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2023.09.12

選手情報

岩本功・ジュニアデビスカップ監督、日本ジュニアの求められることは「苦しくなってから闘う、ファイトする取り組みが練習から必要」

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――日本人選手は皆さんとても器用だと思います。

日本人は基本的に真面目です。そういうところでアメリカの大学に好まれる選手が多いと感じます。海外はそういう意味では「えげつない」子がたくさんいます。あれが「個性」なんです。しかし、あとになって蓋を開けるとそういう選手が伸びてくる例をたくさん見てきました。私自身も高校から大学までをアメリカで過ごした経験からも重なりますが個性は大事です。

――テニス界以外にも通じるお話のように思いました。

可能性があるのであれば、海外のファイターと早めに試合をさせてあげたい。それが当たり前にならないと。以前もオランダ遠征にジュニアを連れていきましたが、アウトの判定をして(クレーコートで)相手がベースラインまで来て(マークの確認のために相手のコートに行き確認可能なルール)その迫力に威圧され(2回も)てしまいポイントを持っていかれました。そういうものなんです。だから「経験」というのは大事です。良い子なんです、良い子すぎるんです。

――その試合後のミーティングはどんなの内容になるんでしょうか。

「勝ちにきたんでしょ?」と。テニスとはそういうもので、マークがわかっているのであれば、そこから目を離さずに土に印をラケットでつけて自分が「これだ!」とアウトを主張すべきです。それに慣れるしかない、最初からそれができる人なんていないんです。

良仁を含め、みんな最初の頃はそうでした。でも場数を踏むと「譲らない」。審判を自ら呼んできてファイトして「これが俺のコールだ!」と負けず嫌いでした。それはもう『鉄則』です。コートに入れば檻の中ではないけれどファイトできる人、それは大事です。人が変わるではないですが、そうやってもテニスを楽しめる人、好きなテニスで勝つということに楽しみを見い出せるかです。

今は昔と違う点で言えば試合の回り方もあります。こういうグランドスラムジュニアに出ながら、プロの大会に出場するのも大事なこと。全てジュニアの大会に出るということは、その枠にはめてしまうことになります。上のプレーヤーと対戦することが重要で、例えるとすれば、簡単な道を選ぶということは水槽に入った魚のようで、それを海に放しても生きていくことは難しいように思います。だから外に出ていくんだと。

――いきなり海(ATPツアー)は難しいので水槽(ジュニア)との併用でうまく移行していくと。

世界は広い。日本だけにいると勝手にお山の大将になることになります。だから昔は勝てませんでしたが、今は違う。実践し結果が出てきています。錦織圭が、そして良仁があのサイズで勝っています。

――それを証明したということですね。

そうです。先日、良仁とご飯を食べる機会があり、その席でも彼もそのことを言っていました。

――そういう経験をした先輩たちからいろいろ伝えてもらうことは嬉しいですね。

圭なども合宿していたら顔を出してくれたりします。それがまた日本チームのいいところでもあります。ジュニアと打ってくれるプロ選手との機会も少ないのが現状です。現役でツアーを回っていれば練習のタイミングを合わせることも難しいのかもしれません。

――最後は人と人。

そうですね。運もあるし、出会いも大事にしないといけない。その時の「環境」というのは大事ですね。

――環境にはすごく気を遣っているように思います。

それは人として応援される人間でないと。良仁はここだけの話、態度が悪いというけれどとても「いい奴」なんです。ジュニアたちと遊んでくれたりもしてくれるし。ただ試合の時になるとファイトして(周りが)見えなくなる。彼が14歳の時に遠征に連れて行き、ラケットを投げたりしたこともありました。それを叱り注意し、1〜2時間どこかに行って泣いていたかと思えば、気がついたら隣にちょこんと座ってきてゲームしてたんです。

――かわいいですね(笑)

かわいいんですよ。(西岡選手の人柄をふまえ)それとは別に試合中に対する彼のエネルギーと生き残りを賭けた気迫を感じると思います。あれがなくなったら良仁ではなくなる。あのエネルギーをマイナスではなくプラスの方に持っていって欲しいなと思います。

――50位以内の壁を破るのも凄いと思いましたが、20位台(現在は44位:9/3日現在)にいくことは異次元だと思います。お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

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写真=田沼武男 Photos by Takeo Tanuma