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2023.09.12

選手情報

杉山愛・女子日本代表監督に聞く日本女子テニスの現状とこれから「100位以内に4〜5人を送り込むのが課しているミッション」

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――最近の日本のスポーツ界も以前とは選手のマインドにも変化が出てきているように思います。時代が変わってきたのかな、と思いますがいかがでしょうか。

私自身もスポーツ、テニスを楽しむということは根底にあって、「根性だ!気合いだ!」というのはもちろんは必要です。ですが、それだけではダメで、科学的に何を食べるか、睡眠、休養も大事。あとはメカニズム、身体の動きで効率の良い動き力を伝えるのはどういう動きが良いのかなど、怪我につながらないように身体をきれいに使うというのは大事なことだと思います。怪我もやり過ぎという部分もあれば、使い方がおかしいという部分もあり、怪我はひとつのサインだと思っています。それにどれだけ気づけるか、それ(怪我)をヒントに骨格的に負担がかからない打ち方の追求というのは絶対的に必要です。

――それをローカルレベルでそこまで突き詰められないところもあるのが現状です。

それは指導者にかかってくるのかと思います。いつも手首、肘、練習をしていて万年どこか痛いということは負担がかかっているということになるので、打ち方を変える、グリップを変更する、身体を使う部分をもう少し大きな筋肉を使ってみるなど試行錯誤は絶対的に必要です。

「怪我=Bad luck」だけでは済まされないと思うんです。トップを見ていてもそこは柔軟な考え方を持っていて、頑なに打ち方やグリップを変えたくない人はいると思うのですが、それだと今の時代だとついていけない。ジョコビッチも歴代最高記録を持っていながらも、常に良くしようとしてサーブも変えていた。そのプロセスはシーズンが長い競技だからこそ、オフシーズンを待っていられないこともあって、2〜3週空いた時にフォームをより良くしたり、ナダルでさえボジションをものすごい後ろだったところから前にしたりする。(変化は)すごく居心地の悪いものなのですが、トップ選手でもそういうことをしているので(変化を拒んでいると)その差は開いていきます。貪欲に自分のスタイルにしても、フォームにしても少しずつ改善していくという姿勢は絶対的に必要だと思います。

――変える、変わっていく。

良くしていく、ですよね。

――杉山さんご自身がトップ100に入り、50位、30位になり、そしてトップ10になった。そこにしか行ったことのない人しか分からないメンタリティがあると思うのですが、それをどうやって選手に伝えていくのか技術的な部分だけではないと思うのですが、教えていただけますでしょうか。

そうですね。もちろん技術的なところももちろん大事ですが、それが備わっている選手もいます。何が違うのか?というと、取り組み方だったり自信になるような些細なきっかけが必要だったり、ほんとうに「小さい」ことが大きなことだったりします。例えば試合に勝つ、ということも大きな薬となりますし、それが第一でしょう。練習でいくら良いボールを打って、良い形で身体を動かして良いプレーできると知っていても、それが試合で結果となって出ることが一番の薬なんですけど、そこに行く為には辛い「一勝」もあるんです。そういうところであがき苦しむ時期は私にもありましたけど、絶対に結果は後からついてくると信じる気持ちも大事です。結果を求め過ぎると自分のパフォーマンスが出せない、といったこともあります。勝ち切れない時期というのは私自身も経験して、マッチポイントからひっくり返されることもあったりもするので、そういう意味では苦しい時期は誰にでもあると思います。それでも信じ切るしかない。自分もそうですしチームもやり切るしかない自分のやってきたことをどれだけ出せるか、というのはすごい大きなことです。

――それを出せる試合が積み重なっていくということは自分ももちろんのことですが「チーム」の存在も大きいですね。

チームはとっても大事ですよ。

――長いツアーの中では負けが続けば自己価値を下げてしまいそうになりますが、それを緩和してくれる役割も大きいように思います。経済力があればあるほど大所帯なチームも珍しくなくなりました。

自分自身も特に若い頃は空回りすることもあり、思っている力を半分も出せなかったこともありました。そんな試合を何回も経験しました。自分にとっては緊張も「敵」でしたし、大きなスタジアムコートも苦手でした。観客がたくさんいるところで空回りしてしたことで、その「どうしたら良いのだろうか?」をとことん突き詰めていくことは大事なことで、それぞれ改善方法は違います。

私には呼吸法に出合って「呼吸とイメージ」というものを自分のルーティンワークに組み込んで朝30分、寝る前30分という時間を費やして取り組んでいました。緊張感だったり環境だったりというものに打ち勝つことができるようになりました。

解決方法は人それぞれだと思うのですが、自分の中でその力を出すことができれば明確に「宿題」として与えられるんです。これをもっとやれば次はそこに挑める、という課題が与えられるのですが、やってきたことが半分も出せなかったら次にどこに進んでよいか分からない。これが出せたら勝てたのにというのでは、そこのループから抜け出せません。

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