っての発言でもあると思う。

それでも、全員を救うことはできない。
今回、残念な決断となったのは「車いすテニス」がなくなったことだ。それに対して、2015年大会、2018年大会の覇者で、クァード部門のスター、ディラン・アルコット(オーストラリア)は「嫌な差別だ」とコメントを出している。差別という言葉、非常に難しい問題である。

一方で、開催に向けてのUSTAの努力を称賛する人たちも少なくない。確かに、冒頭のことを考えると、あの中でテニスの大会のことなんて考えることはできなかった。願わくば、本来、出場することで経済的問題が緩和できたであろう選手たちに、サポートがあってほしい。テニスはビジネスであり、エンターテインメントだ。観客となる我々が、この状況ですべきことは一つ。「テニスの試合を楽しむこと」しかないだろう。

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文=知花泰三(全米プロテニス協会公認指導員資格保持者)

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