close

2023.09.12

選手情報

杉山愛・女子日本代表監督に聞く日本女子テニスの現状とこれから「100位以内に4〜5人を送り込むのが課しているミッション」

  • 著者をフォローする
  • 記事を保存

SHARE

  • 著者をフォローする
  • 記事を保存


――それを過去の日本人選手はやってきたところで、本戦出場が途切れてしまったというのはツアーの回り方だったりするのでしょうか。

杉山:コロナを挟んでいるので実際にそこの難しさというのはありますけれども、こうやって無観客だった2020年のUSオープンからだんだん再開してこうやって通常に戻って、ここからですよね。私自身、チームに加わって引き上げていかなければいけないところは、地道な作業です。ある選手は気持ちの考え方や頭の整理の仕方、気持ちの持ち上げ方だったりするのが課題だったりします。またある選手は自分の力をどうやって出していくか「本番力」を高めていくことであったりします。練習でやっていることの60%しか出せなかったら成績は出ないので、100%は難しいにしてもそこを70%、80%をコンスタントに出すにはどうしたらいいかだったり。

戦術的なところを加えて、さらにクオリティも高めてとかそれぞれ持っている課題みたいなものは違うので、そこにどれだけ向き合って技術力を高めていけるか、ということが100位に入るキーポイントになっていくように思います。



女子シングルス予選決勝まで勝ち進んだ坂詰姫野。惜しくも敗れた相手は本戦3回戦に進出

――海外に練習拠点を置く、というのが男子の場合はあるかと思いますが、その点についてはいかがお考えでしょうか。

女子の場合は、(拠点を日本に置いても)練習相手に困ることはないと思います(男子が練習相手となるため)。海外にヒントがあるということではなく、自分に合うコーチ、自分の良さを知っていて100%以上の能力を引き出せる、さらには選手の将来のテニス、目指すべきところなど、その姿が見えているコーチが海外にいれば拠点を海外に置くというのも一つのアイディアかもしれないですけど、それが女子にとっての答えではないかなと思います。

その選手を理解し、その選手の将来やプレー面でどうすればという姿がコーチが見えていないといけないと思います。それ故に女子は十二分に日本でやっていけると思います。逆に海外よりも国内の方が文化の違いもあるし、海外のコーチといってもパーソナリティや国民性も含め本当に理解できるのか、それだけの人がいるのか、相性も含めちゃんと正しいスタッフを自分の周りに置けるのかというのはいつの時代も大切なキーですね。

――伊達さんや森上亜希子さん、浅越しのぶさんらとのプロジェクトYouTubeを拝見させていただきました。いよいよ本格的な改革への取り組みが始まり皆さん期待しているように思います。

『JWT50』の活動は、これだけの経験(世界ランク50位以内)をした者がこれだけいますのでジュニア達やコーチに伝えられることってたくさんあると思います。皆さんが頑張ってないということではなく、正しい方向性に行っているのかというのはチョイスとか休み方とかも含めてです。これだけ過酷なスケジュールの中で自分の気持ちや頭をマネージすることもそうですけれども、タイムスケジュールをマネージする、1日の過ごし方や年間を通してどう回るかとか。いい時は試合数も積み重なってくるので休養もある程度しっかり取らないといけない。(限度を越え)行き過ぎると怪我にもつながり、どれだけ自分の体とマインドをリフレッシュさせながら回っていくかというのはとっても大事なところです。

選手はどうしてもやり過ぎてしまう部分もあるんです、それを周りがどれだけ止められるかも大切。今回、子供達を観ていても毎日ずっとプレーして1日もオフを取っていない子がいて、それが疲れからくるもので調子が上がらない様子だったので、1日休んでみようと提案してみました。そうしたら調子が戻ったという子もいたので、休むことの重要性を感じてもらえたように思います。『JWT50』($15,000)の北海道での大会時のことで、休むことは勇気がいることかもしれないですけど体が疲れ過ぎていると良いパフォーマンスはできないし怪我にもつながります。

今回の全米オープンでは、日本テニス協会から3人の身体をケアしてくれるトレーナーが来ているので、それも上手く使ってコミュニケーションを取りながらやっていける環境にあると思います。それを大いに活用して自分のベストを引き出してもらいたい、というのはあるのですが、その辺はまだまだやり切れていないというのが外側から見ても思います。

――大胆な変化は必要、でも日々の取り組みは地道。これまでの日本のやり方で時代に合っていないものはありますか?日本のジュニアや指導者の皆様にお伝えしたいことがあればお願いします。

テニスは体力的にもタフな種目で、身体にかかる負担は大きい。そのケアは緻密であったりするので、自分の身体との対話し、心の声を聞くというのはジュニア時代から大事なことではないかと思っています。正直、ギリギリのところまで追い込まないといけないところもあり、追い込み過ぎると怪我にもつながってしまうのですが、それをしないと上達につながらないので見極めが必要なところは、今も昔も変わらず大事なところです。本人もそうですが周りの人や指導者も大事で、ギリギリのところのせめぎ合いだと思います。

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録